ケータイが教室、放送が学校――10代が“居る”ラジオ(3/4 ページ)

» 2006年01月06日 14時14分 公開
[岡田有花,ITmedia]

勉強だってケータイで

 リスナーと本気で人間関係を築こうとするガチンコ勝負はいわば、道徳や社会の時間。この学校には、国語や理科や算数の時間もある。ケータイを使った学習コーナー「バトルモバイアル」(バトモバ)もその1つだ。

 お題:1969年、人類初の月面着陸に成功した宇宙船アポロ11号、その船長の名前は二ール・「____」。

――ラジオで出題したこんな問題に、リスナーはケータイメールで即座に答える。正答を最初に送ったリスナーを「モサイヤ人」(猛者)に認定。1万円をプレゼントする。

 前日の放送で予習範囲を設定。この回の予習範囲は「月」だった。生徒達は月にまつわるあらゆることを事前に調べまくり、ケータイを構えてこのコーナーを待つ。問題を聞きながら速攻で打ち込み、問題と答えをメールで送信する。毎回予習を繰り返しているうちに、本当に知識がついていく。

photo 届くメールをチェックするスタッフ

 リスナーから「バトモバで学んだ内容が試験に出た」と言われることも多い。学校関係者から、「素晴らしいコーナーをありがとうございます」などと丁寧な礼状が来たこともある。

 今の子ども達に勉強させるにはどうすればいいか――考えた末、「ゲーム性と物欲を兼ねた勉強ならついて来るのでは」とこの仕組みを考えついた。ケータイ早撃ちで、早押しクイズのようなゲーム性を演出。「お金くれるなら勉強する」という、不況期に育った子ども達のドライさに合わせ、賞金をつけた。

 「ルパンみたいな番組を作りたい。だらしないけど盗む時は盗む、笑っちゃうけど実はまじめ、みたいな」(森田さん)

 “空気のように当たり前”なケータイが、当たり前じゃないラジオ番組を作る。「あさって何をやるかは、誰にも分からない」――親指からの反響が、次の日のテーマを決める。派手な仕掛けはなくても、ケータイサイトのPVは伸び続ける。今の中高生が必要としている何かが、どうやらここに、あるようだ。

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