4年前、格安の携帯向け静止画変換エンジン「Picture Fitter」をリリースし、“価格破壊のマーキュリー”と恐れられたマーキュリーエンタープライズ。導入コスト無料、オプション機能無料で50万回の変換までが5万円という、当時の水準を大きく下回る価格設定で業界にインパクトを与えたことで知られるASPベンダーだ。
同社は2006年から動画変換エンジン「Motion Fitter」の提供を開始。同社の阪本耕造社長が「日本で一番有名なSNSサイトに採用された」という、動画変換エンジンの特徴について説明した。
Motion Fitterは、FLV/MP4/QuickTime(MOV)/WMV/ASF/AVI/3GPP/3GPP2/AMCフォーマットの動画ファイルを、携帯キャリアの各端末の仕様に合わせた表示サイズやフォーマットに変換して、配信するサーバアプリケーションソフトウェア。動画の変換に加え、キャリア別にHTMLを自動生成する「HTML変換機能」を備えており、各種パテントライセンスも取得済みであることから導入しやすい点が特徴だ。10Mバイトiモーションにも対応済みで、不正ダウンロードを防ぐワンタイムURLの生成機能も備えるなど、顧客の要望に合わせたバージョンアップを重ねているという。
2007年のバージョンアップで顧客に好評なのが、オンデマンドの動画変換に対応した点だと阪本氏。あらかじめ各端末に合わせた配信用の動画データを生成するプリキャッシュ方式を必要としないサイトが増えていることから実装した機能だ。
プリキャッシュ方式は、決まった動画コンテンツを多数のユーザーに配信するのには向けているが、例えばSNSサイトのようにそれほどアクセスが多くないサイトでは、リクエストに応じて端末に最適化した動画をリアルタイム変換した方が効率がいい。「コミュニティサイトで動画をアップしても、1人か2人しか見に来ないかもしれない。にもかかわらず、全ての機種に対応したデータを作っておくのは無駄」というわけだ。
リアルタイムの動画変換は「普通はその場で変換を開始しても時間切れになってしまう」ため、変換の高速化技術があってこそできるものだと阪本氏は胸を張る。大手SNSサイトに採用されたのも、オンデマンド変換が評価されたことが理由の1つで「SNSやブログなどのコミュニティ系サイトには有効な機能で、強い武器になっている」(阪本氏)
年明けには動画をWebインタフェースで編集できるようにする予定で、「フェードインやフェードアウト、画像の品質を挙げて音声の品質を落とす――といったコントロールを動画を見ながら処理できるようになる」(阪本氏)。また、来春にはセピアやネガなどの特殊効果を設定する機能や、変換した動画をFlashに変換してPC向けに書き出す機能も実装するという。
「最も低価格な静止画変換エンジン」のPicture Fitterは、最近、業界最安値をうたうASPベンダーが現れたことから価格を改定。これまで提供していた50万ダウンロードまで月額5万円の料金体系に、30万ダウンロードまで月額3万円というプランを追加し、1契約で利用可能なURLも5URLから10URLに拡張した。「毎月10万回も使わないというミニマムユーザーにも対応でき、キャンペーンなどの短期でも利用しやすくなった」(阪本氏)
静止画変換も動画変換も手動で行うと、実機を使った検証やURLの生成などの手間がかかり「配信する頃には担当者が燃え尽きてしまうし、人件費もかさむ」と阪本氏。そのコストは変換元となるコンテンツの品質向上など、収益を上げるためにこそ使ってほしいという。「そのためにも“速い、早い、うまい”牛丼のような、気軽に使える動画ASPを目指したい」(阪本氏)
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