まず、携帯基地局並みのセル範囲となるマクロセル化の推進だ。すでにルーラルエリアではマクロセルが用いられており、なるべく高い場所に基地局を置くなど工夫しているという。同時にリンクバジェットも改善されるため、時速120キロメートルでも安定して接続できるなど、モビリティも向上する。
PHSの基地局は、ソフトウェアアップデートで機能を拡張できる仕様だったため、かなり低コストで運用できたという。さらにチャンネルあたりのコストを下げるため、音声通話のハーフレート化も行う予定だ。チャンネルが2倍になることで、データ通信容量がさらに増える。なお、PHSの仕様上はクォーターレートまで可能で、ハーフレートでも携帯より高音質とのことだ。
そして、バックボーンをIP化することで、高速化とコスト低減を同時に行う。トラフィックの8割はすでにIP化しているが、基地局とバックボーンをつなぐ回線はいまだISDNのまま。これは基地局を取り替えていくことでIP化するが、バックボーンには影響しないため、“一足お先にNGN化”することも可能だという。また、IPベースのナノセルも導入済みで、構内での大容量トラフィックに対応している。
IP化した通信サービスについて近氏は、「IP化の特徴は、市場が水平分業になること。これまでの携帯事業は垂直統合だったが、IP化でオープンになるだろう。これが既存事業者にどのような影響を与えるかは分からない。しかし、“いずれそういう時代”が来るのであれば、いち早くそこに飛び込むのも一つの生き方」と述べた。
3.5G並みに高度化される予定のPHSだが、その先に控えているのが次世代PHS構想だ。近氏は、2009年には通信速度が20Mbps台になるというロードマップを示した。この次世代PHSにおいても、ウィルコムは回線容量の大きさをコンセプトに掲げる。
近氏は“不都合な真実”として、通信速度とトラフィックの関連性を説明した。固定ブロードバンドの月間トラフィックは平均10Gバイトで、ウィルコムの408kbps接続サービスではだいたい1Gバイト。通信速度に比例してトラフィックも増えていくが、携帯電話に関しては10Mバイトから多くて100Mバイトにとどまる。
「携帯キャリアの方は口にしないが、携帯電話でモバイルブロードバンドを実現しようとすると、今の100倍から1000倍の回線容量が必要になる。果たして、現在と同じ料金水準でこれを実現できるのか」(近氏)と、各キャリアの容量不足を指摘した。
また、全国エリアで高速に使えるのは3.5Gまでで、それ以降の4GサービスやWiMAXでは、“速度は速いがエリアが狭い”“どこでも使えるが、速くはない”と、データ速度とモビリティがトレードオフになる。近氏は、これは技術的な限界であるとし、さらに回線容量という指標が考慮されていないという。
近氏は次世代PHSについて、「容量に関しては現在でもPHSが携帯電話を上回る。高速化した次世代PHSでも、緻密なマイクロセルネットワークによるモビリティと容量の大きさといったアドバンテージは変わらない。まだ周波数が割り当てられていない段階だが、“ついに我々の時代がきた”と勝手に思っている」と、その優位性に胸を張った。
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