第19回PHS MoU Group総会で3月2日、最新技術などを紹介するPHSセミナーが行われた。会員向けの勉強会というよりは、参加企業の商品PRタイムであり、興味がある内容があれば直接コンタクトを取って商談に結びつけるという趣がある。
ウィルコムのグローバルビジネス部に席を置く藤井聡氏は、好調な同社の業績と「W-SIMコアモジュール」を紹介した。
「日本には3Gサービスを提供する3つの携帯電話会社があるが、昨年の実績でいえば、それらと比較してウィルコムが最も成功した会社であるといえる。3G携帯に対してPHSは戦い続けており、そして勝利をおさめている」(藤井氏)
日本国内における他事業者のPHSサービス終了を受けて、PHS MoU Group内にも不安を払拭したいとの思いがあるのか、ほかのプレゼンテーターからもこうした力強い宣言が聞かれた。
続いて藤井氏はW-SIMの概略を紹介。「W-SIMはSIMにアンテナを付けたもので、データ通信カードのような働きをする。さらに音声通話機能を内蔵している」
また、W-SIMコアモジュールが少量多品種の商品開発に向いていること、新規参入メーカーにとって通信に関わる開発負担を削減できることなどを紹介した(2005年7月7日の記事参照)。
さらにW-SIMコアモジュールの将来的な展望として、メモリ領域を数Mバイトに拡張し、高度化PHSを採用した高度化W-SIM、無線LANやBluetoothといった通信技術や認証機能などを搭載した付加価値W-SIMなどの案が紹介された。
藤井氏の発表の中で興味深かったのは、1つのジャケットに複数のW-SIMを使うことができるという件。そもそもは、ライフスタイルに合わせてジャケットを交換するというのがW-SIMを使った“SIM STYLE”の発想である。だが、W-ZERO3のようなPDAタイプのジャケットであれば、むしろジャケットが主役。周波数や方式の異なる地域ごとのW-SIMを使うことで、主役が活きてくるわけだ。
これは、PHSの規格統一をいくら図ろうとしても、最終的には国ごとの電波事情や通信政策などで完全には一致できないという事情もある。ローミングサービスによって1つのW-SIMをどの地域でも利用できるのが理想だが、それよりはそれぞれの地域でW-SIMを開発したほうが簡単だろう。旅行者向けのレンタルサービスは、携帯電話で既に実現されているビジネスだし、決して夢物語ではないはずだ。
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