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» 2008年01月07日 19時32分 UPDATE

韓国携帯事情:次世代WIPIからMVNO、SIMロック解除――2008年の韓国ケータイ市場で起こること

SKTの大型買収やLGTのRev.Aサービス開始、WiBroの国際標準化など、さまざまなことが起きた2007年の韓国モバイル市場。その影響を受け、2008年はさらに大きな変化が起きそうだ。

[佐々木朋美,ITmedia]

 SK Telecomの企業買収劇、KTFの好調なHSDPAサービス、LG TelecomのRev.Aサービス開始、WiBroの国際標準採択……。2007年の韓国モバイル市場はさまざまな出来事があった。これを受けて2008年も、色々な面で影響や反応、結果が現れそうだ。今年の韓国モバイル市場にどんなことが起こるのか、概観してみよう。

次世代WIPIプロジェクトが動き出す

photo キャリア3社で利用できるWIPIコンテンツであることを認証するマーク

 現在、韓国のモバイルインターネットの標準プラットフォームとなっている「WIPI」。2008年にはこの次世代バージョンが開発される。すでに韓国政府の情報通信部が次世代WIPIに関する発展戦略を作成しており、2008年からさまざまな計画が実行される。

 計画されているのは、次世代WIPI規格の開発はもちろん、WIPI活性化を目的とした非営利機関への助成、WIPIコンテンツの互換性確保、WIPIの海外進出などだ。

 次世代WIPIの詳細仕様については今後、キャリアやメーカー、ソリューション事業者などの意見を聞きつつ決定する。現在のところ必須と見込まれているのは、Symbian、Windows CE、LinuxなどのOSに搭載可能な規格と、多様な仕様のハードウェアに搭載できる「Scalable WIPI」規格を開発するということだ。実際の開発には、韓国電子通信研究院も参画し2008年上半期から開発に着手する予定だ。

 またWIPIの開発・管理体制を整えるため設立される非営利団体は、規格の管理やWIPIコンテンツの認証、WIPIアプリケーションの開発支援、WIPI関連ソリューションの海外進出支援などを行う。

 海外進出については、まず海外にネットワークを持つ韓国内の携帯電話事業者やメーカー、関連企業がWIPI海外進出協議会を結成し、海外でもWIPI基盤を提供できるようにしていく。また「OMA(Open Mobile Alliance)」などに対し、WIPIの国際標準化も推進する。合わせてWIPI関連イベントなども開催し、普及に努めるという。

 海外に進出するからには、韓国内での活性化も不可欠だ。とくにWIPIはバージョンごとに仕様が若干異なる。最新の“V2.1”と、それ以前の“V1.x”では、動作するアプリケーションが異なるのだ。また、WIPIの認証をキャリアが独自に行っているため、一口にWIPIコンテンツといってもキャリア間で互換性がないものもある。そこで、WIPIの下位規格であるV1.xを2008年上半期に廃止することを決定した。次いでキャリア3社の携帯電話で動作するWIPIコンテンツには、認証マークが与えられることも決まった。

 ばらつきのあったプラットフォームを統一する目的で開発されたWIPIだが、規格の管理体制やバージョンごとの互換性などに問題があり、現状では世界的なプラットフォームとはいえない状態にある。しかし、2008年上半期以降には上記のプロジェクトが実行され、WIPIを取り巻く環境が大きく変わっていくと予想される。

HSUPA、Rev.Aの3.5G競争が本格化

photo LG Telecomが9月に発表したRev.A対応端末2機種。左がSamsung電子の「SPH-W3150」、右がLG電子の「LG-LH2000」。どちらも画面は2.2インチで、地上波DMBに対応する

 2007年12月下旬、KTFのHSDPAサービス「SHOW」の加入者が300万人を突破した。同時期にSK Telecom(以下、SKT)のHSDPA加入者が200万人を超えた程度なので、韓国のHSDPA総加入者は500万人以上となる。

 KTFは2007年にSHOWブランドで勝負に出たが、W-CDMA分野でSKTに勝利するという結果となった(2007年5月の記事参照)。しかし加入者数自体に大きな差はなく、2008年にはHSUPAサービスが本格化するため、戦いはまだまだこれからといったところだ。

 HSUPAはSKTが2007年10月に専用モデムを発売した。これは上り最大1.45Mbpsまで対応するが、同社では2008年上半期には上り最大5.76Mbpsまで高速化し、HSUPAネットワークをソウル全域に構築するという。さらに2008年末までに全国へと拡大する予定だ。端末の普及は2008年上半期からとしており、このころから本格なマーケティング活動を行うと予想される。

 KTFも2007年6月に、HSUPA網を構築して接続試験に成功している。SKTに対抗するため、2008年の早い段階でのHSUPAサービスを開始することが見込まれる。

 一方、2007年9月にCDMA2000 1x EV-DO Rev.A端末を発表してサービスを開始したのがLG Telecom(以下、LGT)だ。(2007年9月11日の記事参照)。当初は韓国の主要32都市だった対応エリアも、その後84都市に広がるなど急速にエリアを拡大している。同社は2008年の上半期中に、対応エリアを全国へ広げる考えだ。

 LGTは、Rev.Aの対応エリア拡大と合わせて網開放型サービスにも注力する予定で、インフラとコンテンツを一体化させて利用者を囲い込もうとしている。というのも、KTFはSHOWが好調とはいえ市場占有率を少しずつ落としているからだ。

 2007年6月の市場占有率はKTFが31.9%、LGTが17.6%であるのに対し、2007年11月時点ではKTFが31.6%、LGTが17.9%。ごくわずかずつではあるが、LGTはじりじりと市場を拡大し他社を圧迫している。これは利用料金に応じてマイレージがたまる料金制や気分ゾーンサービスなど、実用的でユニークなサービスのおかげといえる。こうしたサービスに高速なRev.Aが加われば、インフラ面でもより強力な武器を持つことになるだろう。

 他社の攻撃的マーケティングにも関わらず、市場占有率1位を維持し続けるSKT、SHOWブランドの快進撃が続くKTF、他にないサービスで市場占有率を上げてきているLGT。2008年は、3.5G競争がさらに激化すると予想される。

通信市場の地殻変動で融合化が進む

 SKTによるHanaro Telecom買収の動きがあった2007年は、韓国通信業界の地殻変動を予感させる年だった(2007年12月の記事参照)。韓国情報通信部からの認可はまだ下りていないが、SKTがHanaro Telecomの経営権を握ることはほぼ確実視されている。買収により一大通信勢力ができあがることとなり、市場への影響は図りしれない。他グループでも、KTとKTFの統合や、LG陣営で何らかの動きがあることも予想できる。

 固定と無線。2つのネットワークを持つ企業が提供するサービスといえば、融合型の通信サービスだ。例えばSKTは、2007年12月に有線/無線融合型のSNSサービス「Tossi」を開始した。これは携帯電話の電話帳やPCのインスタントメッセンジャー(IM)に登録されたメンバーを“Tossi仲間”として登録し、その人がTossi会員でなくとも携帯電話やメッセンジャーを通じて書き込みを確認できるSNSだ。携帯電話やPCから書き込めるほか、ほかのSMSやIMに向けてTossiからメッセージを送ることもできる。

 折りしも2007年から、SKTやKTのような市場占有率の高い企業でも「結合販売」が可能になった。そのため固定回線と無線通信とをバンドルした「結合商品」が、今でも多く提供されている。

 ブロードバンド大国の韓国は、固定回線やそれに対応したPC向けWebサイトが高度に発達した反面、モバイルインターネットに対するユーザーの抵抗感が高い。高速なモバイルネットワークや対応端末はそろっているが、割高な料金やPCと比べて小さい画面への不満など、さまざまな要因がある。

 そのため、無線と固定回線を合わせた便利なサービスを提供するということは、韓国の市場状況から見て効果的にモバイルインターネットのユーザーを増やせる、1つの方法だといえよう。

 携帯電話市場の半分近いシェアを持ちながら固定回線がなかったSKTにとって、Hanaro Telecomの買収は市場拡大のための大きなチャンスといえる。KT、LG陣営でも手を打たなければSKTの独占状態を強めることにつながる。2008年は通信企業の変化が市場にどう影響を与えるのか見えてくる年といえる。

SIMロック解除でMVNOサービスが可能に

 2008年中に韓国政府が計画しているのが、SIMロックの解除とMVNOサービスの開始だ。目的は「利用者の利便性を向上させ、飽和状態の市場を活性化させる」(情報通信部)ことにある。

 2008年3月には、キャリア間のSIMロック解除が予定されている。キャリア内のSIMロック解除は2007年に行われており、同じキャリアであればSIMカードを差し替えて複数の端末を利用できる。しかし、異なるキャリア間のSIMロック解除は、端末の互換性などから実現性が疑問視されている。

 さまざまな端末に差し替えるだけで、自分の携帯電話として利用できるはずのSIMカード。韓国の場合、SKTやKTF用の携帯電話間の互換性に問題があり、音声通話はできてもメッセージは文字化けするなどといった不具合が知られている。政府が乗り気でも、実現はそう簡単ではないのがSIMロック解除だ。それでも利用者の便宜のために、早急な解決が求められている。

 また情報通信部が「卸売規制制度」を導入することでMVNOも可能となる。「(自前のネットワークを持つ)基幹通信事業者は、他の通信事業者から要請があった場合、義務的にサービスの卸売り提供に関する協定を締結できる」というものだ。つまり他社からの要請さえあれば、SKTなど基幹通信事業者はMVNO事業に応じなければならない。

 もちろんこの制度では、基幹通信事業者が有利な立場を利用した不当な契約条件は禁止事項となっている。そのためMVNOで通信事業に進出したいと思っている業者にとっては大きなチャンスといえる。MVNOが実現すれば安価な携帯電話利用が可能になり競争も活発化するだろう――というのが政府の目論見だ。2007年12月に大統領選挙を勝ち抜き、2008年から実務に就くイ・ミョンバク氏も、公約として携帯電話の料金値下げを挙げており、MVNOの実現が料金値下げに一役買うと予想できる。

 2008年の韓国の通信市場では、次世代規格や新たな技術・体制が目白押しだ。いずれも影響力の大きい分野であるだけに、技術やサービス開発が今から本格的に動き出し、加速度を増している。今まで以上に大きな変化が起き、さまざまな影響が出る、注目の1年になりそうだ。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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