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みのむしはひきこもりか!? | 無添加BOY 着色GIRL | - |
審査員の中で比較的評判が良かったのは、「みのむしはひきこもりか!?」というもの。数あるタイトルの中で「イチ抜け」だったという。「最初にパッと見たときはピンとこなかったが、ボディブローのように効いてくる」(矢邉氏)
このように奇抜なタイトルが多い中で、「君へ。僕より。」のようにストレートなタイトルも選ばれている。これは、小説を書いて応募してくるユーザーのことを考えると、幅を持たせる必要なためとのこと。とはいえ審査員が共通して意識したのは、タイトルをウリにした文学賞であるためあまりにストレートすぎるタイトルはNGだということ。「『愛』と一言のタイトルでは、やはりダメだろう」(中尾氏)。また、格好付けすぎのタイトルも落選してしまうと橋谷氏は話す。
「『私の涙で溺れ死ね』……とかもありましたが。残念ながら、少し気取りすぎの嫌いがある」。余談だが、時節柄多かったのが「イナバウアー」という単語を使ったタイトルだという。
「『稲葉さんのイナバウアー』とかね。『稲葉・うあ』とかなんとか、登場人物の名前にしたかったようだ」。田舎に暮らしながら、大規模なスケートリンクで観客をとりこにするスケーティングを夢見る50歳、稲葉・うあさんの物語なら読んでみたい気もするが、どこか『一発ネタ』の感は否めない。
どうすれば、面白いタイトルは出来上がるのだろうか。橋谷氏は、3つのパターンを指摘する。
1つは「かけ離れた意味の組み合わせ」。大きくかけ離れた意味の言葉を組み合わせることで、インパクトが生まれるという。「『夏と花火と私の死体』(乙一)などはこのパターン。『夏と花火』の次に『私の死体』という、およそ似つかわしくない言葉をもってきている」
もう1つは「言葉を付け加える」。「例えば『彼女はたぶん魔法を使う』(樋口有介)というタイトルがある。『彼女は魔法を使う』だったら平凡なタイトルだが、ここに『たぶん』を付け加えることで魅力的なタイトルに変身させている」
最後は「小さなギャップ」。「かけ離れた意味ではなく、ちょっとした違いでインパクトを出す手法だ。『夜のピクニック』(恩田陸)というタイトルがあるが、夜ピクニックに出かける人はいない。つまり、普段の日常とは違うということが見て取れる」
タイトルが先だ!文学賞は今後、キャッチコピーや表紙イラストなどパッケージとなる部分も募集して、最後に小説本文を募集する。大賞受賞者には賞金10万円と電子書籍サイトでの印税が支払われるため、ちょっとした作家デビューということになる。
橋谷氏と矢邉氏は、この文学賞が実験的な要素を含んでいることを認める。「文学とは、最初に表現したいことがあって、その後に中身が付いてくるもの。通常、タイトルが先に来るということはない」
だが一方で、タイトルを決めることにより普段は考えないような飛躍した発想が生まれる。現在はタイトルだけだが、これにキャッチコピーがついて、表紙イラストがつくと、どんどんとイメージが膨らんでいく。これによるプラスの効果もあるだろうという。
審査員が望むのは、「いかにタイトルを裏切ってくれるか」。しかし一方で、タイトル通りの力技でもいいかもしれないという。結局、「最終的には中身がよければ、本当に読んで感動した、読んでよかったというところに持っていければそれでOKだ」ということで、審査員の意見は一致した。
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