最強のワンセグ視聴環境を目指した「W41H」開発者に聞く「W41H」(ワンセグ編)(2/2 ページ)

» 2006年05月15日 00時10分 公開
[園部修,ITmedia]
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Photo カシオ日立モバイルコミュニケーションズ開発設計本部ハード設計グループリーダー、長谷川修氏

 W41Hのチューナーモジュールや無線回路などの開発を担当した開発設計本部ハード設計グループリーダーの長谷川修氏は、2005年の7月頃に開発拠点でもワンセグの試験放送が受信できるようになったとき、その画面の美しさに「これはいける」と思ったという。デジタル放送のワンセグは、アナログ放送よりもずっと画質がいいことは頭では理解していたが、初めて実際の画面を見たときには「思わずほかの開発者のところに見せに行った」。それを見て「アナログテレビの時代は終わった」と言った開発者さえいたそうだ。

苦労したのもやはりワンセグ機能

 開発時の苦労話は、と聞いたとき、後藤氏は真っ先に「D-pa(地上デジタル放送推進協会)のワンセグ視聴環境に関する規定がかなり細かく指定されていたこと」を挙げた。D-paはワンセグのデータ放送や字幕が、画面にどのように表示されるべきか、表示用のウィンドウをどの位置に配置するかといった細かな仕様を定めている。1行に表示する最大の文字数まで規定されているほどで、それに合わせてワンセグ視聴アプリを開発するのが特に大変だったというのだ。映像を表示するパターンにも規定があり、それらの枠の中で多くの機能を搭載していくのは容易ではなかった。

PhotoPhoto ワンセグ視聴環境にはD-paによるかなり細かな規定があるという。データ放送が画面のどのあたりに表示されるか、1行の文字数が何文字か、といった細かな部分もルールにのっとる必要があり苦労したそうだ。それでも快適にワンセグが見られるよう、録画や字幕などのさまざまな機能を盛り込んだ

 また他社の製品に負けないよう、高画質化機能をふんだんに取り入れ、受信感度の高さにもこだわったことから、大変な手間がかかったという。開発を始めた当初はそもそもワンセグを受信できる端末がなかったため、何かを参考にしたり、比較したりすることができなかった。自ずと作業は手探りとなり、目標設定が難しかったのだ。

 上島氏は「家庭のリビングなどに据え置いて使用する大型のテレビとは異なり、携帯電話のテレビ機能は友達が持っている他社製品などと並べて比較される機会も少なくないと考えた。だからこそ、他社製品より高感度で高画質であるという点は絶対に達成したかった」と話す。

 高感度を実現するのには、テレビのようなボディデザインが功を奏した。テレビ用のロッドアンテナを違和感なく外付けできたため、受信感度は当初から比較的良好だったという。ただ、携帯電話(CDMA)のアンテナだけでなく、FeliCaなど複数の無線機器を搭載する携帯電話では、アンテナの感度を高くすると、どうしても干渉が発生する。またアンテナの特性を引き出すためには、ある程度の物理的なスペースも必要で、本体のデザインを壊さずに、アンテナの特性が生かせる配置を考えるのは難しい作業だった。通話中にFeliCaを使用したり、テレビ視聴中に着信を受けたりと、同時に利用する機能もあるので、ノイズを抑えるのにも苦心した。

Photo ロッドアンテナのおかげで高感度を実現。他社製品と比べても絶対に引けを取らないレベルの視聴環境ができたという

 このほか、多くのユーザーインタフェースをテレビ中心に設計し、テレビスタイルでチャンネルやボリュームの切り替えなど、一通りの操作ができるようにしたのもいろいろ悩んだポイントだ。横長のワイド画面と縦位置の画面を簡単に切り替えたり、スタンドに置いた状態でも容易にテレビが起動できるよう専用のボタンを用意したりしたため、結果的にキーの数が多くなってしまった。しかしそこはテレビの操作性を犠牲にしないため、あえて搭載に踏み切った。

 「ここまで徹底してW41Hを開発したおかげで、次の機種のハードルがかなり高くなってしまった」と長谷川氏は笑う。W41Hの後継モデルを出すとしたら、当然W41Hを超える感度、画質、そして機能が求められる。「相当なプレッシャーだ」(同氏)と話していたが、さらに進化した後継機種の登場にもぜひ期待したい。

Photo 左からカシオ日立モバイルコミュニケーションズの開発本部ハード設計グループリーダー長谷川修氏、開発設計本部機構設計グループチームリーダー上杉雅樹氏、開発設計本部ソフト設計グループ後藤悦宏氏、戦略推進グループ上島敦彦氏
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