今年の冬商戦では、大手3キャリアの主力機種すべてがパケット料金定額制に加入できるモデルになる。これにより定額制ユーザーが増えるのはもちろん、定額制に加入可能な潜在ユーザーも増える。若年層や女性層からメールの添付機能が多く使われるようなり、定額制ユーザーが連鎖的に増える「下地」はできつつある。
しかし、携帯電話各社の3Gサービスを見てみると、メールに添付できるデータの容量に差があることが分かる(12月9日の記事参照)。
キャリア | 送信 | 受信 |
---|---|---|
ドコモ | 500Kバイト | 約10Kバイト |
KDDI | 150Kバイト | 150Kバイト |
ボーダフォン | 300Kバイト | 300Kバイト |
特にドコモのFOMAは送信と受信で添付データの扱いに大きな隔たりがあり、携帯電話同士でさまざまなデータを添付してやりとりする使い方が想定されていない。
同社は以前から、「写真付きメールの利用量はメール全体のトラフィックからすればごく僅か。ニーズはそれほどない」(NTTドコモ プロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部の夏野剛部長)と話しており、携帯電話カメラの用途は端末単独で使用するコンパクトカメラ的な用途だと見ていた。それは2G全盛期においては現実的な視点であり、成功した。しかし、その姿勢は、定額制を実現した3G時代において、ケータイメールの新たな使い方を開拓する上でのハードルになっている。
一方、3Gで最後発のボーダフォンは、かつて「写メール」を生み出しただけあり、メールの添付機能が充実している。送受信の両方で添付可能なデータの最大サイズが300キロバイトと大きいだけでなく、ボーダフォン端末同士で電話番号指定でメールを送れば、定額制ユーザーから送られてきた添付データありのリッチメールも、受信料無料で受け取れる(11月10日の記事参照)。これは定額制に加入していないユーザーにとっては嬉しいサービスだろう。
3Gにおけるメールの高機能化は、絵文字の増加や装飾機能などでも行われている。しかし多くのユーザーに分かりやすく、簡単に使えるのは写真や動画をはじめとする大容量データの添付ではないか。
ケータイメールに求められる即時性と安定性はきちんと確保した上で、メールの添付機能を強化する。写真・動画付きメールのキャリア間互換性を増して、操作方法も分かりやすくする。そういった使いやすさへの努力も引き続き必要だ。また今後は、“超流通”など新たな著作権保護の手法を用いて、メール添付が可能な「着うた」や「待ち受けキャラクター」など有料コンテンツがあってもいいだろう。
ケータイメールは電話に近い“準リアルタイム性”を持ちながら、メールコミュニケーションの特徴である“間接コミュニケーション性”を持ち合わせている。携帯電話は個人が常に持ち歩くため、純粋な意味でP2Pコミュニケーションが可能だ。これらの点から、ケータイメールは既存のコミュニケーションツールとは異なる特性と力を持っている。
「3G+定額制」時代になり、メールの添付機能までもが多くのユーザーに使われるようになれば、“ケータイメール”は新たなコミュニケーション文化を生み出すのではないたろうか。
メール添付で生まれる「P2Pレコメンド」の可能性 |
現在、ケータイメールに添付するのは、内蔵カメラで撮影した写真や動画が中心だ。しかし、今回のヒアリングでは、一般サイトで無料で公開されている画像や着メロをメールに添付し、友達に勧めるという定額制ユーザーが複数存在した。 個人同士がケータイメールの会話の中で、コンテンツや商品をお勧めする。いわば「P2Pレコメンド」(推薦)というべき使い方だ。 しかし、ケータイメールは何でも自由に添付できるワケではない。 取材の中でも、「いちばんメールで送りたいのは『着うた』。友達にお薦めの曲を聴かせたいのにできない」という不満は多数あがった。また一方で、「いい曲や面白いものがあったら、友達にメールしてもらったら嬉しい」のだという。 PCインターネットにおける最初期のP2Pファイル交換ソフトでは、「自分のお薦めのコンテンツを広めるために共有する」というコミュニケーション的、レコメンド的な使い方がされていた。だが、柔軟な著作権保護と少額課金の仕組みがなく、“課金されない海賊版”に心ないユーザーが引きつけられてしまったため、P2Pレコメンドの可能性はフォーカスされず、違法性のみが際だってしまった。 ケータイメールの添付機能はデータサイズの制限があり、機能的・コンセプト的にもPCインターネットのP2Pファイル交換ソフトとは違う。しかし、著作権保護と少額課金をきちんと整備し、メールとしてデジタルコンテンツの全部もしくは一部を流通させられる仕組みを作れば、ユーザー同士のメールによる“おしゃべり”でコンテンツが広まる「P2Pレコメンド流通」が生まれるかもしれない。 |
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