3GとPHSを組み合わせた定額データ通信「Doccica(ドッチーカ)」とは?

» 2006年10月31日 23時11分 公開
[平賀洋一,ITmedia]
photo 発表された「Doccica」のパッケージ。接続先キャリアに合わせて3種類を用意

 日本通信は10月31日、3GとPHSをシームレスに切り替えながら使用できるデータ通信サービス「Doccica(ドッチーカ)」シリーズを発表した。製品は、3G接続用とPHS接続用の2枚のデータ通信カードと接続用ツール、データ通信料とインターネット接続料がセットになったもの。発売時期は未定だが、3Gネットワークを持つ携帯キャリアとの相互接続を完了してから、1カ月以内に販売を開始するとしている。価格は6カ月間で15万〜20万円を想定している。

 Doccicaは、広いエリアで利用できるPHS通信と、高速データ通信が可能な3G通信を接続ツールによりセッションを維持したまま切り替えることが可能。エリアに応じてPHS/3Gのどちらを利用するか選べるほか、自動で切り替えることもできる。また、3G使用時とPHS使用時では消費電力に数倍の差があることから、ノートPCのバッテリー残量に合わせた接続先設定も自動で行える。

photophoto PHS3Gの組み合わせにより、広いサービスエリアを提供(左)。デスクトップの接続ツールで接続先を指定する(右)

 こうした機能をすべて生かすには、2つのPCカードスロットにPHSと3Gの通信カードを接続する必要がある。モバイル向けのノートPCではスロットが1つしかない場合や、スロットのレイアウトによっては2枚の通信カードを同時に差すことが不可能な場合があるが、接続ツールではカードの抜き差しを行う際にも接続状態を維持するため、一度に1枚の通信カードを使う場合でもシームレスに利用できるという。また、将来的にはPHS/3Gのデュアルチップを搭載したカードの開発も検討している。

photophoto エリア内で接続をまっている状態(左)。PHS、3Gとも接続した状態(右)

 現在、3G網を持つNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社と接続について協議中であり、どこのネットワークを使用するのかは未定だ。また、発表会見では、同社執行役員の田島淳氏から「同じ3G仕様(W-CDMA)を採用するMNO、NTTドコモとソフトバンクモバイル、イー・モバイルを切り替えられる通信カードの開発を検討している」とのコメントもあり、来年以降はイー・モバイルを接続先とした製品の展開も考えられる。

 また、3Gのみを使うシングル版については今のところ提供されないようだ。その理由として、「現状で3G本来のスピードを使えるエリアは限られており、基地局から離れるとPHSと同等かそれ以下の通信速度になる場合がある。通信コストについては3Gのほうが高いが、常に価格に見合ったものにはならないだろう。安価に提供できるPHS接続サービスも追加することで、価格を大きく変えずに広いエリアをカバーできるパッケージを提供したい」(田島氏)としている。

キャリアはMVNOへの接続義務を果たすべき

photo 日本通信 常務取締役CFO 福田尚久氏

 発表会見では、同社常務取締役CFO 福田尚久氏が今後のMVNO戦略の説明を行い、世界で初めてMVNOのデータ通信事業を開始した同社の実績を踏まえ、「MVNOに関して技術だけでなく制度面のイノベーションを目指す」という姿勢を紹介した。

 特に、今回の3G網を利用したデータ通信のMVNOについて「あえて、2007年に開始すると発表する」(福田氏)とし、他の通信事業者からの接続請求には原則的に応じなくてはならないとする電気通信事業法第32条や、MVNO参入促進をうたう「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方について- 新競争促進プログラム2010 -」(総務省)などを根拠に、接続義務を果たすよう携帯電話キャリアへの強い訴えを行った。

 また、「電気通信事業法第34条第2項において、第2種指定電気通信設備を持つ電気事業者は、接続条件や金額を約款として定めるべきとなっている。現在、各キャリアは、音声通信やiモードなどのサービスについての約款を公開しているが、データ通信に関しては約款を公表していない。MVNOに参入するには、各社と個別に交渉する必要があり、新規参入を妨げている」(福田氏)と話した。

photo 日本通信 執行役員 田島淳氏

 こうした問題点は、発売時期や利用するネットワークが未定なままDoccicaを発表した理由にも及ぶ。「我々の技術的な開発は進んでおり、各社との接続協議を終え提携した際には1カ月以内に発売できる見込み。しかし、最悪のケースとして(電気通信事業)紛争処理委員会に提訴する考えもある」(福田氏)と、接続義務について明確にしないキャリア側をけん制した。

 さらに、投資家への影響については「約款が公開されていない以上、水面下で交渉する必要がある。しかし、我々の事業プランを含め、MVNO案件について投資家や市場への透明性は確保する必要がある」とコメント。各社が約款を公開しない理由については、「個人的な見解だが、(約款で定める)接続料金は設備コストに適正な利潤を積み上げたものになる。おそらくデータ通信のコストが明らかになるのを恐れているのではないか」と解説した。

 キャリア側が帯域の逼迫を挙げて接続に慎重な姿勢であることには、「音声については逼迫している面もあるだろうが、我々が求めているのはデータ通信についての接続。極めて高いリアルタイム性を求められる音声通信と、わずかな遅れが生じても利用できるデータ通信とは特性が異なる。データ通信はネットワークの負荷をコントロールできるため、そうした理由は技術的に間違っている」(田島氏)と指摘した。

photophoto PHSの数倍のコストが必要な3G網だが、音声通話ではそのメリットは生きず、データ通信でこそ活用できる(左)。データMVNOでキャリアに求められているのは、事業者間の接続と端末仕様のオープン化(右)

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