Googleからオープンソースの携帯電話向けプラットフォーム「Android」が発表された。Androidを採用した“Googleケータイ”は、2008年中に登場するという。PC並みのインターネット検索機能をもった携帯電話が登場することに、期待感が高まっている。
さて、韓国の大手検索サイトやポータルサイトが、自身のブランドを付けた“××ケータイ”を出す動きはないが、各キャリアが待受画面に検索ウィンドウを表示させ、端末からより手軽にインターネット検索を行うためのサービスを多数提供するようになってきた。
SK Telecom(以下、SKT)は、待受画面に検索ウィンドウを表示し、そこからすぐにインターネット検索ができる「NATE 検索エキスパート」サービスを開始した。
これは、アプリケーションをダウンロードして端末にインストールすれば、待受画面に検索ウィンドウが表示されるというもの。検索結果はNATEだけでなく、NaverやDaum、Yahoo!KOREA、Googleといった他社サイトのものまで見ることができる。
「韓国では初」(SKT)という「検索語完成機能」(入力された文字から検索ワードを予測する)が利用できるのが特徴だ。このほか検索ワードの人気ランキングや最新ニュースなども、待受画面に表示してくれる。
SKTは、韓国で最も待受画面を強化しようとしているキャリアだ。SKTによる“待受サービス”シリーズの基礎になっているのが「T INTERACTIVE」。これも端末にアプリケーションをインストールすることで、これまでネットに接続してチェックしていたニュースや天気などを、待受画面上で見られるサービスだ。
このサービスでは毎日2回、ユーザーがいる地区の天気情報やニュースを更新する。よく利用するコンテンツにリンクするボタンを待受画面に置けるショートカット機能や、NATEを使うインターネット検索、携帯電話内のアドレス帳や写真の検索などもできるようになった。
さらにT INTERACTIVEには「エキスパート」というサービスがある。外部のネットサービスと連携し、ニュースや天気情報に留まらない一歩先行くサービスを提供する。たとえば音楽配信サービス「MelOn」と連携した「MelOnエキスパート」や、料金照会/サービス加入/解約申し込みができる「顧客センターエキスパート」などがそれだ。
SKTが今回発表したNATE 検索エキスパートは、T INTERACTIVEの検索機能をより強化し、エキスパートサービスを加えたものといえる。
SKTの待受画面へのこだわりは、「T-PAK」を見ても明らかだ。T-PAKというのはSKTが開発したモバイル用プラットフォームのこと。「WIPI 2.0」を基盤としており、UIを柔軟に変更できるほか、メモリ使用量の効率化、マルチタスキング機能などが強化されている。
携帯電話のパケット料金が定額制でない場合、インターネットにつなぐには金額的な負担感が強い。また、ニュースや天気予報など目的ごとのWebサイトを開くまでには、一手間が必要だ。待受画面が利用頻度の高いインターネットサービスに直結しているT INTERACTVEサービスは、インターネットをより身近にし、積極的に利用するための仕掛けといえる。
さらにT-PAKを利用したサービスが加われば、SKT端末の待受画面はかなり大きく変わるだろう。携帯電話の利用シーンをさらに広げる“鍵”が検索にあり、検索関連のサービスが今後充実していくものと思われる。
LG Telecom(以下、LGT)は、今夏からYahoo!KOREAと提携した「oneSearch」機能を提供している。これはLGTのインターネットサービス「ez-i」の初期画面や各ページのメニュー部分に、常にoneSearchの検索ウィンドウを表示するもので、いつでもインターネット検索が可能だ。なお、Yahoo!JAPANと共同でYahoo!ケータイを提供しているソフトバンクモバイルも、10月22日からoneSearchを開始している。
検索サイトで検索をすると、知識検索(ユーザーの質問に、ユーザーが答えるQ&A)、ブログ、ニュース……というように、ジャンル別の結果を表示する。PCの大きな画面では情報の豊富さが感じられて便利だが、小さな携帯電話の画面では目的の情報を探し出すのに時間がかかってしまう。そのためoneSearchでは、検索結果を端的に表示する形式を採用している。
たとえばソウル市内にある「東大門」という地名を検索すると、これまではブログ、ニュース……などジャンル別に表示されていたのを、画面上部に、東大門には衣料卸売市場があるなどの要約情報、有名店、飲食店、交通、天気……というように、ユーザーが求めていると考えられる情報を累進して、その結果を表示する。
また、現在地からもっとも近い病院を探すなど、位置情報サービスと連動した検索サービスも提供する。こうした機能は、Yahoo!KOREAで人気の地域情報サービス「コギ!」のノウハウや蓄積情報を活かしたものだ。
LGTでは今後このサービスを、顧客1人1人の特性やニーズに合わせた個人向けサービスに進化させるとアナウンスしている。一方のYahoo!KOREAはこれを機に、モバイル広告市場に本格進出を果たした。モバイル広告市場に可能性を見出している同社としては、どうしても成功させたいサービスといえるだろう。
LGTではこのほかに、Naverを運営するNHNとともに、網開放型のモバイルインターネットサービス開発と、その接続方法改善のために、MOU(Memorandum of Understanding:覚書)を締結している。
ここでは、待受画面やモバイルインターネットを活用した検索をはじめ、Eメール、Webブラウジング、音楽などのサービス分野について、固定・無線によるインターネットの連動サービスを開発するという。
Naverは、韓国検索市場では70%程度のシェアを持つ最大手で、LGTは強力なパートナーを得たといえるだろう。今回両社がプラットフォーム開発からマーケティングまで、モバイルインターネットの全般的な部分に対して提携したことは大変興味深い。
LGTは2008年にも網開放型のインターネットサービス(6月20日の記事参照)に本腰を入れるのでは、と予測されている。固定回線で確固たる地位を築いた、Yahoo!KOREAとNaverの2社と提携したことで、固定と無線が融合したサービス展開に弾みが付くのではないだろうか。
韓国では、携帯電話のインターネット接続に対する料金的な負担感が比較的強く、利用を躊躇するユーザーも意外に多い。これは1つの指標に過ぎないのだが、韓国インターネット振興院の「2007年 無線インターネット実態調査」によると、韓国で最近1年以内に無線インターネットを利用した率は47.7%程度という結果が出ている。最近1週間以内だと12%と少ない。だからこそキャリアがより使いやすく分かりやすいサービスで、顧客に歩み寄ろうとしている。
逆にキャリアと提携する検索サイト側としては、広告収入などあらたな収益モデルを得るための第一歩といえる。上記で紹介した以外にも、GoogleはすでにSKTと手を組み、またDaumも韓国の3キャリアと提携し、検索サービスを展開している。
携帯電話向け検索サービスは、どこもまだ第一歩を踏み出したばかりで、今後さらなる発展が見込める分野だ。しかし、今後生み出される新サービスに、ユーザーはどこまでコストを支払うのか。料金に対する負担感をどこまで排除できるのかが、モバイル検索活性化の鍵となりそうだ。
プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。
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