さまざまなメーカーがデザインにこだわった携帯電話を投入する中、Nokiaがリリースした「8800 Sirocco Edition」。時計とジュエリーの技法を取り入れた「8801/8800」のバリエーションモデルで、端末の名前は「砂漠に吹く風」に由来。大自然からインスピレーションを得て、それをハイテク製品に取り込んだというNokiaの意欲作だ。
シンガポールで開催されたNOKIA CONNECTION 2007のセミナーに登場したシニアデザインマネジャーのサイラス・グラント氏が、このデザインが生まれるまでの過程を話した。
「職人技と大自然の壮大さをハイテク製品にどう落とし込むかに挑戦した端末」──。グラント氏は8800 Sirocco Editionのコンセプトを、こう説明する。高級時計のような素材へのこだわり、自然のおおらかな美しさを携帯電話のデザインに取り入れようという試みだ。
端末をデザインする上でインスピレーションを得たのは、自然を題材にした作品で知られるアーティストのAndy Goldsworthy氏の写真や、スローモーションの手法を使った不思議な世界観を持つ映像を発表しているBill Viola氏の作品。彼らの作品から得たものを端末に反映させることからデザインを始めたとグランド氏は振り返る。
こうして端末のイメージを固めた次の作業は素材の選定だ。「そこに置いてあるだけで美しく、人が欲しいと感じるような完璧なものを作りたい」という開発陣の思いを端末に反映させるため、クラフトマンシップを感じさせる本物の素材を採用したという。「ボディには使い込むほどに味が出るステンレススチールを、ディスプレイ部にサファイアコーティングのグラスを採用している」(グラント氏)。素材が決まると、携帯としてのメカニズムやデザインの詳細をCADで設計する作業が始まるという。
見た目だけでなく、開閉時に鳴る音や着信音、プリセットの待受画面、充電台やイヤフォンなどの付属物に至るまで同じ世界観を持ってデザインすることも重要だとグランド氏。「すべての要素について、統一した世界観を持ってデザインする必要がある。“すべての瞬間、美しい”ことを目指し、すみからすみまで本物を組み込んでいる」(グラント氏)
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