「日本のケータイは世界的に見ればサブカルチャー」──深澤氏が語るINFOBAR 2INFOBAR展/Trilogy展同時開催記念スペシャルトークショー(2/2 ページ)

» 2006年11月06日 23時59分 公開
[青山祐介,ITmedia]
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コンセプターの仕事は“当たり”ではなく“ゆれ”を作ること

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 現在、auデザインプロジェクトにも関わっている坂井氏。3問目は2003年以降のデザインの発展や進化について、深澤氏に尋ねた。

 深澤氏は、「自身がデザインから携帯電話やコミュニケーションを考えようと思っていた時期にINFOBARが出て、プロジェクトがスタートした。それがある種の運動体としてのブランド力を持ち、その結果、3社ある競合の中で、auに純増という影響を与えた」と考えているという。また同時に、何かカルチャーや新しいトレンドを掴むためにINFOBAR 2をやろうと思ったわけではなく、現在のコミュニケーションのスタイルや時代に対して最もふさわしい適正なものは何かを考えた結果がINFOBAR 2だったと話した。

 「坂井さんのお仕事は、やはり“ゆれ”を作るもので、“当たり”を作るものではないと思います。そのコンセプトを出したときに、いろいろな人のゆれの中で、ゆれの中心がどこにあるか、というようなことを探し出すためにやらなければならない。ですから、新しいデザインを打ち出すと、世の中ではこれは当たっているとか当たっていないとか、良い悪いとか言われますが、そうじゃない。むしろ揺らされているんですね。au design projectの中でもゆれを作りつつその中心を探し出すということは必要じゃないかと思います」(深澤氏)

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「内部でもいろいろな議論があったのですが、『デザインケータイ』というのはよく考えたら面白い言葉ですよね。『デザインファッション』って言わないし、『デザインカー』とは言いませんよね。デザインがそのプロダクトに定着しているものについては、その言葉がいらなかったんです。その言葉を言わなければならないくらい当時はデザインがなかったということですよね。それは非常に面白いやり方だと思いました」(坂井氏)

10年後のケータイはカードサイズになる?

 坂井氏が最後に深澤氏に投げかけた質問は、「10年後のケータイはどうなっているか?」というものだった。

 「僕のプロダクトデザインに対する考え方から言うと、ある程度、今空中に浮いている、中間領域にあるものは、2つの方向に分かれると思います。1つは壁の中や建築の中に取り込まれていく方向性。もう1つは人間の身体の中に取り込まれていく方向性です。これは紛れもない事実で、逆らうことはできません」(深澤氏)

 深澤氏によると、昔の大きなブラウン管のテレビは、液晶やプラズマテレビとしてどんどん薄くなって壁の方に近づき、扇風機という空間に露出していたものは、エアコンとしてだんだん壁に入っていっているという。また一方で、昔は大きなテープレコーダーだったものはどんどん小さくなってiPodになり、さらに小型のMP3プレーヤーになって体に近づいていっている。そこに限度はあるが、そういうものの行き先は決まっているのだという。そして、空間に残るものは家具くらいしかないと結論付けた。

 「携帯電話がギリギリまで人間に近づいたときにどうなるかというと、とても人間に近寄りすぎていて難しい。どこまで物理的なインタラクションを起こすか。僕は1つの路線として、カードという基準サイズがあると考えています。そしてその中に自分の心臓部を入れるかというと、別の面でメモリーなりいろいろなものを封入するひとつの単なる箱、物体としてしか存在しなくなるかなと思います」(深澤氏)

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