“携帯で動画”の時代は来るのか──3キャリアが考えるモバイルコンテンツの未来ワイヤレスジャパン2007(2/2 ページ)

» 2007年07月20日 21時36分 公開
[園部修,ITmedia]
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大きな市場に成長しつつある電子書籍とコミック

 2006年から2007年にかけて、大きな伸びを見せ注目を集めている電子書籍市場。国内の市場規模は約180億円で、そのうち携帯向けが110億円、PC向けが70億円となっている。現在データ形式はブックサーフィンとXMDFという2つのフォーマットに集約されており、多くのCPからコンテンツが配信されている。

 この電子書籍市場の盛り上がりにもっとも貢献しているのが、冒頭でも紹介した女性ユーザーだ。特にF1層と呼ばれる20歳から34歳までの女性が、多くのコミックコンテンツを購入しているのが大きいという。

 ドコモの山口氏は「キーワードはBLTLだ」と話す。BLTLとは、Boys LoveとTeens Loveの略で、このジャンルのコミックを女性の読者がこっそり読んでいるというわけだ。同氏は“実際に本やマンガを買うのは恥ずかしいが、読んでみたい”というニーズを携帯が満たしているという背景があると読む。

 BLTLももちろんそうだが、例えば40代、50代になって「子供向けのアニメの原作マンガが読みたい」と思ったとき、店頭で購入するのは抵抗がある。しかし、携帯電話だったらボタンを押すだけで読めてしまう。今さらこんな本は買えない、といった意識を持つ人でも、携帯でなら読む可能性があるわけで、こうした分野の開拓に取り組めば面白そうだと山口氏は話した。

 ソフトバンクモバイルでは、こうした電子書籍ニーズの高まりに合わせ、利用を促進する施策を積極的に打っている。その1つが「タダコミ」だ。タダコミは、CPと協力してコミックの1話目だけを無料で配信する試みで、2話目以降を有料で購入してもらおうというもの。コミックコンテンツは一度読むと続きが気になる“中毒性”の高いコンテンツであり、1話目を読んだユーザーは2話目を購入する確率は高く、高い効果があるという。

 また書籍のタイトルや作家名、連載雑誌名などのデータを、Yahoo!モバイルの検索窓から検索できるよう、仕様を拡張している。出版社と協業してデータベースを構築しており、書籍の一括検索なども可能になる予定だ。ソフトバンクモバイルの端末には、ブックサーフィンとXMDFを再生するためのアプリがプリインストールされているのも見逃せない。

検索エンジンは公式サイトへの誘導を強化する

 KDDIの高橋氏とソフトバンクモバイルの河野氏は、ポータルサイトに導入した検索窓の利用動向にも触れた。高橋氏はGoogleの検索窓が「公式サイトへの誘導を強化している」という結果を示し、検索エンジンの導入で勝手サイトへの流出が増え、ユーザーは公式サイトには行かなくなるのではないか、との懸念を払拭した。メニュー経由でのアクセスが依然として多いことに加え、Googleで検索して公式サイトへ移動するユーザーが増えており、トータルでの誘導数は増え続けているというわけだ。

 ちなみにユーザーは検索後、20%が公式サイトへ、57%が一般サイトへと遷移し、残りの23%はPCサイトへと移動しているという。検索を利用するユーザーが増えたことから、検索連動広告の売上も急拡大している。

 ソフトバンクモバイルも、Yahoo!ケータイ導入後はYahoo!の検索窓をポータルに用意しており、ユーザーの利用頻度は高いという。検索に用いられる語句はPCで利用される検索語句とはかなり異なり、1語や短い語句で、なおかつ単純で一般的な用語での検索が多いいようだ。検索結果は、現在(1)公式サイト (2)勝手サイト (3)PCサイトの順で表示しているが、ほとんどのユーザーが1画面目か2画面目に表示される検索結果から移動しているため、公式コンテンツへの遷移が多く、インターネットの外に出て行くトラフィックは多くない。

“携帯で動画”の時代は来るのか

 最近は、携帯向けに動画を配信するサービスも徐々に増えてきた。ドコモはiモーションの最大容量を500Kバイトから10Mバイトに、解像度をQCIF(176×144ピクセル)からQVGA(320×240ピクセル)に向上させたほか、コーデックもH.264に対応するなど、“携帯で動画を見る”ことに積極的だが、各携帯キャリアは、動画配信サービスをどう見ているのだろうか。

 ドコモの山口氏は、「ドコモユーザーで、動画サイトをマイメニュー登録しているのはM1層(20〜34歳男性)とM2層(35〜49歳男性)が中心」だと話した。登録しているサイトはグラビア系が多い。また勝手サイトではアダルト動画などを配信しているところもあり、パケホーダイに契約してアダルト動画を見ている人も多いと予想される。

 「きっかけや欲求を満たすものを出していくことができれば、携帯でも動画は見てもらえる」と山口氏。しかし、単に“見てください”と言っても見てもらえるものではないため、最近はユーザーに動画をお勧めするリコメンドポータルを設置して様子を見ている状態だ。

 また、最近は「Watch→Buy」と呼ばれる、動画と連携させたEコマース(ショッピング)は1つの有効な手段だと考えているという。山口氏は「映画の予告編を見てからDVDを購入してもらったり、通販番組の動画を見てもらって商品を購入してもらったりすれば、より訴求できるのではないか。これと合わせて、携帯でも動画が見られるんだ、という意識付けをしていきたい」と話した。

 このほかドコモは、権利処理などの関係で既存の動画コンテンツをネットワークで配信するのが難しいため、日本テレビ放送網と提携してLLPを設立したことを紹介(2006年2月の記事参照)。LLPで番組制作にまで関与することで、携帯と連携できるアニメやドラマ、バラエティ番組を制作している。

 山口氏は「動画は気になるが、まだこれからの分野。今後もいろいろ考えていきたい」と話した。

 一方KDDIの高橋氏は「携帯向けの動画配信が本当に立ち上がるのかどうか、今は見えない」と話す。同氏は着メロから着うた、着うたフル、そしてビデオクリップというダウンロードコンテンツの進化のロードマップははっきりと見えていたが、この先本当に携帯で動画が成り立つのかどうか、今まさに見極めているところだという。

 「ユーザーのコンテンツ利用が大きく変わってきており、大容量なファイルをダウンロードする“動画”ではなく、SNSなどのWeb 2.0的なサービスに流れている。世の中では動画動画と騒がれているが、本当にそうなのかな、という疑問に今直面している」(高橋氏)

 現状、ダウンロードコンテンツでもっともトラフィックを圧迫するのは、勝手サイトのアダルト動画だが、これはあくまでも一握り(数パーセント)のユーザーが夜中のトラフィックを圧迫している程度。しかしSNSの利用が今後もっと広がっていくと、すべてのユーザーが少しずつ、しかし頻繁にデータのやり取りをするようになるため、トラフィックに大きなインパクトを与えるようになると見ている。今後のインフラ作りにも影響があるため、注意深く見守っていると話した。

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