ドコモは「907i」で7.2Mbps対応?──「SH-Mobile G3」は2008年2Qに量産出荷(1/2 ページ)

» 2007年12月12日 16時30分 公開
[園部修,ITmedia]

 ルネサス テクノロジは12月11日、パートナー企業と共同開発している、ベースバンドチップとアプリケーションプロセッサを統合したワンチッププロセッサ「SH-Mobile G1」の累計出荷数が2007年7月に1000万個を突破したと発表した。説明会にはSH-Mobile Gシリーズを利用した共通プラットフォームの開発を進めているドコモ、富士通、三菱電機、シャープ、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズからもキーパーソンが出席し、SH-Mobile Gシリーズに賛辞を寄せた。

通信とアプリケーション処理を1チップで担うSH-Mobile Gシリーズ

 ルネサス テクノロジ(当時は日立製作所)が開発したアプリケーションプロセッサ「SH-Mobile」は、古くから国内の携帯電話に採用され、ベースバンドチップとは別に、音声や動画、静止画などのマルチメディア処理やカメラの制御などを担うチップとして活用されてきた。しかし、ベースバンド処理用と別にアプリケーション処理用のプロセッサを搭載すると、それだけ実装面積が増え、コストは増大する。そこでルネサス テクノロジ(以下ルネサス)とドコモは2004年7月12日、W-CDMA方式とGSM/GPRS方式の両方に対応したデュアルモードのワンチップLSIを共同開発すると発表した。

 こうして生まれたのが携帯電話向けプロセッサ「SH-Mobile G1」だ。SH-Mobile G1は、W-CDMA/GSM/GPRS対応のベースバンドチップとアプリケーションプロセッサ SH-Mobileを融合した1チップソリューションだ。この1チップソリューションはSH-Mobile Gシリーズと呼ばれ、2006年5月に量産出荷が始まった。端末メーカーの富士通、三菱電機、シャープの3社が2006年のドコモの夏モデルから正式に採用し、1年2カ月で1000万個を出荷した。現時点でSH-Mobile G1を搭載した機種は18機種がリリースされており、FOMA端末内のシェアは50%を占める。

SH-Mobile G1を搭載するFOMA端末
メーカー 型番
富士通 FOMAらくらくホンIII、F903i、F703i、F903iX HIGH-SPEED、F904i、らくらくホンIV、らくらくホンベーシック、F704i、F903iBSC
三菱電機 D903i、D903iTV、D703i、D904i、D704i
シャープ SH903iTV、SH703i、SH904i、SH704i

 このSH-Mobile G1をベースに、ルネサスとドコモ、そして採用メーカー3社(富士通、三菱電機、シャープ)が共同開発した携帯電話用のプラットフォームが「SH-Mobile G2」である。こちらは2006年9月にサンプル出荷を開始し、2007年第3四半期から量産出荷を行っている。

 SH-Mobile G2では、SH-Mobile G1を下り最大3.6MbpsのHSDPA対応に拡張したほか、EDGEのサポートなどを加え、OSやミドルウェア、ドライバなどの基本ソフトを一体化した。ドコモが11月1日に発表した905iシリーズのラインアップ10機種中、富士通、三菱電機、シャープ、ソニー・エリクソンの6機種がSH-Mobile G2をプラットフォームとして採用している。

SH-Mobile G2を搭載するFOMA端末
メーカー 型番
富士通 F905i
三菱電機 D905i
シャープ SH905i、SH905iTV
ソニー・エリクソン SO905i、SO905iCS
Photo SH-Mobile G2では、ルネサス テクノロジ、ドコモ、富士通、三菱電機、シャープの5社が共同でプラットフォームを開発した。外観デザイン、付加機能、GUI、メーカー独自のアプリケーションやミドルウェア以外はすべて共通化されている

 さらに、SH-Mobile G2を拡張して下り最大7.2MbpsのHSDPA(カテゴリー8)に対応するのが、現在ルネサス、ドコモ、富士通、三菱電機、シャープ、ソニー・エリクソンの6社で共同開発している「SH-Mobile G3」をベースとしたプラットフォームだ。SH-Mobile G3は2007年10月にサンプル出荷を開始しており、2008年第2四半期の量産出荷を予定している。タイミングとしては、907i(?)シリーズくらいの時期ということになる。

Photo SH-Mobile G3は、ルネサス、ドコモ、富士通、三菱電機、シャープ、ソニー・エリクソンの6社での共同開発となる。すでにサンプル出荷を2007年10月に開始しており、2008年の後半から順次各社の端末に搭載される
PhotoPhoto 左の写真は1円玉と並べたSH-Mobile G3。会場ではSH-Mobile G3のリファレンスボードも展示。ワイドVGA(800×480ピクセル)のディスプレイに、VGA(640×480ピクセル)サイズ/30fpsのH.264動画を全画面表示して、滑らかに再生できる様子をアピールしていた。SH-Mobile G3は、中央の銀色の四角いヒートシンクの下に位置する

 今後は、ネットワークの高速化とマルチメディア機能の進化に合わせた、ハイスピードかつハイパフォーマンスのSH-Mobile Gシリーズ(SH-Mobile GX)と、コストを抑えて普及期にも対応可能なSH-Mobile G1R、SH-Mobile G2R、SH-Mobile G3xのようなラインアップという2つの方向でプラットフォームを展開していく計画だ。

PhotoPhoto SH-Mobile Gシリーズのロードマップ。次世代のSH-Mobile G3もすでに10月からサンプル出荷が始まっており、2008年第2四半期には量産が始まる。今後はハイエンド向けにハイパフォーマンスなSH-Mobile Gxシリーズと、普及期向けのSH-Mobile GxRシリーズを展開していく

今後はアプリケーションのプラットフォーム化も必要──ルネサス 伊藤氏

Photo ルネサス テクノロジ代表取締役会長&CEOの伊藤達氏

 こうしたワンチップのSH-Mobile Gシリーズが生まれた背景には、3G携帯電話の開発工程の複雑化がある。3G携帯の開発には、膨大な時間と工程が必要とされるが、開発スピードの短縮や高機能ニーズへの対応、グローバル対応、コスト競争力の強化、高機能アプリケーションの搭載需要といった、さまざまな要求にも応えなくてはならない。しかし、限られた開発期間の中で、端末メーカー1社で応えられる要求には限界がある。そのためマルチメディア機能や通信、OS、ドライバなどを共通化したプラットフォームを用意し、開発費や検証費用・時間を削減したり、ボリューム効果によるチップや部品コストの低減を図るのが世界的な流れだ。ベースとなる部分のプラットフォーム化を進めることで、端末メーカーはアプリケーションや付加機能に開発資源を集中できる。

 ルネサス テクノロジ代表取締役会長&CEOの伊藤達氏は、「プラットフォーム化によって、オペレーターは携帯ネットワーク上の新規サービスや企画を速く確実に提供できるようになり、端末調達コストの削減もできる。端末メーカーは、端末の開発費や部品コストを減らせ、さらにアプリケーションや付加価値に開発資源が集中できるため、端末の競争力を強化できる」とそのメリットを説明。さらに、マルチメディアサービスが高機能化し、アプリケーション開発費が上昇していることから、今後はアプリケーションのプラットフォーム化も必要になるとの見解を示した。

PhotoPhoto 携帯電話の開発現場では、開発期間の短縮、コスト削減といった大きな流れと、それに相反する高機能化、高性能化という要求がある。この2つの要素のバランスを取り、効率よく端末の開発をするために、プラットフォーム化が進んでいる。プラットフォーム化を進めることで、端末メーカーは検証作業やアプリケーション開発に必要なリソースを独自機能や差別化機能に割り当てられる
PhotoPhoto プラットフォーム化はキャリア(オペレーター)、端末メーカーに大きなメリットがある。プラットフォームは今後アプリケーションも含めたものへと進化していくとする

 なおルネサスでは、SH-Mobile G3のプラットフォーム共同開発を通して「ベースバンド技術の蓄積」と「3G市場でのSH-Mobileのデファクトスタンダード化」を狙っていくという。

 伊藤氏は「SH-Mobile Gシリーズは、国内のFOMAでしっかりしたプラットフォームを確立した。今後はこれを世界展開していく。SH-Mobile G3以降の世代の開発も順調に進んでいる。ワールドワイドの3G端末の中で、現在ルネサスのアプリケーションプロセッサのシェアは2割くらい。今後、3G携帯の市場が拡大していくと、そのままではシェアが下がってしまうが、なんとか今後も2割程度のシェアを維持していきたい」と話した。

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