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» 2007年11月28日 18時40分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:ユーザーに「UIの自由と選択肢」を――急成長するミドルウェア企業、アクロディアの挑戦 (前編) (1/2)

「このままでは、ケータイのUIは行き詰まる」――。2004年、ケータイ多機能化競争のまっただ中で、こんな考えを持つ人物がいた。そして携帯キャリアやメーカーがユーザーインタフェースを見直し始めた2007年、彼が立ち上げた企業は業界で大きな注目を集めている。その企業の名はアクロディア。同社を率いる堤純也社長は、携帯UIの世界に何をもたらそうとしているのか。

[神尾寿,ITmedia]
Photo アクロディア代表取締役社長 兼 CEOの堤純也氏

 携帯電話各社の2007年秋冬モデルが店頭に並び始めた。今年のニューモデルは多種多様でバリエーション豊かな内容になっているが、実は1つの共通項がある。それはドコモ、au、ソフトバンクモバイルの主要3キャリアのラインアップすべてがUI(ユーザーインタフェース)を重要な機能強化ポイントとし、そのプラットフォームとしてアクロディアのミドルウェア「VIVID UI」を一斉に採用したことだ(記事1記事2参照)。ほかにも、アクロディア製のミドルウェアは幅広く採用されており、ドコモとauの一部機種に「VIVID Movie」、ソフトバンクモバイルの一部機種に「VIVID Message」と「VIVID Panorama」が採用されている。

 携帯電話の“高機能化と使いやすさの両立”が重要になる中で、業界内で急速に成長し、存在感を増してきたアクロディア。今回のMobile+Viewsは特別編として、アクロディア代表取締役社長 兼 CEOの堤純也氏のインタビューをお届けする。

新たなタイプのケータイミドルウェア企業

 周知のとおり、日本の携帯電話ビジネスは1999年のiモード開始以降、急速にその範囲を拡大し、キャリアや端末メーカーだけでなく、さまざまな関連企業を育ててきた。携帯電話ビジネスの発展と歩調を合わせるように急成長したベンチャー企業も数多い。アクロディアはこれらケータイ関連企業の中でも、設立が2004年7月と新興の部類に入る。

 「アクロディアを一言でいえば、(携帯電話向けの)『ミドルウェアの会社』です。同業でいいますと、アプリックスやアクセス、エイチアイといった企業になりまして、私自身、エイチアイの出身です」(堤氏)

 アクロディアの創業は2004年であるが、堤氏は1999年のiモード登場に端を発した業界の急成長を経験している。携帯電話ビジネスが爆発的拡大をするきっかけとなった“iモードショック”を、間近に見たひとりだ。その後、堤氏は新しいタイプのケータイミドルウェア企業として、アクロディア設立に踏み切った。

 「携帯電話向けのミドルウェア企業というと、これまでは得意分野がはっきりしている『1社1芸』でした。しかし、我々がアクロディアを作る上で考えたのはケータイミドルウェア企業のポートフォリオ化です。特定の得意分野をはっきり作るのではなく、複数のラインアップを用意して(キャリアや端末メーカーなど)顧客の要望に応える。そういう体制を整えていきました」(堤氏)

 アクロディアの設立時は携帯電話向けミドルウェアの重要性や将来性が注目されたタイミングと重なり、ドコモ・ドットコムやKDDI、複数のファンドから出資を得ることにも成功。キャリアや端末メーカーを中心に取引先も順調に開拓した。アクロディアは当初の狙いどおり、ラインアップの多角化・ポートフォリオの構築をしながら、短期間で地歩を確立することに成功したのだ。

「ケータイのUIは行き詰まる」──VIVID UIの出発点

 このようにアクロディアは、「1つのプロダクト」には偏らない姿勢を貫いている。しかし、“想い”として重要視している分野は確かに存在している。それは携帯電話の使い勝手を左右するUIだ。

 「これは設立当初からの思いなのですが、一番やりたかったのはUIです。携帯電話のUIはこのままでは行き詰まる。その危機感を(2004年)当時から強く持っていました」(堤氏)

 2004年といえば、携帯電話の高性能化・多機能化競争がヒートアップしてきた時期である。さまざまな機能が携帯電話に取り込まれていき、ケータイは“デジタル十徳ナイフ”とでも言うべき万能性を得つつあったが、一方で「せっかく搭載された機能が、操作が分かりにくいという理由で使われない。そういう問題の兆候が見え始めていた」(堤氏)時期でもある。

 「そこで我々はUIを重要分野のひとつとして位置づけ、日本の端末メーカーや中国のチャイナ・ユニコムなどにUIのコンサルティングを行うなどして、UI分野のビジネスを始めました。

 しかし、(2004年)当時はまだ業界内でUIの重要性がそれほど認知されていなかったのも事実です。我々はコツコツとUIのプラットフォームを作っていって、キャリアや端末メーカーに提案をしていったのですけれども、(UIプラットフォームの重要性を)ご理解いただくのが難しいことも多々ありました」(堤氏)

 当時の携帯電話業界の“常識”を振り返れば、UIはメーカーの「所有物」という意識が強かった。メーカー内部には自社のUI体系を守ることが1つの競争力であるという考えがあり、“UIの違い”がメーカーを越えた端末乗り換えの阻害要因となることを、むしろ歓迎する傾向があったのだ。これは自社製品にユーザーを囲い込みたいという「メーカーの論理」としてはあながち間違ってはいないものの、UIの革新やメーカー同士の切磋琢磨を鈍化させる軛にもなっていた。堤氏は、「当初は端末メーカーの中に抵抗勢力がいた」と当時の状況を振り返る。

 「UIがいつまでも『メーカーの所有物』で閉じていては、いろいろな面で弊害がある。この点を最初に理解していただいたのは、NTTドコモです。我々の提案をドコモが受け入れて、UIのプラットフォーム化を推進する後ろ盾になっていただけた。これがVIVID UIをはじめとする当社のUI分野のプロダクトが躍進する追い風になりました」(堤氏)

 その後、2006年11月にアクロディアのVIVID UIはドコモ 903iシリーズの一部機種や、ソフトバンクモバイル向けの911SHなどに採用され、au端末にもアクロディアのUI技術の一部が使われるようになった。そして今年、VIVID UIは3キャリアの主要ラインアップすべてで採用されることになったのである。

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