基地局破壊までエスカレート――KTFがSKTを逆転! 加熱するHSDPA覇権争い韓国携帯事情(2/2 ページ)

» 2007年05月08日 19時42分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]
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競争加熱で基地局破壊

 HSDPAのサービス争いが過熱するあまり、ライバルキャリアの基地局を破壊する事件も起きている。

 4月中旬、韓国の地方都市で、KTFの基地局が破壊される事件が起こった。犯人として逮捕されたのはSKTの基地局管理会社に勤める社員で、KTFの基地局設備に侵入し破壊した疑いがかけられている。当然、基地局が破壊されたことでエリア内のKTF端末が不通となり、不審に思ったKTF社員が点検に向かった際に、車で逃走する犯人を目撃したという。

 事件以前に発生したSKTのHSDPAサービスの電波障害が、KTFの基地局が原因と判断しての犯行だった。

 この事件に対しKTFは、SKTを提訴する方針を明らかにしている。しかし、「加害者が心から反省し謝罪をすれば、告発を取り下げる」(KTF)ともコメントしている。

SKTもサービス攻勢

 KTFに対し劣勢が続くSKTだが、現状から脱却するべく、5月1日から本格的なマーケティング攻勢に出ると宣言した。

 料金制では、HSDPAの加入者に対し3カ月間で18万ウォン(約2万3000円:1000分の通話料に相当)を無料提供するプロモーションを開始。また「ting 映像定額制」「映像指定番号定額制」という2つの新料金プランも発表した。

 両者とも月額基本料は5000ウォン(約650円)だが、ting 映像定額制は18歳以下の未成年のみが加入できる料金プランで、50分と9000ウォン相当(約1160円)のテレビ電話通話が行える。映像指定番号定額制は、指定した番号(最大6回線)に対し、60分と1万800ウォン相当(約1400円)のテレビ電話がかけられるプランだ。いずれも未成年や複数の仲間など、より多くの人にテレビ電話を利用してもらいたいという意図が見て取れる。

 さらにSKTのメンバーシップ会員を対象に「Tポイント制度」も開始した。これはレストランや銀行、コンビニなどの同サービス加盟店で決済をした際、最大8%のポイントが加算され、これを携帯電話の購入や通話料決済、コンテンツ購入などに活用できるというものだ。

 昨今、韓国ではキャリアのメンバーシップサービスは縮小しており、SKTの場合は社会人向けの「UTO」カードや、女性向けの「CARA」カードがなくなったほか、メンバーシップサービスの花形だった映画館割引も、適用されない映画館が出てきた。縮小の要因として、加盟店とキャリアの間で負担額の折り合いが付かなくなったと伝えられている。そのため、加盟店での料金割引きではなく、端末購入や通話料支払いの割引に使えるキャリアのポイントサービスへと移行しているという。

 さらにSKTでは、上半期中にHSDPA携帯4機種をリリースするというアナウンスも行っている。

 実際にはまだまだSHOWの存在感がSKTのHSDPAサービスを上回っているが、SKTのマーケティング攻勢によって逆転も十分にありえる。追う側追われる側とも必死の競争は、今始まったばかりだ。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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