Windows Mobile搭載機として一歩抜きん出た存在――「EM・ONE」「EM・ONE」レビュー 第2回(4/4 ページ)

» 2007年04月10日 20時58分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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W-ZERO3の流れをくむQWERTYキーボード+ATOKの予測変換

 続いてEM・ONEの文字入力環境を見ていこう。スライド式のQWERTYキーボードは、両手で抱えて親指でタイピングするタイプ。両手の親指でつにはキーピッチは十分で、慣れれば、PC並とはいわないものの、携帯電話のダイヤルキーよりはずっと快適に入力できる。

 ほかのキーと一緒に押すことの多い[Shift][CTRL」[Fn」キーは、指を離した後も入力状態が続く仕様で、指一本でもキーの同時押し操作が行える。これはW-ZERO3シリーズと同じだが、キーボード左側に配置されたキーと併用する場合に便利だ。

 レイアウトで気になるのは、キーが四角四面に置かれていること。PC用のキーボードは上下のキーが若干ずれて配置されているが、EM・ONEのレイアウトはこれと比べると違和感がある。キータッチは好みによるが、同カテゴリの製品であるW-ZERO3シリーズやソフトバンクモバイルの「X01HT」などの方が良好に感じられる。長文を入力していると、キーを押す親指の側面がちょっと痛くなるうえ、[SPACE]キーは両端が接点で、キーの中心を押しても反応しないなどの難点があった。

 これ以外にも[ESC]キーが[Fn]キー併用となっている点も気になる。利用頻度が少ないキーを併用とするのはW-ZERO3シリーズも共通だが、やや大きなキーボードになったのであれば、独立させてほしかったと思う。

photophoto W-ZERO3/W-ZERO3[es]とのキーボードの比較。キーサイズやピッチはW-ZERO3に近い。W-ZERO3[es]よりは縦のキーピッチがあって打ちやすいが、レイアウトやキータッチなどでW-ZERO3に分があると感じる

photo こちらはX01HTとの比較。文字入力のしやすさはEM・ONEが勝るが、キータッチはX01HTのほうが良好だ。キータッチはスリムさとのトレードオフになってしまったのかもしれない

 またスクロールホイールは、項目選択やスクロール時の操作性は非常によいが、[決定]キーを備えていないのが残念。ホイールを回して選択し押し込んで実行する「ジョグダイヤル」のような操作ができれば、より便利になるだろう。

 日本語変換は、予測変換がATOK、通常変換はMS-IMEを利用するハイブリッドタイプ。これもW-ZERO3シリーズと同じだ。日本語入力モードのまま「CTRL]+[P]/[O]キーを押すことで、英文字変換もできる。ATOKらしく予測候補は豊富に準備されており、読み予測だけでなく次文節予測もサポートする。

 難点は候補選択が上/下キーのみという点だ。好みによるが、予測変換候補の選択は十字キーを上下/左右に動かして行いたい。ただこれは、日本語変換システムそのものをATOKに変更しないと難しいだろう。

photo 予測変換候補の表示。候補数もかなり豊富だ。ただこれだけの候補を複数段に表示するなら、上/下キーだけでなく十字キーで候補を選択したいと思ってしまう

質感も良好、機能も魅力。今後の改善に期待したい部分も

 イー・モバイルの千本会長が関連各社を直々に説得行脚(4月2日の記事参照)しただけのことはあり、EM・ONEはスリムで質感の高い、カッコイイ端末に仕上がっている。

 もっとも“PDA”としてみると不満を感じる点がないわけではない。例えば縦向きでメールソフトを利用すると、波打つようなスクロール表示になる。動画再生能力も高いとはいえず、グラフィックスアクセラレータにGoForce 5500を採用するが、そのパワーはワンセグなど一部の機能でしか有効に使われていない。例えば、PC用にエンコードしたVGAサイズのWMVやDivXファイルはスムーズに再生できなかった。

 動画再生に関してはアクセラレータに対応するソフトの登場を待てばよいが、メールソフトのスクロールがぎこちないのは、OSのレンダリングエンジンをアップデートする必要がある。

 EM・ONEはWindows Mobile搭載機として一歩抜きん出た存在で、単体で購入すれば9万5000円という高価な製品だ。より低額になる1年契約や2年契約で購入するユーザーも多いとはいえ、頻繁に買い換えられる製品ではない。不満点の改善を次期製品に期待するのではなく、端末のアップデートでよりよい端末に進化していくことに期待したい。

 イー・モバイルのサービスエリアはまだまだ限定的で、エリア拡大が今後の課題になるだろう。しかし、数年前には夢物語だったモバイルブロードバンド接続を現実的な定額料金で実現し、サービス開始と同時にそれを活用できるEM・ONEを投入したことに、惜しみない賛辞を呈したい。

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