1位奪還を狙う、KTF・LG Telecomの積極・斬新戦略 韓国携帯事情: (2/2 ページ)

» 2006年05月11日 10時43分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]
前のページへ 1|2       

次世代サービスに賭けるKTF

 いち早い次世代サービスの提供に活路を見出しているKTF。昨年12月にNTTドコモと、W-CDMA活性化のための提携を行ったことは記憶に新しい(2005年12月15日の記事参照)

 これに続きKTFでは4月に結成された「Asia-Pacific Mobile Alliance(仮称)」にもメンバーの1人として参加している。

 これはアジアの7キャリアが、各国の渡航客や多国籍企業向けサービスの充実を図り、アジア地域における各社の競争力を強化する目的で結成した組織だ。KTFの他にNTTドコモ(日本)、Far EasTone Telecommunications(台湾)、Hutchison Essar(インド)、Hutchison Telecommunications(香港・マカオ)、PT Indosat(インドネシア)、StarHub(シンガポール)が参加している。

 同アライアンスではGSM/GPRS/W-CDMA方式だけでなく、HSDPA方式での国際ローミングの実施も視野に入れている。また国際ローミング時でも、国内にいるかのように留守番電話などのサービスを簡単に利用できるようにするため、現在ワーキンググループを結成して活動を進めている。

 5月に入りKTFはHSDPA関連の投資額を、既存の5100億ウォンから7800億ウォンに修正すると発表している。KTFはこれまでLGTとともに1.8GHz帯域を使用しており、800MHz帯を使用するSKTに比べ国際ローミングなどに関して不利な立場にあったため、HSDPAへの移行を機にこうした状況を挽回したい考えだ。

 さらに親会社のKTが6月から本サービス開始を予定しているWiBroと連動したサービスや端末を提供することで、より多様で質の高いサービスを提供できると考えている。

 技術開発活動も活発だ。KTFは情報通信部が主観し韓国電算院が実施している「モバイルRFID示範事業課題公募」にも参加を表明している。

 この事業は、RFIDの事業発掘を通じて実生活に普及させようという目的で行われる。今回はバス停でバスの到着時刻などを確認できる「バス情報サービス」、タクシーの乗車時間や位置などをSMSで家族などに知らせられる「タクシー安心サービス」、商品の詳細情報の表示から決済までが可能な「Uコマースサービス」が進行している。ここにKTFが参加。関連会社とともに技術開発に取り組んでいる。

 近い将来の次世代サービスに向けたサービスを着々と進めるKTF。KTFの狙う市場がまだ出来上がったものではないからこそ、今からビジネスモデルの創出に熱心だ。

 ただし4月の加入者数を見ると、SKTに軍配が上がったことが分かる。4月の加入者状況を見てみると、SKTは4万5520人、KTFは2万3702人、LGTは1万169人の純増。これは「18ヶ月以上、同じキャリアの会員であること」という条件付のインセンティブの支給が開始したことで、キャリアを変える新規加入よりも同じキャリアを維持する機種変更の人が多かったことが原因と見られている。

 しかしそこは変化の激しい韓国市場。4月の数値は一時的なものに過ぎないため、上り調子のKTFとLGTの戦略によって大きく変わることも予想される。2社が繰り出す次の一手に注目が集まる。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年