ガース氏 そうならないことを心から願います。実際、我々は先行者の例を見て、そこから学んできたという強みがあります。
最新の「Symbian OS v9」(2月3日の記事参照)では、セキュリティ対策を作り込みました。ユーザーが気がつかないレベルで保護しています。v9以前でもユーザーはアプリケーションのセキュリティを管理できましたが、v9では、それがさらに簡単になり、高度な機能を利用するアプリケーションは「Symbian Signed」(Symbianが提供するアプリケーション認定プログラム)を取得していることが必須となりました。つまり、これを取得していないアプリケーションは、利用できる機能が限定されることになります。
Symbian端末では、「このアプリケーションをインストールしますか?」というメッセージが表示されます。Symbian Signedを受けたか受けていないかで信頼性が分かります。それでもSymbian Signedを受けていないアプリケーションをインストールした場合は、それはユーザーが選択したことになり、ユーザーの責任となります。
ITmedia 将来、PCと同じようにスマートフォンでもアンチウイルス対策をする必要が出てくるのでしょうか?
ガース氏 その可能性はそれほど高くありません。安全をより気にするユーザーが対策することはあるでしょうが、v9はセキュリティ機能を作りこんでいるため、アンチウイルス対策が必須ではありません。
セキュリティベンダーはモバイル用アンチウイルスを提供するでしょうし、さまざまな製品・サービスが登場するでしょうが、Symbianにはセキュリティ専門チームがいます。セキュリティベンダーらと連絡をとり、連携しているわけです。一方で、さらに重要なのは、セキュリティはOS全体で取り組まなければならないという点。OSがカーネルレベルでセキュリティ機能を組み込み、アプリケーションがこのセキュリティモデルを認識することです。
ITmedia モバイルエンタープライズ市場の立ち上がりに注目が集まっていますが、実際の導入は始まっているのでしょうか?
ガース氏 Symbianでは、「Symbian Enterprise Alliance Council」としてエンタープライズ分野を強化しています。このプログラムには、業界の主要企業15社が参加しています。
すでに携帯電話は企業内で利用されています。モバイルコンピュータを導入となると実装に時間がかかりますが、携帯電話と電子メールであれば、CIOは構図を描きやすくなります。ここで重要なことは、企業がこのようなソリューションを容易に実装できるようにすることです。
電子メールは、企業が社内でデータサービスを実装するきっかけになり、モバイルエンタープライズを加速すると見ています。いったんシステムが整ってくると、次はヘルスケア業界ならヘルスケアのアプリケーションを導入するという流れでしょう。Symbianはモバイル向けに電子メールソリューションを提供するベンダーと協業しており、Symbianベースの堅牢な電子メールソリューションがあることを顧客に示すことで、実装への敷居を下げるよう取り組んでいます。
ITmedia 音楽に次ぐコンシューマ分野では次のトレンドは何と捉えていますが?
ガース氏 現在、Symbian端末が市場に占める割合は4%程度ですが、出荷台数は急増しています。そしてDisneyやSky、ソニーといった大手コンテンツプロバイダがモバイル展開するにあたって、Symbianに注目し始めています。これらの大企業は、既存のビジネスモデルをモバイルにも拡張しています。これまで、小さな会社がニッチ市場を狙ってアプリケーションを提供していたことを考えると、これは大きなシフトです。
今後はテレビやラジオ、音楽、オークションなどさまざまなアプリケーションが登場し、ユーザーはこれまでの体験をモバイルでも体験できるようになります。ユーザーは自分の好きなものを選択するスタイルになるのでは、と見ています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.