「脱“もっさり”宣言」――攻めのNECが「N904i」で目指すものとは「N904i」開発陣インタビュー(2/2 ページ)

» 2007年05月31日 03時00分 公開
[太田百合子,ITmedia]
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 「音楽の楽しみ方には曲を聴くだけでなく、ミュージッククリップを見るという方向性もあります。“楽しい”というコンセプトをさらに広げて、音楽に加え動画も高画質で再生できるようにしました。この楽しみは、高速データ通信と高音質サウンド、高画質な大画面という3つがそろって、初めて具現化できたものです」(田丸氏)

 またN904iは、2つのフルブラウザを搭載しているのも特徴だ。「スタンダードタイプ」として従来のアクセス製「NetFront」を用意するほか、「ビューワタイプ」としてPicsel製のフルブラウザを採用する(4月25日の記事参照)

 ビューワタイプでは、常に表示されるツールバーや見たい部分をシームレスに拡大できる機能によって、PC向けサイトの閲覧性を高めている(4月23日の記事参照)。「こうしたツールバーの操作や、見たい部分をシームレスにズームできる機能も、ニューロポインターがあるから生きてくるもの」と田丸氏は説明する。また大澤氏も「ニューロポインターはもともと、フルブラウザや動画視聴を想定して開発したインタフェース。ようやく本領を発揮できる環境が整ってきた」と、自信を見せる。

多彩な機能を搭載しても、ニーズに応えなければ楽しくない

 高速データ通信を生かすエンタテインメント機能の充実を図ったN904iだが、基本的な部分の大幅な見直しも行われている。いくら機能を盛り込んでも、端末の使い勝手が悪ければ、ユーザーが楽しめないからだ。

 「ユーザーが端末に求めるものには2種類あると思います。1つは、“こういう機能がほしい”というリクエスト。もう1つは、“こうあってほしい”というニーズです。このニーズに応えられないと、“使いにくい”という不満につながる。今回はリクエストに応えるとともに、ニーズにもしっかり対応しました」(田丸氏)

photophoto キーアサインをブラッシュアップしたN904i(左)と、従来モデルN903i(右)のダイヤルキー。バックライトには白色LEDを採用し、Orange CutとPink Sodaでは点状の照明となる

 その1つがキー配置の変更だ。NECの端末では濁点の位置が#キーにあるなど、他社端末とは異なる配置になっていた。そのため、乗り換えユーザーから使いにくいといった声が寄せられていたという。N904iでは、*キーに濁点と小文字変換を配置し、長押しで改行になった。#キーは、英字モード時に「http://」を入力できるようになり、英数字以外ではスペースの割り当てに変更。逆トグルボタンは発話キーに配置されたほか、かな入力時には大文字の次に小文字が入力候補として表示される。

 「従来からNECの端末に慣れ親しんでいるユーザーのことを考えれば、大きなチャレンジでした。しかし、新しいユーザーの方にも使っていただくためには、こうしたニーズに応えていくことが重要だと考えました」(田丸氏)

photo 「N904i」ではメール画面もVGA化し、フォントもなめらかになった。画面の高解像度により情報量も増加。最少フォントサイズのN903i(右)と同じ文字量を、より大きなフォントサイズで読むことができる

 このほかにも、不在着信通知ランプを付けるなど「重要なニーズにはできる限り応えた」と田丸氏は振り返る。「不在着信ランプを常時点滅させると、消費電力は増えます。そのため、ほかの部分の省電力化するよう工夫しました。たとえばダイヤルキーのバックライトには白色LEDを採用し、省エネ性と視認性を向上。また、サブディスプレイにも省電力性に優れる有機ELを採用しています」(田丸氏)

 また、これまで不評だったギザギザが目立つフォントも、階調処理を施すことで従来よりもなめらかに表示されるよう改善。操作性を大きく左右する描画スピードも、ワイドVGA(480×854ピクセル)表示で最適になるようチューニングしている。その結果「“脱もっさり宣言”をしてもよいくらい、レスポンスを改善した」(田丸氏)という。

高速データ通信を柱に、守りから一気に攻めに転じる

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 NECはN904iを“攻めの端末”と位置付けている。エンタテインメント機能の強化も、基本機能の見直しも、すべては攻めるためだ。その背景には、変わらないことを良しとした守りの姿勢が、ユーザー離れにつながったという過去の反省がある。

 「変わらないことが評価された時期もありましたが、今度は変わることでユーザーに新しい価値を提供していきたい。N904iはその攻めに転じる最初のケータイ」と大澤氏。ただし変わるとはいっても、「従来から評価されてきたNECのよい部分。たとえば安心感といったものを、否定するわけではない」と言う。

 「いたずらに変化を求めているわけではありません。もちろん変化のためのシナリオがあります。基本は、NECが持っている技術やその技術をベースにした使いやすさ、社会の変化に合わせた利用シーンの提供といったものを具現化していくこと。そこにデザイナーとのコラボレーションだったり、トレンドといったものをうまく織り交ぜることで、変化を感じてもらえると思います」(大澤氏)

 最後に大澤氏は、変化させるための大きな軸になるのが、HSDPAなどの高速通信技術だと説明した。

 「これからの携帯電話は、ネットの向こう側にあるコンテンツを、いかに楽しめるかという勝負になる。ただWebページを見るだけでなく、音楽や動画をネット経由で楽しんだり、ブログやSNSを利用するなど、ネットの利用シーンはめまぐるしく変化しています。こうしたインターネットのトレンドを睨みつつ、他社に先駆けて新しいネットサービスに対応したい。その時、『NECの端末はネットに強い』という優位性を感じてもらえるようにしていきたいですね。その意味でも、N904iは大きな第一歩だと考えています」

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