「ケータイを甘く見るな」 “最強のおもちゃ”が子どもの脅威に(1/2 ページ)

» 2007年08月28日 21時09分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「携帯電話は子どもにとって“うちでのこづち”。子どもは携帯を通じてお小遣いを手に入れ、食事をおごってもらい、家まで送ってくれる人を見つけ、アダルトグッズを買っている」――子どものネット利用を研究している群馬大学社会情報学部大学院の下田博次教授は、携帯サイトが子どもの健全育成の脅威になっている、と警告を鳴らす。

画像 「携帯をめぐる子どものトラブルで、子どもたち、親、学校の教師、警察が苦しんでいる」と下田教授

 携帯電話は子どもにとって「史上最強のメディアで、最高のおもちゃ」と下田教授は言う。ただ「営利主義で開発された端末で、子どもが使うとトラブルに巻き込まれたり生活リズムが崩れたりするなど、欠点だらけ」とし、携帯キャリアによるフィルタリングサービスの充実や、親への啓発などが必要と説く。

 下田教授は、ディー・エヌ・エー(DeNA)と毎日新聞社が8月28日に開いたシンポジウム「10代の『ケータイ』事情 〜子どもたちと携帯電話のあかるい未来をめざして〜」で講演。DeNAの南場智子社長、タレントの香坂みゆきさんらとのパネルディスカッションにも参加し、子どもと携帯電話の関係について語った。

ケータイはうちでのこづち

 「エンコー(援助交際)にはケータイが不可欠。知らないおじさんに路上で声をかけるのは抵抗があっても、出会い系サイトなら手軽だし親にもばれない」――下田教授は、売春していた女子中高生からこんな話を聞いたという。

 出会い系サイトの“使い道”は売春だけではない。「フグを食べたいけどおごってくれる人いませんか」などと書き込み、実際にフグをおごってもらった例、「今ここにいるんだけど遊んでくれる人いませんか?」「車で家まで送ってくれませんか?」などと書き込み、見知らぬ大人と遊んだり、家まで送ってもらったりする例もあるいう。

 出会い系に限らず、携帯ネットには何でもある。「無料でゲームでき、漫画も読め、話し相手を見つけられ、アダルトコンテンツも利用できる。今話題になっている『闇の職業安定所』などを通じてお金稼ぎも可能。授業中に出会い系サイトにもアクセスしている子どももいる」

 現実社会で大人が「子どもに見せたくない」と規制していたり、警戒しているものにも、携帯ネットなら子どもが直接アクセス可能だ。

 「携帯ネットなら親や社会の目をバイパスでき、大人が子どもに与える“健全育成の規範”から自由になれるツールだ。子どもにとってこんなに面白いものはないだろうし、私が今中学生でも携帯が欲しいと言っただろう。大人から『やってはいけない』と言われることを全部できるから」――下田教授は、携帯の“面白さ”をこう皮肉る。

「知らなかった」と親は言う

 携帯ネットの特性や危険性をよく認識せず、ねだられるがままに子どもに携帯を持たせる親が多いという。「携帯サイトでトラブルに巻き込まれた子どもの親が必ず言うのは、『知らなかった、携帯でこんなことができるなんて』。このせりふはここ数年変わらない。携帯を甘く見ている」

 下田教授の研究室には、携帯サイトが絡む事件に関連する警察からの相談が何度となくあったといい、親や教師から「学校裏サイト」に関する相談も受ける。「大人が秩序だった環境を作らないから、子どもたちが苦しんでいる」

 そもそも携帯は、子どもを健全育成するためのツールとして発達したのではない。子どもの育成にどう影響するかがきちんと考えられないまま、子どもに人気のサービスが提供され続けている。

 「iモードは思春期の心理をついたサービスだった。ある携帯関連の経営者が『子ども向けビジネスがこんなにもうかるとは』と言っていたほど。携帯ネット上には遊園地のような“グレーな”遊び場がどんどん増えている」

「過渡期の問題」で済ませてはいけない

 「携帯ネット関連のトラブルは、過渡期の問題。子どもはしっかりしているし、それほど問題視しなくていい」という意見もあるが、下田教授は否定的だ。

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