2007年は携帯用燃料電池 元年携帯向け燃料電池 現状と課題(2/5 ページ)

» 2005年01月22日 03時23分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

燃料電池の種類〜自動車から携帯まで

 まずは燃料電池の現状のおさらいから。一言で燃料電池といっても、用途によって種類はさまざまだ。燃料電池の実用化が期待されている用途と、その目的をまとめると以下のようになる。

  • 自動車用──クリーンエネルギー
  • 家庭用(コジェネレーション)──省エネルギー、省資源
  • 携帯機器用──長時間駆動
自動車ビッグ3の1社、米GMがデトロイトオートショー2005で発表した燃料電池自動車「SEQUEL(シークエル)」。実用化を前提に開発された。水素を燃料とした燃料電池で発電し、前輪は通常のモーターで、後輪はホイール内のモーターで駆動する
大阪ガスが国際燃料電池展の基調講演で示したスライドより。コジェネレーション用途では、都市ガスやLPGを燃料として使う燃料電池が開発されている(12月21日の記事参照)。りん酸型(PAFC)は病院や工場、学校などで実用化されているが、200度という高温になるため家庭用には不向き。固体酸化物型(SOFC)や固体高分子型(PEFC、PEM)などが注目されている

 自動車や家庭用に固体高分子型(PEFC、PEM)などが使われるのに対し、携帯機器用の本命と目されているのが、燃料にメタノールを使うDMFC(Direct Methanol Fuel Cell)だ。

 では、どうしてDMFCが注目されているのだろうか。

 燃料としては、自動車向けなどに使われる水素の効率が最もいい。「水素を燃料に使うと、(1セル当たり)0.6〜0.7ボルト出る。エネルギー効率がいい」(2004年10月のWPC EXPOで講演した東芝バッテリーエナジー事業部開発部の長谷部裕之参事)

 しかし、「水素は貯蔵が面倒。自動車ならボンベが使えるが、携帯機器では……」(長谷部氏)。そこで浮上してきたのがメタノールだ。理論上はメタノールでも1.2ボルトの電圧が出るが、現実には0.3〜0.4ボルトと水素を下回る。

 それでも、容器を合わせた重量当たりのエネルギー密度で比べると、「(メタノールの濃度が)60%〜100%になると、水素よりはるかに大きなエネルギー密度になる」(長谷部氏)。

東芝研究開発センター先端機能材料ラボラトリーの五戸康広研究主幹が示したスライドより。容器に入った水素燃料と、メタノール燃料のエネルギー密度の比較。燃料単体で見れば効率がよく出力も大きい水素だが、貯蔵が難しいのが難点。「水素はいろいろなコンテナに入れなくてはならない。(メタノールはシンプルな容器でかまわないが)水で薄めていくとエネルギー密度が低くなる」(東芝の五戸氏)。それでも50%濃度のメタノールなら、体積比でも重量比でも水素よりエネルギー密度が大きいことが分かる

 さらに、液体であるメタノールは下記のような特徴を持っている。

  • 液体燃料はセルと分離可能。機器の隙間に収納可能
  • 燃料注入により瞬時に使用可能

 “長時間駆動”であると共に、常温で液体のメタノールは、こうした理由で携帯機器向けに期待されている。

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