例えば、音楽を聴きながらメールを書いているとしよう。「この曲を飛ばしたい」と思ったときに、これまでの音楽携帯ではメールをいったん終了し、ミュージックプレーヤーの画面を改めて呼び出す必要があった。しかし803Tでは端末を閉じて、背面のボタンを長押しすれば音楽プレーヤーのメニューが起動し、そのまま操作できる。その後、再び端末を開けば、メインディスプレイには閉じたときのままの画面が表示されており、メールの続きを書くことができる。複数の機能を同時に操作できる、という意味ではマルチタスクと同じなのだが、「閉じれば音楽プレーヤー」というのが、視覚的にも操作的にも分かりやすい。
「見るからに音楽プレーヤーで、そのプレーヤーらしさを裏切らない中身や使い勝手の実現を目指した」(東氏)
一方で、音楽機能の充実に伴う若干のトレードオフは否めない。背面液晶はモノクロで、なおかつカメラは底面に装備されているので自分撮りは目測でするしかない。また、テレビ電話用のインカメラも省かれている。
「インカメラに関しては、803Tのポジショニングの関係もあり、トレードオフされた部分。背面液晶は音楽プレーヤーとしての役割を重視した」(東氏)
背面液晶は“プレイリストのアーティスト名や曲名が確認できるものを”ということで、当初から横長と決めていたと東氏。モノクロ液晶を採用したのにも理由があると話す。音楽を聴いている間はずっと曲名などを表示しなくてはならないが、カラー液晶だと省電力表示の関係で暗転し、曲名確認のためにいちいちボタンを押さなくてはならない。それでは音楽プレーヤーとしての使いやすさを損なってしまうことになる。「その点、モノクロ液晶はバックライトが消えても画面が見やすく、省電力性にも優れている」(東氏)。もちろん、音楽を聴いているときでも電話やメールの着信時には着信を通知する表示が出る。カラー液晶の楽しさはないが、音楽プレーヤーとしての使い勝手を考えると、モノクロ液晶は納得できる選択だ。
イコライザーがイヤホンを使用したときのBASSしかないなど、より本格的なプレーヤー機能を求めるのなら、細かい部分で注文したい部分もあるが、とにかく「開けばケータイ、閉じれば音楽プレーヤー」というコンセプトは明確で分かりやすい。3G携帯の機能と音楽機能がうまく共存した、初心者にも受け入れやすい音楽携帯といえるだろう。
「803Tのポジションとしては、携帯で音楽を聴いたことがない人にも簡単に始められて、かつ本格的に楽しめる、というものを目指した。『転送ってどうしたらいいの?』というようなレベルの人でもこの機種から始めて、その後、2台目、3台目と高機能なものを使ってもらえればいい。後継機種ではさらにシリコンオーディオ並みの機能を搭載していく予定。“音楽ケータイといえば東芝”を目指したい」(東氏)
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