本当にモバイルWiMAXでいいのか──IEEE802.20とモバイルWiMAXの大きな違い(3/3 ページ)

» 2006年10月30日 00時00分 公開
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水増しされたホワイトペーパーの数値

 川端氏は「モバイルWiMAX陣営には、ぜひ実証実験の結果で比較をして欲しい」と言う。

 だが、WiMAX陣営から提示される比較データは、相変わらずシミュレーションの資料が中心だ。しかも、こうした資料の中には、「計算式を調整して、パフォーマンスを水増ししたと思われるものも混じっている」と川端氏。

 具体的にはWiMAX Forumが2006年3月に出版した「Mobile WiMAX - Part I: A Technical Overview and Performance Evaluation」という資料と2006年5月に出版された「Mobile WiMAX - Part II: A Comparative Analysis」という資料だ。

 QUALCOMM側で、3G携帯電話などのパフォーマンスを測定するのと同じ方法を用いてモバイルWiMAXのパフォーマンスをシミュレートしてみたところ、例えばダウンリンクのパフォーマンスは実際のパフォーマンスの3分の1、アップリンクのパフォーマンスは2分の1になってしまうという。

 「WiMAXフォーラムが使っている、電波がどのくらい飛ぶかという見積もりは、通常使うものと大きく違い、WiMAXフォーラム独自の修正が、その説明もなく行われていることが分かってきました」(川端氏)

PhotoPhoto WiMAXフォーラムが提示しているモバイルWiMAXの性能は、QUALCOMMで行ったシミュレーション結果と大きく食い違っているという。例えば下りの平均セクタースループット(左)は、ホワイトペーパーで示している値とQUALCOMMのシミュレーション結果に3倍近い開きがある。同様に上りの平均セクタースループットもQUALCOMMの試算では半分程度にしかならない(右)
PhotoPhoto 周波数利用効率も同様で、モバイルWiMAXの本来の性能は、CDMA2000 1x EV-DOやW-CDMAのHSDPAを超えるものではないのではない可能性がある。左のグラフが下りの周波数利用効率、右のグラフが上りの周波数利用効率を示す

Photo モバイルWiMAX(802.16e)と802.20のVoIP利用時のスループットは、シミュレーション上では負荷が高くなればなるほど大きな差が出ることが分かっている。モバイルWiMAXは、VoIPユーザーがいない場合でも802.20の約半分、VoIPユーザーが55人いる場合は802.20の約25分の1まで性能が落ちると試算されている

 2006年8月に米QUALCOMMが、WiMAXフォーラムへの批判も込めて作った「Mobile Competitive Update」という資料によれば、WiMAX Forumが設定した前提条件は、実際の商用利用を無視した設定に基づいている可能性があるという。その設定通りに基地局を設定した場合には75%のユーザーが通信エリア外に置かれるような非現実的設定で資料がつくられている可能性がある、というのだ。

 現在クアルコムジャパンは、総務省で検討されている2.5GHz帯の周波数割り当てに関するワーキンググループでも、WiMAXフォーラムのホワイトペーパーを手に「これではシームレスな運用ができない」ことと「周波数利用効率が3G携帯電話と比べてよくなっていない」という2点を指摘し続けている。

モバイルWiMAXとの共存も含め、802.20への周波数の割り当てを希望

 一方、802.20の魅力は、隙間のないカバレージと高い周波数利用効率だけではない。川端氏は「802.20が誕生時から将来のワイヤレスブロードバンド時代を想定してデザインされている点も強み」だと語る。例えば将来、音声通話がVoIPベースになることを想定して、リアルタイム通信用に通信速度を保証するQoSという仕組みも取り入れていたり、同じセル内で複数の人が接続している場合、用途や移動速度などに応じて通信帯域のアロケーション(割り当て)を動的に調整する機能なども備えている。

 こうした自信があるだけに、このまま、一時的な勢いで、2.5GHz帯域の利用が「モバイルWiMAX」一色に決まる状況はおかしいと考えている。

 「どうしてもモバイルWiMAXを使いたいというオペレーターさんもいるかもしれません。ただ、その場合でも(割り当てを検討している)95MHzの帯域すべてをモバイルWiMAXだけのために使ったのでは『後悔しませんか』、『複数のテクノロジーが混在できる環境を構築しませんか?』と意見を出しています。

 どんな技術でもいいというわけではないですが、ある一定以上の基準に達した技術で、オペレーターがビジネスになると思うのであれば、それを受け入れられるフレームワークを用意してもいいんじゃないか、という考えです。というのも、今目の前にある技術だけをベースに電波の割り当てを考えても、実はすぐにそれらの技術が廃れてしまう可能性もあるわけじゃないですか」(川端氏)

 クアルコムジャパンの願いは真剣だ。

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提供:クアルコムジャパン 株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年12月11日