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» 2007年06月04日 15時40分 UPDATE

石川温・神尾寿の「モバイル業界の向かう先」:第2回 NTTドコモ 辻村清行氏──端末にはさらなる革新的な進化が必要 (1/2)

業界のキーパーソンとジャーナリストの石川温氏、神尾寿氏が、業界の行く末を語る鼎談企画。第2回も引き続きNTTドコモ 取締役常務執行役員 プロダクト&サービス本部長 辻村清行氏に話を聞く。

[房野麻子(聞き手:石川温、神尾寿),ITmedia]

 激しくトレンドが激しく移り変わるモバイル業界は、これからどこへ向かって進んでいくのか。業界のキーパーソンを迎え、通信ジャーナリストの石川温氏、神尾寿氏とざっくばらんに業界の未来を語ってもらう「モバイル業界鼎談」の第2回では、NTTドコモ 取締役常務執行役員 プロダクト&サービス本部長 辻村清行氏に端末に起こる進化について聞いた。

PhotoPhotoPhoto 左から石川温氏、神尾寿氏、NTTドコモ 取締役常務執行役員 プロダクト&サービス本部長 辻村清行氏

FeliCaによる変革は緩やかに起こる

辻村 先ほどFeliCaのことを申し上げましたが、この前マクドナルドさんと発表をしたとおり(2月26日の記事参照)、マクドナルドは国内に約4000の店舗あって、のべ14億人のお客様が来店しているわけです。マクドナルドの全店がおサイフケータイに対応して、ハンバーガーあるいはコーラやコーヒーを非接触ICで買うようになると、リピート客の情報が自然と入ってくるわけです。そうすると例えば、神尾さんがどこかのマクドナルドでおサイフケータイを使うと5%引きのクーポンをもらえて、次の店で5%引きで買える、ということもできるわけです。そしてそれはマクドナルドだけじゃなくて、色んなお店でできる。スーパーもコンビニもやるかもしれない。そういうツールって今までなかったですよね。

神尾 ドコモ2.0のビジョンをこれから実現されていくわけですが、今のお話をうかがっていると、端末機能も通信速度を含めたネットワークの性能も、まだまだスペックアップしていく必要がありますね。端末、インフラともに、来るべき需要に対して性能が足りていないのではないでしょうか。

辻村 そう思いますね。

石川 機能を求めるユーザーもいますけれど、機能が増えていけば増えていくだけ、逆にメールと通話だけあれば十分というユーザー層も少なからずいます。最近の市場を見ていると、「らくらくホン」が売れている事実もあります。そういったユーザーに対して、今後ドコモとしてはどうしていきたいと思ってらっしゃいますか?

辻村 それはそれで重要なお客様です。通話とメールでいいんだ、というお客様もたくさんいらっしゃると思うんです。日本の携帯の市場は1億契約近くになってきているわけですが(5月9日の記事参照)、テレビを見たくないという人もいれば、映画が好きじゃないという人もいれば、野球は嫌だという人もいるわけですから、いろんなニーズがあっていいんじゃないですか。全員がワンセグやFeliCa付きの端末を持たなくちゃいけないと思ってはいません。けれど、携帯が便利な道具であることは事実だと思うんですよ。

神尾 私は、通話とメールといった基本的なサービスを中心に使っていた人はコンテンツは使わないかもしれないけれど、FeliCa関連のサービスとは相性がいいと思っているんです。もちろん、今のおサイフケータイは利用開始のハードルが高いので、このままだと浸透は難しいけれど、本質的には(FeliCaも)ベーシックな使い方ができるものなんです。ユーザーの理解度が増して受け入れてくれるようになると、「通話とメール」だけといったシンプル層も、おサイフケータイは使うかもしれませんね

辻村 かざすだけでパッと買えるわけですから楽ですよね。タクシーに乗るのも。

神尾 流通やマーケティングで消費のあり方が変わるという部分でFeliCaは大きな可能性があります。

辻村 ええ、可能性はあると思います。

神尾 ただ、おサイフケータイが大きな変革になるには、多くのユーザーが受け入れられる状況にないという課題があります。だから、今のところライフスタイルや社会を大きく変えるムーブメントになり得ない。これは個人的にFeliCaを応援する立場からするともどかしいんです。潜在的な能力や可能性は大きいのに、といつも思います。

辻村 それは、まだ早いですよ。そんなに急激に画期的なことが起こるわけがない。でも、知らないうちにみんなが使っている、ということになるんじゃないですか。

神尾 iモードのときはすごく大きな変革でしたよね。登場して3年後くらいにはiモード、iモードとみんなが言い始めて、イノベーション感といいますか、変革の感触があって、世の中がそれで騒いでいたわけです。でもFeliCaを使った変革というのは、iモードのときのような急激な変革ではなく緩やかな変化で、気が付けば“それなしの生活”は考えられない、というような感じだと思うのですがいかがですか?

辻村 そうじゃないでしょうか。このあいだJRの方とお話ししていたときに、新宿駅の券売機を以前より20〜25%も減らしていると聞きました。今、Suicaの使用率は50%を越えているんじゃないかと思います。でも、いつからそうなったのかというと、みんなが急に切符を買うのを止めたわけではないですよね。でも5割以上の人は自然にSuicaに移行しているわけですよ。であれば、そのうちにカードが携帯になっていくということは十分考えられるじゃないですか。

神尾 なるほど。ドコモさんがおっしゃっている「生活インフラ」というのは、急激な変革というよりは、気が付けば変わっているという緩やかな変革の連続という感じですか。

辻村 それでいいんじゃないでしょうか。そのためには、リテラシーの問題と使い勝手の問題はよく考えておかなきゃいけませんね。僕、電車の乗り換えを検索してくれるような機能はすごく便利だと思うし、誰でも使いたい気持ちはあると思うんですが、(iモードユーザーの)半分は使っていないわけですよ。それは「使ってみたいんだけど、どう使っていいかわからない」ということなんでしょうね。だから極端な話、キオスクみたいなところがあって、そこに行けば自分の携帯に乗り換えの情報を入れてくれて、あとはボタンを押しさえすればいい、というような、それくらいの何かが必要になるかもしれないですね。

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