発表会では2008年3月期の事業プランとして、従来のASDL事業/ISP事業/伝送事業/WiMAX事業からなるネットワーク事業に加え、新たにデバイス事業本部を新設することが発表された。新規事業となるWiMAX事業は、第2四半期のモバイルWiMAX免許申請に向け、事業計画の準備を進めているという(2006年7月の記事参照)。
デバイス事業本部は、モバイル・固定・WiMAX共通のデバイスとアプリケーションプラットフォームを開発する部門で、単独で利益が出る事業を目指す。開発したデバイスは同社だけでなく、他社への販売も行うなど水平型のビジネスモデルを採用し、事業領域を拡大する予定だ。2008年3月期中に、デバイス事業で80億円の売上げを見込んでいる。
さらにイー・アクセスは、2008年3月期中にイー・モバイル株の持分比率を変更し、イー・アクセスの連結対象から外すことを表明した。
現在イー・アクセスが持つイー・モバイル株10万株を、6月に第2位株主のゴールドマン・サックスへ売却。持分比率を、イー・アクセス43.5%:ゴールドマン・サックス29.8%から、イー・アクセス37.6%:ゴールドマン・サックス35.7%へと変更する。
「持分比率を変える目的は、イー・モバイルの損失がイー・アクセスのバランスシートへ与えるインパクトを小さくすること。同時に、現在のイー・モバイルが持つ企業価値を、イー・アクセスの株主に還元することにある」(千本氏)
イー・モバイルは2011年ごろの単年黒字を計画しているが、それまでは初期投資段階として損失を出し続けてしまう。株式の売却により、イー・アクセスの財務諸表に与える影響を回避するほか、売却資金によってバランスシートを強化し、株主配当も500円高くする考えだ。
「最近の財務諸表ではPL表(損益計算表)ではなくバランスシートを重視する傾向がある。イー・モバイルの赤字は予想されたことだが、イー・アクセスのバランスシートへ与えるインパクトは大きすぎる。“規模の大きい子会社”が“規模の小さい親会社”へ与える影響をどう小さくするのか。MBOやLBO、新株発行による増資も検討したが、株主利益を考えると持分比率を変更するというのがベストだと判断した」(千本氏)
イー・アクセスはこのシナリオについて、昨年から検討していたと話す。同社代表取締役副社長兼最高財務責任者(CFO)のエリック・ガン氏は、ゴールドマン・サックスの持つ株式比率が高まったがいつまで保有すると思うかという質問に対し、「ゴールドマン・サックス側に聞いた方が早いと思う」と前置きした上で「プライベートエクイティファンドの目的は、黒字の段階で早めに上場させ、早めに売却することにあると思う。イー・モバイルの計画では、2011年には単年黒字を達成させ、2012年には売上高3000億円を目指す。早ければ、そのころには上場したい」とコメントした。
また千本氏は「ゴールドマン・サックスはイー・アクセス開業のころから出資してくれたパートナー。苦難の次期もずっと株主にとどまってくれ、マザーズ上場を経て東証一部になった時点で売却した。彼らは、株主として取締役として、常に適切なアドバイスを行ってくれる。これまで我々が得たメリットは計り知れない」と補足した。
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