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» 2007年05月07日 19時45分 UPDATE

神尾寿のMobile +ing:熟成された「904i」と、模索が続く新たなUI

ドコモの904iシリーズは、900iシリーズから始まった“新生FOMA”の1つの区切りとなる完成度の高いモデルだ。しかしその中には、新しいUIの採用など、次世代の端末へ向けた模索も見られる。

[神尾寿,ITmedia]

 今年は例年より早く、ドコモがゴールデンウィーク前に夏商戦モデル「904iシリーズ」を発表した。実際に各モデルが店頭に並ぶのはもう少し先だが、筆者は一定期間、開発途上の904iシリーズを試す機会に恵まれた。

 904iシリーズ各機の紹介は本誌リポートに詳しいが(4月23日の記事参照)、実際に1週間近く日常的に使うと、シリーズ全体の傾向やポジションが見えてくる。

 まず、904iシリーズ全体の印象は「熟成されたFOMA」である。2in1など新機軸を盛り込み、短期間でメジャーバージョンアップを果たした904iシリーズだが、長い目で見れば、2003年12月に発表された900iシリーズから始まった新生FOMAの1つの区切り。次の905iシリーズは、HSDPAやGSMが標準搭載された新たなプラットホームになる模様だ(2月8日の記事参照)。そのため904iシリーズは、クルマで例えれば、フルモデルチェンジ前のラストイヤーモデルと位置づけられるだろう。毎年改良が加えられた結果、機能と使いやすさがバランスよくまとまっている。先進志向のユーザーよりも、むしろ安定志向のユーザーにお勧めなラインアップである。

Photo 「N904i」

 なお、今回の904iシリーズの中で、ユニークな立ち位置になるのが「N904i」だ。同機はHSDPAを標準搭載しており、全体的に処理速度が速くなっていてレスポンスがよい。性能や機能的には“プレ905i”といってもいいと感じた。N904iは、904iシリーズの中で先進性を求めるユーザー向きだろう。また、N904iはユーザーインタフェース(UI)が改められており、旧来のNEC製端末の欠点だった操作のわかりにくさや、独特のクセが減少している。他メーカー製端末からの乗り換えユーザーにも配慮している点は好感が持てた。

大画面時代を見越した新型UIへの模索

 904iシリーズは全体的には熟成のラインアップであるが、N904iのHSDPA以外にも、将来に向けた布石がある。画面サイズの拡大と、新たなUIへの模索である。

 今回の904iシリーズで共通しているのが、全機種が“2.8インチ以上”の高画質ワイドディスプレイを搭載していることだ。ハイエンドからミドルクラスの端末市場では、たとえワンセグ非搭載でも「大きくてきれいなディスプレイ」のモデルほど売れる傾向がある。昨年後半から2.8〜3インチ液晶を搭載したモデルが人気だったが、904iシリーズではこのサイズが標準になった。

Photo D904iは2.8インチワイドQVGA、F904iは3.1インチワイドQVGA、N904iは3インチワイドVGA、P904iは2.8インチワイドQVGA、SH904iは3インチワイドQVGAディスプレイを搭載する

 さらに液晶の大型化やフルブラウザの本格搭載を受けて、ダイヤルキーと十字キーの次になる、新たな入力デバイスの模索が目立つ。新機構として注目されているのは、「SH904i」が搭載したタッチパッド機構「TOUCH CRUISER」だが、Nシリーズの「ニューロポインター」やDシリーズの「スピードセレクター」も、歴代モデルに搭載されたノウハウを生かして着実に進化している。これら新たな入力デバイスは、端末操作の使いやすさ向上のみならず、ブラウザ画面やPC向けドキュメントの閲覧時を中心に“スクロール”や“カーソル操作”をしやすくするためのものだ。今後の携帯電話UIにとって、重要な役割を担うことになるだろう。

Photo D904iのスピードセレクター

 ここからはあくまで筆者のインプレッションであるが、これら3種類のUIのうち、完成度と総合力の高さを感じたのは「D904i」のスピードセレクターだ。先代「D903i」で欠点だったホイール回転と画面スクロールのリニアさが欠けるところや、決定キーが押しにくいといった弱点をしっかりと解消してきた。フルブラウザ利用時の操作性では、フリーカーソルで強い他の2方式よりも劣るが、iモードや端末操作を中心に使うのならば最も使いやすいUIである。特にiモードでのブログや掲示板利用など、縦スクロールを多用する人にはお勧めだ。

PhotomN904iのニューロポインター

 N904iのニューロポインターはカーソル移動のチューニングが進み、狙ったところにピタリと動かせるようになった。かつてのような不自然さはない。フリーカーソル向けの携帯電話UIとして、着実に進化している印象だ。しかし、その一方で、iモード利用時などに“画面スクロール”目的で使うには、反応がよすぎてスクロール速度のコントロールが難しい。またカーソルモードからスクロールモードに設定変更が必要なのも面倒だ。フリーカーソル時の操作性は完成されているので、次の課題はスクロール向けのUIをどうするかだろう。ニューロポインターに統合するのか、それとも別のスクロール用のUIを搭載するのか、NECがどう判断するのか興味深いところである。

Photo SH904iのTOUCH CRUISER

 シャープの「TOUCH CRUISER」は、ファーストインプレッションの段階では発展途上という評価である。タッチパッドのように“触る・なぞる”UIは、携帯電話以外のUI環境に広がっている。最近のユーザーにとって馴染みやすい操作方法ではあることは間違いない。しかし、携帯電話へのタッチ機構搭載は、センサー部分が“小さく・狭くなる”というハードルがある。実際、TOUCH CRUISERで使いにくいと感じたのも、センサー部分が狭くて、指の動きへの反応がよすぎることだ。

 携帯電話でタッチセンサーを使うならば、三洋電機製のau端末「W42SA」の「スムースタッチ」のようにダイヤルキー部分すべてを使うくらいの広さがほしいところだ。また、タッチした時の操作性や誤認識防止、ジェスチャーコマンドの開発など、さらに進化させる要素は多々あると感じた。TOUCH CRUISERは目の付け所は悪くなく、将来性はあると思うので、数世代をかけて使いやすいUIに育ててほしいところである。

 ダイヤルキー、そしてカーソルキーに続く新たなUIは、未だに「模範解答」がない状態だ。逆に言えば、ここで使いやすいUIを提案し、それがユーザーに受け入れられれば、新たなスタンダードになりえる。熟成された904iの影で、新たなUIへの模索が続いている。904i発売後のユーザーの評価と、メーカー各社の今後の取り組みに注目である。

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