インタビュー
» 2007年11月26日 12時43分 UPDATE

開発者に聞く「SH905i」:「世界一美しい映像と音のコラボレーションをしませんか」──「SH905i」開発秘話 (1/2)

携帯電話としては世界で初めてドルビーモバイルを搭載したシャープのFOMA端末「SH905i」。フルワイドVGA対応やワンセグ搭載など、大幅に基本機能が向上した905iシリーズの中でも、その映像と音へのこだわりは他社に負けない自負があるという。

[園部修,ITmedia]

 ドコモ905iシリーズの先陣を切って11月26日に発売されたシャープ製端末「SH905i」は、フルワイドVGA(480×854ピクセル)対応液晶やHSDPA、GPS、ワンセグなど、905iシリーズ共通の先進機能に加えて、携帯電話としては世界初となる「ドルビーモバイル」を採用した、“映像と音”にこだわった端末だ。

PhotoPhoto 開発陣が世界一美しいと自負するNewモバイルASV液晶と、携帯電話としては世界で初めてドルビーモバイルを搭載した「SH905i」

 シャープ製端末ならではの、金属調のボディを継承しつつ、細かな部分は前モデルとなる「SH904i」から大きな進化を遂げたSH905iの開発秘話を、シャープ 通信システム事業本部 副本部長 兼 パーソナル通信第一事業部長の新井優司氏、パーソナル通信第一事業部 商品企画部 部長の河内厳氏、パーソナル通信第一事業部 商品企画部 副参事の木戸貴之氏、パーソナル通信第一事業部 商品企画部 主事の梅宏之氏に聞いた。

Photo 左から通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 商品企画部 副参事の木戸貴之氏、パーソナル通信第一事業部 商品企画部 部長の河内厳氏、パーソナル通信第一事業部 商品企画部 主事の梅宏之氏

SH905iの開発テーマは美しく、楽しく、心地よい

Photo 通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 商品企画部 副参事の木戸貴之氏

 「SH905iの開発コンセプトは“品格”です。その品格を実現するために、“美しい”“楽しい”“心地よい”という3つのテーマで開発を進めました」(木戸氏)

 ドコモの905iシリーズは、従来の端末と比べ、ワイドVGAやHSDPA対応、ワンセグの搭載、GSMも含めた国際ローミングサポートなど、ハードウェアの部分だけを見ても大きな進化がある、ドコモの“本気”を感じさせる強力なラインアップだ。そんな中で、シャープとしてはあえてハードのすごい部分を強調するのではなく、そのすごいものをコンパクトに、そして少しカジュアルにまとめることを目指した。

 そのためボディは回転2軸タイプで、背面には金属蒸着のフレームと、アクリル板とアルミ箔を組み合わせたパネルを配した。この金属の輝きと深みのある透明感の組み合わせで、シャープ製端末ならではといえる素材感や高級感を踏襲しつつ、カジュアルな雰囲気も残している。

 一見して分かる、強烈な個性を打ち出すのではなく、独特の品格を備えることでユーザーにアピールする。その難しいバランスをとるために採用したのが、フルワイドVGAで1677万色表示に対応した新開発のNewモバイルASV液晶という“美しい”デバイスだ。また美しい映像や写真と対になる、品格を持ったレベルの音を実現するドルビーモバイルを採用して“楽しさ”を持たせた。さらに、幅48ミリのボディやTOUCH CRUISERなど、ユーザーの使いやすさに配慮し、“心地よい”端末を実現している。

“世界一の美しさ”を実現できたNewモバイルASV液晶

 SH905iの“美しい”部分を担うこだわりのポイントが液晶ディスプレイである。

 メインディスプレイに採用した3インチのNewモバイルASV液晶は、シャープが自社開発しているモバイル機器向けのディスプレイだが、今回SH905iでは、それをそのまま搭載するのではなく、「リフレクトバリアパネル」という新しい構造に挑戦した。

 リフレクトバリアパネルとは、液晶表面の保護パネルをアクリル板から強化ガラスに変更して透明度を高め、液晶と保護パネルを特殊な溶剤で貼り付けるAir Gap Less構造を採用したパネルを指す。

 従来のモデルでは、液晶ディスプレイと保護用のアクリル板の間にわずかながら空気層があり、入射光や反射光、バックライトの光などがそれぞれの表面で反射され、光量が落ちていた。しかしリフレクトバリアパネルでは空気層がないため、光量ロスが低減できる。

 「空気層をなくすことで、無駄な反射やぎらつきをなくすことができます。すると液晶そのもののきれいさが透過して見えるわけです」(木戸氏)

 “専用の溶剤で液晶と強化ガラスを張り合わせる”のは、言葉で書くと簡単に見えるかもしれないが、けっして容易な工程ではないはずだ。新井氏は「次世代の液晶と呼んでもいいんじゃないかと思うくらい、モジュールの構造を含めて液晶づくりに取り組みました。そのせいで実は今、結構苦労していたりします」と笑いながら答えたが、このリフレクトバリアパネルは、SH905iには必須だったという。

 「今の液晶は、解像度も発色もものすごく進化しています。しかし表示するデバイスがどれだけきれいになっても、結局その上に空気層とアクリル板があると、ユーザーはこれを通して色を見ることになります。今までは、液晶が大きく進化してきたのでそれでも性能の改善は目に見えましたが、今や他社も含め液晶の進化は究極のところにまで行き着いています。色のきれいさや反射光、透過光のレベルアップも限界に近づきつつあります。そのためシャープとしては、実際に目に入る光の元のところからきれいにすることが必要だろうと考えました」(新井氏)

 リフレクトバリアパネル仕様のNewモバイルASV液晶の美しさは、SH905iとSH904i以前の機種を並べてみれば一目で分かる。電源オン時のコントラストなども違うのだが、特に違うのが電源オフ時の黒の締まりだ。SH904iや「SH903i」は、電源を切ったときのディスプレイの色が若干灰色っぽい色になるが、SH905iは真っ黒に近い。

微反射型液晶へのこだわり

 こうしてコントラストや視認性を向上させたのに加えて、従来機種から引き続き屋外での視認性もしっかり確保している。リフレクトバリアパネルを採用したことで、余分な反射が抑えられているのに加え、従来機種同様、6色カラーフィルターを搭載しているため、太陽光の下でも十分な色再現性を実現している。

 「モバイルの液晶である限り、微反射液晶にはこだわっています」と新井氏は話す。「屋内で見て“液晶がきれいだね”とお客様に言っていただければいいのであれば、全透過型の液晶を採用するという手もあります。しかしシャープはそれは絶対やりません。微反射をやめればおそらくもっときれいにすることはできるでしょう。でも屋外で使う機会も多い携帯電話では、そのアプローチは採りたくありません。微反射で、なおかつきれいな液晶を、これからも目指していきます」(新井氏)

 日中の屋外でも、手などで日光を遮れば全透過型の液晶でも見えないことはない。しかし、ユーザーの使い勝手を考えれば、室内でも屋外でも美しい液晶であることが望ましいというのがシャープの考えだ。

 最近は有機ELを採用した端末も出てきているが、「シャープは液晶のもともと持っている力を引き出す構造に取り組んでいきます。今後は(液晶そのものの性能向上よりも)こちらの方が効いてくるかもしれません。彼ら(有機EL)が進化していくスピードに、液晶も負けないようにやっていきたいですね」と河内氏は言う。液晶はバックライトを使う点が自発光型の有機ELと決定的に違なるが、液晶にはバックライトと液晶パネルの両方をコントロールして緻密にコントラストなどを制御できたり、フルワイドVGAなどの高精細化がすでに実現できているといった利点もあり、まだ十分有機ELには対抗していけるという。

 もちろん、画面が高解像度化したのに合わせ、フォントはVGA対応の新しいTrueTypeフォントを採用した。これは“美しい”画面を実現するために、「対応しないわけにはいかなかった」(木戸氏)という。SH905iに搭載されているのは、LCゴシックとSH平成明朝、それにSHクリスタルタッチの3書体。標準のゴシック体もVGA表示で美しく見えるが、SH平成明朝を見るとその美しさに目を奪われる。

 「なんとかユーザーの方に平成明朝体のきれいさを体験していただきたくて、アドレス帳の表示を名刺風にして、ここはどんな文字設定でも明朝体が表示されるようにしました。名刺は明朝体を利用しているものが多いですし、名刺リーダーも装備していますので、違和感なく使っていただけると思います」(梅氏)

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.