虹の女神 Rainbow Song「あおいが死んだ」Mobile&Movie 第235回

» 2006年11月17日 03時08分 公開
[本田亜友子,ITmedia]
作品名虹の女神 Rainbow Song
監督熊澤尚人
制作年・製作国2006年日本作品


 今回紹介する作品は、岩井俊二原案、桜井亜美脚本のせつないラブストーリー『虹の女神』。瑞々しい学生時代を振り返るシーンで、登場する携帯電話はvodafoneとJ-Phone(!)。主人公の智也は、空にかかる不思議な形の虹を見て、美しいものを一番に見せたい人に写メールを送ります。

 映像制作会社で働く岸田智也(市原隼人)は、仕事場で怒られ続ける毎日。要領が悪く小さなミスを繰り返す自分に、この仕事が向いていないのかもしれないと思い始めていました。そもそも、この会社に誘ったのは、大学時代からの友人の佐藤あおい(上野樹里)でした。

 二人が知り合ったのは、近所のCDショップでアルバイトをしていたあおいに、智也が声をかけたのがきっかけでした。この店で求人募集していないかと尋ねる智也に、親切に答えたあおい。そんな面倒見のいいあおいに、智也はさらに無理な頼み事をしてきたのです。それは恋のキューピット役。あおいは断ろうとしましたが、自分の好きな映画の制作費のため、アルバイトと考えて智也の願いを聞き入れることに。御礼にと智也は一万円を指輪型に折って、あおいに渡したのでした。

 それ以来、智也があおいの周囲に頻繁に現われるようになります。あおいが大学のサークルで映画を撮影している時にも、邪魔をするほど。あおいは逆に智也を主人公にして、映画の脚本を書き始めます。演技経験のない智也をあおいが丁寧に指導して、短編映画『THE END OF THE WORLD』は完成したのでした。

 いつからか、あおいは智也に惹かれている自分に気付いていましたが、智也には恋の相談を持ちかけられるばかり。気持ちを隠したまま卒業していき、就職してからは少しずつ疎遠になっていきました。

 「佐藤です。元気?」

 久しぶりに智也の携帯電話に、あおいから連絡がありました。アルバイト生活だった智也に、あおいの会社で働いてみないかというのです。

 「なんで人間って就職しなきゃいけないんだろう」

 と智也は呟きつつも、あおいの会社で仕事をすることに。同じ会社で働き始めてしばらく経った頃、あおいが会社を辞めて、アメリカに行くという話を聞いた智也。心の底では智也に止めてほしかったあおいでしたが、智也の口から出た言葉は

 「日本にいればいいのに」

 「そば、じゃないんだ」

 智也への気持ちが一方通行だと悟った瞬間でした。あおいは映像の勉強をするため、アメリカへ旅立つます。そして、智也が仕事に疲れてきた頃、携帯電話に訃報が……。

 「あおいが死んだ」

 アメリカで飛行機事故に遭い、亡くなったと聞かされ呆然とする智也。上司に引っ張られ、あおいの自宅へ向かいます。大学時代の仲間も肩を落として、やって来ていました。そこで久しぶりに、あおいが撮った短編映画『THE END OF THE WORLD』を見る智也。作品の中には、あおいの愛が溢れていました。鈍感だった智也も、失って初めて大切なものに気付いたのでした。

 あおいの妹のかな(蒼井優)から

 「これ、あげる」

 と智也は携帯電話を受け取ります。それは、あおいが最後まで身につけていたもの。いつか美しい虹を見た時に智也が送った写メールは、あおいに届いていたのでしょうか。智也が携帯電話を握りしめて、立ち尽くすラストシーンはせつないばかりです。

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