ニュース
» 2007年06月22日 23時59分 UPDATE

BREW 2007 Conference:BREWの市場はさらに拡大していく──QUALCOMM ポール・ジェイコブス博士基調講演

大手チップセットベンダーであり、アプリケーションプラットフォームBREWの生みの親でもある米QUALCOMMが主催する「BREW 2007 Conference」が今年も米国サンディエゴで開幕。初日の基調講演でCEOのポール・ジェイコブス博士が同社の取り組みを紹介した。

[園部修,ITmedia]
Photo 米QUALCOMM CEOのポール・ジェイコブス博士

 「7回目を数えるBREW CONFERENCEへようこそ。このプラットフォームに関わってきた多くの友人やパートナーたちが集うこのカンファレンスを、私は毎年楽しみにしています──」

 6月21日(現地時間)から米国サンディエゴで開催されている、「BREW 2007 Conference」で登壇した米QUALCOMMのCEO、ポール・ジェイコブス博士の基調講演はこんな挨拶から始まった。

 今年のBREW Conferenceは“Into the New”というテーマの下、世界各国の携帯電話事業者やコンテンツプロバイダなどから、過去最大となる2500人以上の来場者を集めて開催されている。業界のキーパーソンによる基調講演のほか、各セッションではBREWの最新バージョン「BREW Client 4.1」の紹介やアプリケーション開発への取り組み方法、実際にBREWを活用しているオペレーターによる事例の紹介、プログラミングの方法などを解説する100以上の技術セッションが用意された。

 その先陣を切って、QUALCOMMの現状と今後のビジョンを紹介したのがジェイコブス氏だ。同氏の講演の中から、興味深かったトピックをいくつか紹介したい。

米国の携帯もおサイフケータイになる

 ジェイコブス氏は、現在米国で注目されている分野として「モバイルコマース」を挙げた。モバイルコマースといっても、携帯電話を使ってネット上で買い物をするということではなく、日本でいうところの「おサイフケータイ」のことだ。

 同氏は、今後数年のうちに、実際の店舗でお金を払ってものを買うという行為が、どんどんデジタル化されていくと指摘。日本や韓国ですでに実用化されているように、米国でも携帯電話自体がクレジットカードや財布として機能するようになるとの見通しを示した。

 QUALCOMMでもRFIDやNFC(Near Field Communications)技術を活用した決済には注目しており、すでに主要な携帯電話事業者や端末メーカー、そしてCiticard VISAのような金融サービス企業などと連携して研究を進めているという。米国では幅広く利用されているクーポン券も、携帯電話を使うことで、ダイレクトメールなどによる配布に加えて、携帯向けSNSなどでの口コミによる配布も増えると見る。

ヘルスケア分野での携帯電話利用

 日本では低電磁波・省電力といった特徴を持つPHSが圧倒的なシェアを占めているヘルス、ウェルネス、フィットネス分野での携帯利用にも、ジェイコブス氏は大きな期待を寄せた。あくまでも米国内での話だが、医療の現場などを、これから拡大が見込める新たな市場と位置づけており、LifeCOMMというプロジェクトをすでに走らせているという。

 LifeCOMMは2008年の後半くらいに正式に発表を予定しており、「緊急時のサポート」「子供や老人の追跡(位置情報?)」「薬物療法の管理」などの機能を提供する。これらの機能はBREWアプリケーションで提供される。

 ヘルスケア分野への進出は、販売チャネルの拡大などにも結びつく。米国では携帯電話はキャリアショップや量販店で販売されているが、LifeCOMMデバイスは薬局などでの販売も視野に入れているからだ。さらに、端末にモーションセンサーや生体センサーのような、ユーザーの状態を検知するデバイスの搭載も検討しているそうだ。

MSMチップセットを家電やネット接続端末に

 MSM7000シリーズなどのハイエンド端末向けチップセットは、非常に高い演算性能を備えている。この性能を携帯電話だけに特化させておく必要はないので、家電やネット接続端末などにも使えるのではないかと考えているようだ。家電にMSMチップセットを搭載すれば、強力な演算能力と通信機能が組み込める。

 また新興国の中には、有線でのインターネット接続がなかったり、コスト的な理由で回線の敷設が困難な場所もある。そういった地域では、携帯電話のネットワークを用意して、無線でインターネットに接続する環境を整備する方法が検討されており、携帯電話用チップセットを用いたPCのようなデバイスも考慮されているという。

 低価格なPCはさまざまな企業などから提案されているが、それらの多くは通信回線を備えていないという問題がある。しかしMSMチップセットを搭載したデバイスなら、基地局さえ整備できれば容易にネット接続端末が作れるというわけだ。

photo

 現在さまざまな企業とこのようなデバイスの検討を進めており、ディスプレイやキーボードが接続できるセットトップボックス(STB)のような機器のプロトタイプを作ったりもしている。もちろんSTBではなく、ディスプレイそのものにMSMチップセットを組み込むという可能性も考えられるだろう。

 2007年代3四半期のサンプル出荷に向けて現在開発中の小型家電向け無線チップセット「Snapdragon」は、まさにこの目的のために開発が進められているチップセットだと言えるだろう。

KCP+に採用されたBREW Client 4

Photo KDDIの共通プラットフォーム「KCP+」にも採用されているBREW Client 4

 KDDIは1年前のBREW 2006 Conferenceで、共通デバイスプラットフォーム(KCP+)の一部にBREWを採用することを明らかにしていたが、6月21日にQUALCOMMから発表された新バージョン「BREW Client 4」シリーズは、まさにこの新しいプラットフォームに採用されているBREWクライアントだ。

 BREW Client 4では、メモリ管理が強化されているほか、リソース管理によるマルチスレッディングが実装されており、Windowing Kitによるマルチウィンドウ環境が作れるという3つの大きな特徴がある。

 BREW Client 4.0とMSM7500チップセットを核とした共通プラットフォームにより、KDDI向けに端末を開発するメーカーは開発にかかるコストを削減できるほか、開発工数の短縮も可能で、よりタイムリーな製品投入ができる。

 なおKDDIでは、2003年2月にBREWアプリのダウンロードサービスを開始して以来、ダウンロード件数は1億6000万を超えているという。BREWアプリのラインアップも3000タイトル以上がそろっており、すばらしい数字だとジェイコブス氏がたたえていた。

CDMA2000、UMTSともに市場は順調に伸びる

 ジェイコブス氏は講演の中で、CDMA2000およびUMTS(W-CDMA)の市場規模および今後の伸びにも触れた。「CDMA2000市場は引き続き成長していく」と同氏は言う。その理由として、過去12カ月で35の携帯電話事業者がCDMA2000のネットワークを展開したことを挙げた。

 現在CDMA2000ネットワークを展開している事業者は約220社あり、2007年第1四半期の時点での契約数はおよそ3億5000万。これが2010年までに4億5000万まで増えると予想している。ちなみに高速な通信が可能なEV-DOを展開する事業者は74社で、2007年第1四半期に約6500万のEV-DO契約があったという。

 一方UMTSも、GSMの契約者がUMTSへ徐々に移行していることもあり、大幅な増加が見込まれている。W-CDMAネットワークを展開している事業者は全世界で151、契約数はおよそ1億1800万だが、すでに110の事業者がHSDPAのネットワークを展開しており、急激に契約数は増えると見る。2011年には8億5000万の契約があるという予測を引用した。

PhotoPhotoPhoto CDMA2000の契約数は2010年までに4億5000万に達するとの強気の予測。CDMA2000 1x EV-DOは現在6500万契約、UMTS(W-CDMA)は現在1億1800万契約となっている

新興市場向けのシングルチップ「QSC6000」でもBREWに対応

 携帯電話利用者の数が急激に増えている新興国では、日本のようなハイエンド端末ではなく比較的低価格で機能も限られている安価な端末へのニーズが高い。そのためQUALCOMMでは、シングルチップソリューションとして「QSC6000」というチップを開発していることも明らかにした。

 QSC6000の特徴は、ローエンドチップながらもBREWをサポートしていること。BREWはハイエンドからローエンドまで、すべてのチップで対応できるようにしていくという。

Wireless Reachの受賞者に50万ドルの支援金

 最後にジェイコブス氏は、Wireless Reach BREW Application Funding Program(Wireless Reach BREWアプリケーション開発支援プログラム)の受賞者を発表した。Wireless Reachプログラムは、世界各国で実用的なワイヤレスアプリケーションを増やすために設置された支援プログラムで、医療、教育、治安、行政、環境という5つの分野の公共サービス用BREWアプリを募集していた(2006年6月の記事参照)

Photo Tata Consultancy Servicesのアルン・パンディ博士

 グランプリを受賞したのは、インドのTata Consultancy Services(TCS)。農業経営者向けに、価格情報や気象情報など、有益な情報をCDMAネットワーク経由で提供するシステムを開発した。支援金として10万ドルが贈呈されるほか、TCSの提案を実現するため、支援金がさらに付与されるという。

 このほか4人の受賞者がそれぞれ10万ドルずつの支援を受けることになった。その4人は、家禽の販売および流通プロセス、分析をサポートし、鳥インフルエンザの追跡や対策を施すためのシステムを提供したバンドン工科大学のリア・L・モエドモ氏、音声変換技術と自動音声認識技術を用いて視覚障害者のコミュニケーションをサポートするアプリを開発したBeijing InfoQuick SinoVoice Speech Techology Corp.のレニー・チャン氏、健康、教育、調査、予防対策、慢性病管理の分野で幅広く利用できるアプリを開発したBeWell Mobile Technology, Inc.のシャヒン・バクシャンデ氏、クリス・ウンソン氏、サラ・デヤング氏、そして携帯電話にゲーム感覚の学習機能を取り入れたカリフォルニア大学バークレー校のジョン・キャニー博士。


Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.