Bluetoothはバージョン2.0 Class 2対応を搭載。ただしバージョン2.0で一緒に採用されることの多い「EDR」(Enhanced Data Rate)には対応していないので、通信速度は非対称通信時で最大721Kbpsとなり、機能的にバージョン1.2とほとんど違いはない。バージョンが2.0なのは接続性を考慮したか、チップセットが対応しているといった事情だろう。Class 2なので送受信距離も最大10メートル程度となる。
Bluetoothで利用できるプロファイルは、「HFP」「HSP」「FTP」「OPP」「SPP」「HID」といったPDAとしては一般的なものに加え、ステレオ再生が可能な「A2DP」、Bluetooth機器間でIP接続が可能な「PAN」もサポート。SPPを利用すればBluetooth経由でActiveSyncを行うこともできる。サーバ側としての「DUN」が検出できず、ワイヤレスモデムとしての利用はできなかったが、これはWindows Mobile 6の標準スタックがそうなっているという話もある。「PAN」を利用すべきなのかもしれないが、今回は評価する時間に制約があり、さらにマニュアル類がない状態での評価となってしまったため、確認できなかった点はお許しいただきたい。
端末間やPCとのファイルのやりとりは「Bluetoothエクスプローラ」と呼ぶ、ファイルエクスプローラを拡張する機能で行う。これを使えばFTPでX7501側からほかのBluetooth機器の共有フォルダにアクセスしてファイル交換が行える。PC側のファイルを、PCにはノータッチで本機に転送するといったことも可能だ。
Bluetoothでのワイヤレス音楽再生機能は、今となってはそう珍しいものではないが、本機でおもしろかったのは異なるBluetooth機器でA2DPとHFP(またはHSP)での接続が可能だったこと。たとえばBluetoothスピーカーとA2DPで、ヘッドセットとHFPで接続しておいて、Bluetoothスピーカーで音楽を再生しつつ、音声着信があれば音楽再生が一時停止してヘッドセットで音声通話を行うことができた。もちろんステレオイヤフォンとハンズフリーの両方の機能を備えるBluetooth機器も2つのプロファイルを同時接続しておいて自動切換えで音楽再生と音声通話に利用できる。携帯音楽プレイヤーとして常用したいと思うサイズではないが、結構おもしろい使い方もできそうだ。
X7501の音楽再生機能は、Windows Media Playerがサポートする。Windows Mobile 6の標準機能なので特筆すべきポイントはないが、Windows上のWindows Media PlayerからX7501に楽曲を転送する際には、内蔵HDDを直接指定する事も可能。8Gバイトの内蔵HDDは音楽の保存には結構使いやすい。
また「オーディオマネージャー」と呼ぶ音楽再生専用ソフトも利用できる。Windows Media Playerと比較すると、音楽再生に特化している分、ユーザーインタフェースは分かりやすい。ただしID3タグの管理が変なのか、評価機ではアルバムを選択した場合などにトラック番号順でなく、曲名順で再生されていたのが気になった。もちろんWindows Media Playerではトラック順に表示される音楽ファイルだ。プレイリストに登録すればどうにかなるが、ちょっと面倒そうだ。
特徴的なのは着信音への設定機能。ただ着信音に設定できるだけでなく、楽曲中の、着信音に使いたい部分を範囲指定して切り出す機能まで持っている。これはとても便利だ。手持ちの音楽CDをリッピングして利用する限り、このくらい手軽に着信音に使えるようにするべきだろう。
Windows Mobileを採用するX7501は、標準のWindows Media PlayerでWMVファイル、サードパーティ製のソフトやフリーソフトでMPEGファイルの再生が可能で、動画プレーヤーとしての資質は高い。さらに本機の場合、8GバイトのHDDを内蔵する上、ディスプレイは5インチの大画面、さらにはグラフィックスアクセレータのAMD Imageon WW84を搭載するなどと、ポータブルビデオプレーヤーとしての期待は大きい。
しかし、動画再生能力に過剰な期待は禁物なようだ。まずWindows Media Playerではグラフィックスアクセラレータの機能は利用されないため、動画再生能力が特に高いというわけではない。そもそもCPUのPXA270 624MHzは2004年秋に登場した「iPAQ hx4700」などでも採用されており、この製品をレビューしたときと性能はさほど変わらない印象だった。VGA解像度で1MbpsのWMVファイルも再生は可能だが、フレームレートはぎりぎり動画として許容できるレベル。2Mbps程度になると紙芝居のようなコマ送り再生になってしまった。
DivXファイルに関しては、DivXから提供されているWindows Mobile向けプレーヤーを利用して再生を試みた。VGA解像度で1MbpsのDivXファイルは、WMVファイルよりはいくらかスムーズに再生できた。コーデック自体がWMVと比較すると軽い分、ビットレートが同じでも多少なりとも負荷が軽くなるのだろう。
ちなみにAMD Imageon WW84の動画アクセラレーション機能を利用できるプレーヤー、「TCPMP」(0.72RC1)でDivXファイルの再生を試してみたところ、1.5Mbps程度までのDivXファイルが24fpsでおおむね問題なく再生できた。24fpsもあれば、動画として破綻を感じることはほとんどない。ただこの点も、hx4700と印象は大きく変わらない。もちろんWindows Mobile端末としては動画再生能力は高い方に入ると思うが、過剰な期待は禁物といったところだろうか。
ここまでに紹介した機能以外にも、X7501はGPSを内蔵し、プリインストールされた「◆◇NAVITIME◆」が快適に利用できるのもポイントだ。正確な現在地表示や徒歩ナビも可能であり、5インチの大画面ディスプレイのおかげで地図も非常に見やすい。ただ、定額制のインターネット接続が利用できないので、あまり手軽には利用できないのが残念だ。また「タスクマネージャー」と呼ぶ機能では、終了機能を持たないソフトでも「×」ボタンでソフト自体を終了可能にするなど、細かな点への配慮も行き届いている。
このように非常に多機能で魅力的な端末だが、11万9800円という価格は、コンシューマーユーザーには1つの大きな問題といえるだろう。SIMロックなしのトレードオフとして、本来あるべき価格で販売されるため、キャリアが販売奨励金込みで販売する端末と比較するとどうしても高価になる。さらに、価格的にはWindows Vistaが動作するUMPCなどもライバルとなる。高機能な携帯電話として、なんとなく購入できてしまう価格でないことは確かだ。また、無線LANを使えばある程度は代用できるとはいえ、現状では3G携帯電話での定額インターネット接続が利用できない点も運用面ではマイナス材料になる。
もっともWindows Mobile端末として見れば、独特の位置づけにある高機能端末として魅力的なのも事実。5インチのVGA大画面は情報量やオペレーションの面で代えがたい魅力があるし、両手打ちができるQWERTYキーボードも魅力的だ。料金面の問題に加え、キャリア独自のメールが利用できない点は音声端末からの移行では大きな壁になると思うし、音声通話もヘッドセットを利用することになると思うが、この点を割り切れれば高機能スマートフォンとしての魅力は間違いなく大きいだろう。
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