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» 2006年12月28日 23時59分 UPDATE

2006年の携帯業界を振り返る(1):2006年は空前の端末ラッシュ──その傾向と問題点 (1/4)

通信ジャーナリストの神尾寿氏とケータイジャーナリスト石川温氏を迎え、2006年の携帯業界を振り返る年末特別企画。第1回目は2006年端末の傾向と海外メーカー製端末、SIMロックフリー、ビジネスケータイなどの話題を中心に大いに語ってもらった。

[聞き手:房野麻子,ITmedia]

大量にリリースされた新端末──ソフトアップデートはメーカーの甘え?

ITmedia 1月17日にドコモの702iシリーズの発表会(1月17日の記事参照)、その翌日がボーダフォンの春モデル(1月18日の記事参照)、またその次の日がauの春モデル(1月19日の記事参照)、という状況から始まった2006年は、番号ポータビリティを控えていたこともあって、とんでもない数の端末が、特に秋に登場したわけですが、お二方は今年の端末をどのようにご覧になりましたか?

神尾 今年を振り返ると、いくつかトレンドがあったと思います。端末数が多かったというのが、まず1つ。これは、番号ポータビリティがあったから当然だと思います。

 その中で共通のキーワードをつけるとすれば「キャッチアップ」。特に、ドコモとauのキャッチアップ合戦が後半かなりありました。「端末でできるだけ他社との差を少なくしよう、でも差別化はしたい」という、なんといいますか、同じ速度で走りながら、さらに競争をするというような、大変なことをしていたと思います。

 端末そのものにフォーカスすると、目立ったのはワンセグ。それも、前半戦のネタかなと思ったら、むしろ後半戦に効いてきた。ワンセグが始まったばかりの春よりも、11月、12月にキラーサービスになったな、と思いました。

ITmedia 4月は「ワンセグが始まりました!」といいつつも、ちょっと様子見という感じでしたね。

神尾 ショップも放送局も、本気になったのは10月以降。そういう意味では、年末商戦にドコモの新しいワンセグ端末がなかったのは極めて痛かったと思います。

 また別の視点では、ようやくかもしれませんが、カタログ上のスペック競争が一段落したと感じました。使ってみてどうかという購入後の満足感を重視するメーカーが伸びた年だと思います。例えばカシオの「W41CA」や、スライドスタイルを採用する三菱の「D902iS」「D903i」などがそれに当たります。地道に使い勝手を良くしてきて、不満の出ない作りになったものが評価された。

 あと、クラムシェル(編注:折りたたみ型)、それもオーソドックスなクラムシェルが、だいぶ限界に来ていると感じています。今年1年でNシリーズの人気がかなり落ちましたよね。「N702iD」を例外とすると、Nは全体的に苦戦している。単純な折りたたみはダメで、シャープが打ち出したサイクロイドのような特殊な機構が注目されたり、スライド端末が再評価されたりしている。今までのようなオーソドックスな形の中でのスペック競争というのは厳しくなっています。UIにこだわるのか、フォルムにこだわるのか、もしくは機構的なこだわりを持つのか、というテーマが現れたところに変化を感じました。

石川 番号ポータビリティを迎えるにあたって、各社とも“大量ラインアップ戦略”をとってきましたが、その弊害も出てきていると感じています。1つは、見せかけの型番だけで、中身が一緒というものが多かったこと。これはユーザーにとってはいいのかもしれませんが、報じる側からすると、書きようがなくて(笑)。それは別にしても、中身云々よりも、見かけ重視、カラバリ重視ということになってきた。それはマーケティング戦略なのかもしれませんが、今後も多くなってきそうです。端末の中身は進化しないけれど、外側が変わってくることが多くなる。それともう1つ、最近ニュースサイトを見ていてよく思うのが、不具合が多いこと。

神尾 ああ……。

石川 ワンセグなどいろいろな機能が載ったことによってソフトが高度化している、ということもありますが、リソースを割くことができないというか、端末の数をたくさん出さなくてはいけないために、チェックの手が回りきらなくなっているということもあって不具合が多くなっているのかな、という感じがしています。

 また、色々な会社に端末を供給したいという思いはあるけれど、どこかに肩入れすると、どうしてもパワーダウンしますよね。三洋電機がいい例で、とりあえずドコモ端末を出せて、キッズケータイでそこそこは売れたけれど、メインにはなっていない。かたやau向けを見るとかなりパワーダウンしていて、似たり寄ったりの端末しか出していないということがあります。シャープもしかりです。au向けの「W41SH」はちょっと期待はずれでしたし。そうやって見てみると、メーカーがかなり疲弊しているのがわかるような気がしますね。

神尾 不具合が多くなったのには2つ要因があると思います。1つはメーカーが今、かなり激務モードになっていて、疲れが出てきているというのがある。もう1つは、ファームウェアのエアアップデート(編注:端末をショップなどに持ち込まずに、ユーザー自身でパケット通信を利用してソフトウェアの更新)ができるようになったこと。特に後者に「甘えている」フシはありますね。

ITmedia 何かあったら後でソフトウェアアップデートすればいいや、っていうことですね。

神尾 そうそう。ゲーム機だって買ってきてすぐソフトウェアアップデートが必要な時代なので(笑)。完全に家電のノリではなくなりましたね。

石川 完璧なものじゃなくていい、というような雰囲気を感じます。アップデートは、ちょっと甘えのような気がしないでもない。

神尾 ソフトウェアに関しては、ずさんだなと感じることはありますね。少し前までは、ソフトウェアのバグが出ると、ショップで回収して交換・修理ということになったわけで、バグ対応に何十億という費用がかかっていました。でもソフトウェアのアップデートができるようになってからは、修正版ソフトを作れば、端末を回収する必要がないので、その流通にかかるお金は減っているはずですから。良し悪しですね。

ITmedia ソフトウェアアップデートができるようになったことで、情報公開が遅れるということもあるように思います。更新ソフトができて初めて「これこれこういう不具合がありましたが、ソフト更新の準備ができました」と告知していますから。ユーザーは早くから騒いでいるんですが、用意ができるまでは、公式に「ここが不具合です、今、対応しています」という発表がなかなか行われなくなってきている気がします。

神尾 確かに、後からアップデートできるというメリットはわかるんです。とはいいつつも携帯はPCじゃないんだから、もう少しクオリティを上げてから出してほしいですね。アップデートに頼るなとはいいませんが、もうちょっと品質管理をしっかりしてもいいんじゃないかな、とは思います。

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