インタビュー
» 2007年12月04日 12時43分 UPDATE

石川温が聞く:2.5GHz帯の割り当てで落選するとは夢にも思ってない──ソフトバンクモバイル 松本副社長 (1/2)

ソフトバンクとイー・アクセスが3分の1ずつを出資し、「MVNO中心主義」を掲げるオープンワイヤレスネットワーク。ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長は、2.5GHz帯の免許割り当てに絶対の自信を持っているという。

[石川温,ITmedia]

 ワイヤレスブロードバンドの実現に向け、まもなく割り当て先が決まる2.5GHz帯。総務省が用意した2つの枠を巡り、ウィルコム、オープンワイヤレスネットワーク(OpenWin)、ワイヤレスブロードバンド企画、アッカ・ワイヤレスの4社が名乗りを上げている。

 11月21日には、“透明性を確保するため”に総務省主催の公開討論会が開催され、各陣営が自陣の事業計画や割り当てに対する考え方を表明した。公開討論会には、オープンワイヤレスネットワークの代表としてソフトバンクの孫正義社長が登壇し、「ウィルコムは2GHz帯へ行くべきではないか」といった発言をしたことが議論を呼んだが、その後も同氏が「WiMAXを1社独占にすべきではない」「ウィルコムも2GHz帯で事業を展開した方がむしろいいのでは」といった発言を繰り返したことから、「場外乱闘戦」が起こった。孫氏の発言に対して、ウィルコムの喜久川政樹社長は「公平性に欠ける」と反論。しかし、ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長は「国民のためにもオープンワイヤレスネットワークは周波数を割り当てられておかしくない。ウィルコムも2GHz帯が割り当てられた方が、みんなが幸せになれる」と主張する。

 松本氏は、ちょうど1年前にも「2.5GHz帯を全力で取りに行く」とITmediaのインタビュー取材に対して表明していた。この時は、携帯電話事業の周波数を補完することを大きな目的としていたが、現在は大きく3つの論点で、現在の2.5GHz争奪戦を語りたいという。その真意に迫った。

国民(=ユーザー)のためにも、2.5GHz帯はWiMAX陣営2社に割り当てを

Photo ソフトバンクモバイル 取締役副社長の松本徹三氏

石川温(以下石川) 先日ウィルコムの喜久川政樹社長が「孫氏の主張は公平性に欠ける」と反論されていましたが、孫社長の「ウィルコムは2GHz帯で次世代PHSをやるべき」との発言の真意はどういったところにあったのでしょうか。

松本徹三氏 ウィルコムの喜久川社長が反論されたことは非常にいいことだと思っています。一部メディアでは、場外乱闘と面白おかしく書かれていますが、オープンな場で議論をすることは重要なことです。

 さて、総務省は2.5GHz帯の周波数を割り当て先を決めるに当たって、比較審査のポイントとして大きく3つのことを要求していました。それは技術的側面、事業遂行能力、そしてビジネスモデルのオープン性です。公開討論会では、この“比較審査のポイント”で差別化をする必要があり、事業遂行能力について、自分たちとウィルコムを比較する上で、失礼な発言もあったかと思います。相手のことを言うのは、本来の筋ではないと思いますが、事業遂行能力を比較しなくてはならないなら、自社と他社を比較するのはやむを得ないことでした。その点については、失礼の数々はご容赦いただきたい。

 ただ、「ウィルコムは、アイピーモバイルの跡地である2GHzに移るべき」という議論については、ぜひ国を含めて真剣に議論してほしい。ウィルコムから「WiMAX陣営こそ2GHzに行くべきだ」と反論されたが、我々には2GHz帯を利用できないという事情があります。

 周波数というのは国民の資産であり、総務省は国民の代理人として、国民のために割り当てをしなくてはならない。ここで、周波数の議論をするのに、事業者がエゴをむき出しにして、「欲しいからくれ」という議論をしてもしかたがない。我々は、自分らのエゴで主張している訳ではないのです。喜久川さんはオープンワイヤレスネットワークが周波数を獲得したいから、ウィルコムは出て行けと言っているかのように勘違いされているようですが、そういった意味で言っているのではありません。あくまでも、国民のために一番良いのではないかという視点で議論しています。

石川 オープンワイヤレスネットワークが2GHz帯を利用できないのはなぜですか。

松本氏 当然、我々も2GHzの活用は検討はしました。しかし、使えないというのが結論です。アイピーモバイルが返上した周波数帯をうちが使うと仮定しましょう。この2GHz帯は、TDDバンドなので、フォワードリンクとリバースリンクが存在します。仮にWiMAXで2GHz帯を使って、W-CDMAとWiMAXの両方に対応したデュアルモード端末を実現しようとすると、近くにあるソフトバンクモバイルのW-CDMAのリバースリンクと干渉してしまい、使い物にならなくなってしまうのです。実際に実証して、逆立ちしても使えないことがわかりました。

 NTTドコモもつらい。KDDIは少し楽です。PHSなら、周波数はかなり離れているので、全く問題ありません」

Photo

石川 「次世代PHSは2.5GHzよりも、2GHzのほうが親和性が高い」とする根拠はどこにあるのでしょう。

松本氏 現在PHSは1.9GHzを利用しています。近い周波数でやったほうが、絶対に便利です。今のPHSを使いながら次世代PHSを展開するというのであれば、どう考えても2GHzの方が親和性が高いはずです。

 ウィルコムは「うちは2.5GHzで開発してきた。いまさら2GHzは想定外。それだと開発のやり直しなる」とおっしゃっていますが、これはまったく理解できない話です。そんなことでは、通信事業者として大丈夫なのかと言いたい。なぜなら、技術的な方式を変えるのは大変ですが、RFを変えるのはあっという間にできるはずだからです。ドコモは2GHzにも1.7GHzにも800MHzにも対応した端末を作っています。チップベンダーはすぐに異なるRFに対応するチップを作ってくれます。RFを変えるのはそんなに大変なことではないからです。

これが大変だと言うなら、ウィルコムは通信事業者としてもう少し努力をするべきです。中国やタイに売りに行く気なのに、周波数の違いぐらいで慌ててはいけないはずです。彼らに2.5GHz帯ではできないと言われたらどうするのでしょう。異なる周波数には対応できないなんて言ったら、失注してしまいかねないのではないでしょうか。基地局だって、周波数が近ければ近いほどいいはずです。2.5GHzでは、電波の伝搬特性も異なるので、いまのPHSとは基地局設計を変えなくてはならないはずです。

石川 アイピーモバイルが返納した周波数帯は、用途がIMT-2000に限定されていますが、この点は問題はありませんか。

松本氏 用途は総務省が決めたもので、ITUなどで規定されているというわけではありません。競合する事業者がいるわけでもないので、おそらく半年もあれば手続きができるのではないでしょうか。

石川 今回、2.5GHz帯は80MHz幅に全国展開用の30MHzを2枠(うち1枠は2014年12月31日まで運用制限として20MHz)、真ん中に地域バンドとして10MHz、その間に計10MHzのガードバンドを設置する予定ですが、孫社長は2.5GHz帯にWiMAX陣営が2社割り当てられることで、競争も促進されるし、周波数もより有効に利用できると発言されていましたが、これはなぜですか。

松本氏 2.5GHz帯を割り当てられるのがすべてモバイルWiMAXなら、真ん中にあるガードバンドは不要になります。また現在想定されている周波数帯は、20MHzと30MHzがあるため、帯域の狭い方を割り当てられると、不公平競争になりかねません。ガードバンド分の10MHzを有効活用し、30MHzの枠を2つ割り当てた方が、対等に競争できるようになるはずです。

 周波数は所有者である国民、すなわちユーザーの視点で議論しなくてなりません。我々はエゴで言っているのではありません。ウィルコムは次世代PHSを展開するために(ガードバンド分などの)20MHzを無駄にしてもいいのかと聞きたいですね。

 モバイルWiMAXは、国際的な流れとしては30MHz幅で展開することが主流となっています。ですから日本でも、30MHzの2枠をモバイルWiMAXに割り当てるのが国民経済的にも有利ではないでしょうか。

石川 ウィルコムの喜久川社長は「ソフトバンクモバイルは、1.7GHz帯を取得したのち返上したではないか」「2GHzの15MHz幅は不利」という主張もされていましたが、この点はいかがでしょうか。

松本氏 1.7MHz帯はFDD方式ですから、アップリンクとダウンリンクのペアバンドとして構成されています。ですから今からTDDに組み替えるというのは現実的ではありません。一方アイピーモバイルが返納した周波数帯と次世代PHSは両方ともTDD方式です。2GHz帯はPHSとも相性がいい。今までの反論はまったく意味をなさないと思います。また、15MHzでは足りず、30MHz必要だというのであれば、ウィルコムはなぜ30MHz必要なのかをもっと明確に示すべきではないでしょうか。

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