「未来のコミュニケーションはどこに向かい、それを可能にする技術は何なのか。それは人のコミュニケーションに対するモチベーションを考えることで見えてくる」(ニューマン氏)
例えば、コミュニケーションをとりたいと思う相手は、ある時は家族であり、同僚であり、上司であるというように環境によって変化する。それぞれのカテゴリー別に最適化されたコミュニケーションの方法を提案するのも1つのアイデアだとニューマン氏。そしてそれぞれのコミュニケーションに最適なデバイスは何か、どんな形のデバイスがどんな人に使いやすいのかをつきつめ、それを実現するためにどのような適切な技術があるのかを検討することで、未来の携帯の形が見えてくるという。
携帯を使いやすくする技術を追求するとともに、携帯という形にこだわらない、コミュニケーションの新しい形を模索しているのが、ヘンリー・ティッリ氏率いるSystem Research Centerだ。ここではコミュニケーションに関わる新たなビジネスを確立することを目指して、研究を進めているという。
さまざまな研究を行う中、ティッリ氏がアジア地域に関連するユニークな研究の1つとして挙げたのが、言語の認識技術だ。日本語や中国語などのアジア圏の言語は、アルファベットに比べて入力の敷居が高く、またアジア以外の言語圏の人々から見ると意味を想像しづらい。こうした問題を解決すべく、手書き認識や音声認識について研究しているという。
「こうした技術の先にあるのは、例えば“カメラが通訳”する世界。レストランのメニューが中国語で読めないと思ったときに、携帯カメラでメニューを写すと文字を認識して翻訳し、その結果が英語の音声で出てくると便利でしょう」(ティッリ氏)
ティッリ氏はまた、各種の認識技術は識字率が低い地域で役立つと話す。「読めない単語をカメラで写すと、それが何を示す言葉なのかを絵で教えてくれるような仕組みに応用できます。これなら文字を読めない人でも理解できる。これがヒューマンユーザーインタフェーステクノロジーなのです」(ティッリ氏)
もう1つの例として挙げたのは、離れたところにいても相手の気持ちを感じ取れるデバイスだ。「自分の感じていることを物体の触感を通して伝え合える、新しいタイプのコミュニケーションです」(ティッリ氏)
恋人同士が1つずつデバイスを持っていれば、例えば1人が出張に出ているときでも、1人が愛を込めてそのデバイスに触れるとそれが相手のデバイスに伝わり、気持ちが伝わるというものだとTirri氏。「小さなコンパニオンが常に自分といるようなイメージ。デバイスがミニチュア化されたら、首から提げたりすることもできるでしょう」(ティッリ氏)
携帯関連の技術はめざましい勢いで進化しているが、それを取捨選択するとき、“人は何をしたいのか、どんなコミュニケーションを望んでいるか”が基準になるというのがティッリ氏の考えだ。
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