“やりすぎ”くらいがちょうどいい――N902iX HIGH-SPEEDのデザインができるまで(1/2 ページ)

ロボットやSF映画のキャラクターを彷彿とさせる近未来デザインが話題の「N902iX HIGH-SPEED」。HSDPAに対応した初の端末は、どんな経緯で誕生したのか、ユニークな新モデル開発の背景を開発陣に聞いた。

» 2006年08月28日 00時00分 公開
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 高速通信技術HSDPAにいち早く対応し、ロボットやSF映画のキャラクターを彷彿とさせる近未来デザインが話題の「N902iX HIGH-SPEED」。SF映画やロボットアニメのイメージで統一されたこの端末が生まれたのは、キャリアとメーカーの両者が、明確なコンセプトを共有していたからだった。ユニークな新モデル開発の背景をNTTドコモとNECの両開発陣に聞いた。

初代HSDPA端末「N902iX HIGH-SPEED」

PhotoPhoto NTTドコモ マルチメディアサービス部の増田智子氏(左)とプロダクト部の高津利樹氏(右)

 「N902iX HIGH-SPEEDは、最先端の機能を先取りで実装する企画端末という位置づけ。コンセプトを絞ってターゲットを明確にして作っていきました。その際、NECさんがこれまでちゅうちょして避けてきたようなことを“今回はやっちゃってください”とお願いしました」

 こう話すのは、NTTドコモ プロダクト部で商品企画を担当する高津利樹氏。コンサバティブと言われがちなNシリーズのイメージを大きく覆す、斬新な「N902iX HIGH-SPEED」が誕生したのは、キャリアであるドコモとメーカーのNECの両者がコンセプトをしっかり共有し、普段の開発プロセスでは踏み込めないところまで踏み込めたからだと振り返る。

 NTTドコモのHSDPA端末は、各メーカーが試作機を提案する形で開発が進められた。その中で、初代HSDPA端末としてN902iX HIGH-SPEEDが登場したのは、NECのプロジェクトがどこよりも早く商品化に対応できたこと、そして、端末のターゲットや搭載する機能がドコモの持っていたイメージとうまく合致したことが挙げられるという。

 「ハイエンド志向のユーザーの中でも、さらに上を望む方。90xi系でも物足りないと感じているようなユーザーを狙いましょう、と提案しました」(高津氏)

 この狙いが両者で見事に一致したことで、端末のコンセプトがすんなりと決まり、開発もスムーズに進んだという。

 「コンセプトは、本当にすんなり決まりました。この端末は、他の機種のように作ったのではターゲットユーザーの所有欲を満たせない。ちょっと違和感があるくらい突出した感じにしていきたい、ということで進めました」こう話すのは、NTTドコモ マルチメディアサービス部の増田智子氏だ。

 デザインコンセプトは「モバイルスターシップ」。“ガンダム”や“スターウォーズ”に登場するメカや、キャラクターに似ている、という感想も聞かれるが、もっと広い意味でのSFや映画の世界をモチーフにしたと増田氏は話す。

Photo カラーはシグナスホワイトと、チタニウムシルバーを採用。アニメーションのイメージから、ソリッドカラーであるシグナスホワイトが先に決定した。さらに、メカっぽさを強調するためチタニウムシルバーも用意した。「赤」系統のカラーも最後まで候補に挙がっていたという

 NEC 商品企画部の藤原望氏は、商品のコンセプトとして近未来感に加え、音楽機能を重視したと話す。「携帯で一番使われているコンテンツは音楽で、高速通信ができるN902iX HIGH-SPEEDにおいても一番使われるのは音楽と考えた。そこで、使うユーザーのイメージを共有するためのキーワードとして、“ミュージックシーカー”という言葉を作りました。広大なネットの中から自分の好きな音楽を探して(Seekして)、端末にとりこみ、楽しむ人、という弊社の造語です。音楽好きであることはもちろん、そういった機械を使いこなす人というイメージもあります」

PhotoPhoto N902iX HIGH-SPEEDの両サイド。スピーカーが強調されたデザインであることがよく分かる

HSDPA端末らしさを表現する

 両者思いは一致していたものの、HSDPAという新しい通信規格に対応させるために、開発側の苦労がなかったわけではない。

 「試作機を作るのは商品化よりもだいぶ前なのですが、商品化までの時間を見据えて当時まだ開発中だったN902iをベースにしました。当然、FOMAに加えてHSDPAという通信の仕組みが増えるので、通信のためのCPUが大きくなったり、サービスのための内蔵メモリが大きくなったりと、入れ込むものが多くなります。とはいえ、携帯電話ですからあまり大きくなりすぎてもいけない。デザイナーは非常に苦労したと思います」(藤原氏)

PhotoPhotoPhoto NEC 商品企画部の藤原望氏(左)、商品企画部 森山祐助氏(中央)、NECデザイン チーフデザイナーの加賀美努氏(右)

 アンテナは従来機に搭載されていたものを利用しているが、HSDPAも含めたアンテナ特性を考慮して配置する点に苦労したという。大まかなレイアウトはN902iと同じにできたが、キー側ボディの厚みがいくぶんか増してしまったため、液晶側ボディの厚みを減らしカタログ値はN902iと同等になっている。

 しかし、デザインを担当したNECデザインの加賀美努氏は、「小さくしよう、という気持ちはあまりなかった」という。「この機種に関しては、“コンマ何ミリ薄く”といった細かいサイズの話はあまり出てこなかった。それよりも最初のイメージをいかに表現していくか、ということが大切だった。あえて大きくしているところもあるんです」

 例えば、液晶画面側のボディは、背面にあるスピーカーのために、若干幅を広げているという。「音楽機能の象徴であるスピーカーは一番の見せ場なので、あえて幅を広げています。ほんの少しですが。そして、握るほうのボディは持ちやすい幅を維持しています」(加賀美氏)

 端末デザインには、近未来的なものをイメージした今回のモデルのほかに、より音楽機能をフィーチャーしたミュージックプレーヤータイプのものもあったという。

 「音楽機能を表現するという意味では、ミュージックプレーヤータイプは当然の選択といえるでしょう。でも、もっとびっくりさせたいという気持ちもあって、インパクトが弱いかなとも感じました。両方見てもらっても、今回のモデルのほうが好評でした」(加賀美氏)

 N902iX HIGH-SPEEDのデザインが生まれるまでのプロセスも、仕上がったデザインと同じようにユニークだ。

 「色々な資料を見ながらデザインしたというよりも、自分の頭の中にあったイメージから作り上げました。映画やアニメのSF作品に登場する、ロボットや宇宙船のイメージが根底にあって、最初に、黒くて強いライン、輪郭線みたいなものも浮かんできた。背面のスピーカー部の黒いラインが出てきたんですね。最初は自分で“H”に見えるとは思ってなかったんですよ(笑)。でも、すぐにHだと気がついて、じゃあこれは残しておこうかな、と。白いボディに黒い線で、グラフィカルなものをやってみようと思ったのです」(加賀美氏)

PhotoPhoto 真っ先に浮かんだのが背面のデザインだった

 このデザインは、ドコモ側にも好感触だった。高津氏は「このデザインがミュージックプレーヤータイプよりも響いたのは、近未来的なデザインに加えてスピーカーのデザインがポイントになっていたから。見た目でぱっと分かる――ということは、その機能を求めているお客さんに響くのでは、と感じたからです。それもあって、ドコモ社内でもすんなりこちらのデザインに決まりました」と話す。

 ただ、背面の黒いラインは、かなりチャレンジングなものだったようだ。増田氏は「今までやったことがないディテールだったので、黒のラインはできるか心配だった。でも、ロボットの肩みたいな、格好いいところなので“すごくいいけれど、できないんだったら、やらないほうがいい”と言いました」とギリギリの判断だったと振り返る。

 「普通は経験則を踏まえ、作る側のことも考えてデザインするのですが、これに関してはどう作るか、あまり考えずに技術担当に見せました。“これはどうやって作るんですか”“う〜ん、ちょっと分からない”と(笑)。でも、そこはがんばってもらって、黒い板の上に白いパーツを乗せた2重構造にして解決しました」(加賀美氏)

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制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年9月29日