携帯向けマルチメディア放送はどうあるべきか──放送団体、クアルコム、パナソニック モバイルが意見「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」第4回会合(2/2 ページ)

» 2007年11月13日 23時02分 公開
[石川温,ITmedia]
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放送方式は1つの方式にすべき──日本放送協会

 日本放送協会(NHK)は、マルチメディア放送を導入するにあたって、採用すべき具体的な放送方式について意見を述べた。

 NHKは、「利用者の立場からは、1つの受信端末を購入することで、さまざまな情報やサービスを得られることが望ましい。他方、放送事業者の立場からは、1つの放送方式ですべての受信端末向けに放送できた方が、コスト、周波数の有効利用という点でもメリットが大きい」という考え。つまり、1つの標準方式に統一するのがいいと主張する。

 今回議論されているマルチメディア放送では、ワンセグの発展型であるISDB-Tmmと、クアルコムのMediaFLOが本命とされ、導入に向け火花を散らしている。1つの端末で、2つの放送方式を受信できるような案も検討されているため、NHKとしては、負担を避ける上でも「1つの標準方式に統一すべき」と提案したようだ。

競争という観点から、複数の放送方式を導入してもいい──クアルコムジャパン

 続いて、メーカー側の立場からの意見として、クアルコムジャパンが登壇した。同社はMediaFLOのメリットを強調した。

 「MediaFLOの特徴は移動体に特化し、周波数利用効率が優れていること。6MHzの周波数帯を利用する場合、多くのチャンネルを多重化することで、QVGA(320×240ピクセル)で30fpsの品質の番組を20チャンネル以上配信できる」(クアルコム)

 MediaFLOには、FLO Forumという標準化組織があり、すでに日本のメーカーを含む92社が参加しており、「オープンな技術である」(クアルコム)こともアピールした。

 また、「CDMA2000やW-CDMAを採用する端末にMediaFLOを搭載する場合、クアルコムは1端末あたり、端末価格の5%をロイヤリティ料の上限と設定しているため、追加のライセンスはほとんど必要ない」(クアルコム)と、コスト増にはならない点も訴えた。

 MediaFLOチップの開発、販売を行うと表明している企業は、すでにクアルコム以外に3社あり、またクアルコムが商品化したMBP1600というチップではMediaFLO、DVB-H、ISDB-T(ワンセグ)すべての放送方式に対応できるという。

 クアルコムは、日本の国際競争力向上の観点から「新規参入を積極的に促すべき。また技術を1つにしてしまっては、技術に関する競争環境が生まれずに、市場の発展の速度が緩くなってしまう」と主張。すでにさまざまな方式に対応できるチップもあることから、複数の放送方式を導入してもいいのではないか、と提案した。「1つにすべき」というNHKの提案とは、全く異なる姿勢だ。

世界中どこに行っても使える規格にする努力を──パナソニック モバイル

 もう1社、メーカーとして意見を述べたのはパナソニック モバイルコミュニケーションズだ。同社は端末メーカーの視点から提案を行った。

 「携帯電話の世界では、PDC方式が圧倒的に周波数利用効率の良かったにもかかわらず、GSM方式に負けたという過去がある。デジタルテレビ方式も、大部分の国では欧州(のDVB-H)方式を採用しつつある。日本ではワンセグ(ISDB-T)を目玉としているが、いまのところ基幹放送部分のおまけとしての位置づけでしかない。

 現在、ISDB-Tは南米やアジア諸国に採用を働きかけており、携帯端末向けマルチメディア放送も、これらと連動したほうがよい。今度登場するドコモの905iシリーズは、すでに国際ローミング端末となっている。放送受信機能も特定の国でしか使えないというのはおかしい。どうせ頑張るなら、世界中、どこに行っても使えるように最大限の努力をすべき」(パナソニック モバイル)と、世界展開を視野に入れるべきだと主張した。

 端末メーカーとして望ましい放送方式という点では「ISDB-Tファミリーは、すでに進化が進み、低価格モジュールの普及が加速している。さらに将来的な展開を考えると、利用者のコスト負担を考慮し、ワンセグと共通した技術を採用するのが望ましい」(パナソニック モバイル)と話した。

 さらに「すでに3G及びGSMで多大なロイヤリティを負担している。新たな方式を採用して、さらなるロイヤリティを負担するのは避けたい」と、メーカーとしての本音も吐露した。

ロイヤリティ負担を抑えた端末開発は本当に可能なのか?

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 質疑応答の時間では、このロイヤリティについての話題に注目が集まった。

 クアルコムジャパンからは改めて「コスト増にはならない」と説明されたが、パナソニック モバイルからは「(コスト増にならないと公約した)クアルコムジャパンの山田社長が交代しても方針は変わらないのか、という不安はある。確かにCDMA2000やW-CDMAを採用する携帯電話にはロイヤリティは不要かもしれないが、ニンテンドーDS Liteのようなゲーム機器がマルティメディア放送に対応しようとするとロイヤリティは発生するはず」と、コスト面の問題点が指摘された。


 第5回の懇談会は11月26日14時に開催予定だ。次回はYRP・横須賀研究開発推進協会などから意見を聞く予定だ。

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