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» 2008年01月08日 14時25分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:モバイル市場活性化のために、選択肢と多様性を増やしたい──総務省 谷脇氏に聞く (1/2)

携帯電話業界が大きく動いた2007年、総務省はモバイルビジネス研究会や、その後発表されたモバイルビジネス活性化プランなどを通し、モバイルビジネスを活性化するためのさまざまな活動を行ってきた。2008年、総務省はモバイル業界にどう関わっていくのだろうか。

[神尾寿,ITmedia]

 2007年は携帯電話業界にとって、ひとつの転換点と言える年になった。番号ポータビリティ(MNP)制度の導入を受けて、キャリア各社の新機種投入と料金値下げ競争が“つばぜり合い”の様相を呈する一方で、販売奨励金(インセンティブ)制度を見直す「分離プラン」導入に向けた動きや、MVNO推進の動きなどが注目を集めた。

 これら転換と変革のきっかけになったのが、携帯電話市場の活性化を目指す総務省の取り組みだ。同省はさまざまな議論を巻き起こした「モバイルビジネス研究会」の設置を筆頭に、市場活性化に向けた活動を精力的に行った。

 携帯電話の成長が飽和する中で、総務省は“成熟期の市場”をどのように活性化するのか。

 今回のMobile+Viewsは新春特別編として、総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部事業政策課長の谷脇康彦氏にインタビュー。激動の2007年の総括と、2008年に向けた展望について話を聞いた。

Photo 総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部事業政策課長の谷脇康彦氏

販売方式の多様化をどう見るか

 2007年の総務省の取り組みの中で最も注目されたのが、端末の販売奨励金制度の見直しと、販売方式の多様化に向けた動きだ。特に携帯電話の利用料金と端末価格を切り離す「分離プラン」については、2007年9月に公開されたモバイルビジネス活性化プランに、「2010年時点での全面導入を検討」と記載されるなど、販売制度見直しの目玉とされている。

 これを受けた2007年の秋冬商戦では、ドコモとKDDI(au)が新たな販売方式を導入。ドコモは分離プランの「バリューコース」を主力モデルとして採用する一方で、auは従来型インセンティブモデルを改訂した「フルサポートコース」を主軸に据えた。

 谷脇氏は「キャリアの個別の料金プランに対するコメントは差し控えさせていただく」としながらも、昨年後半に販売方式の多様化が進んだことについては「率直に評価したい」と述べた。

 「昨年、モバイルビジネス活性化プランを発表させていただきましたが、この背景にあるものは、“右肩上がりの成長期”を終えた今のモバイル市場において、次の収益機会を拡大していく、市場を活性化するというところにあります。

 総務省の基本的な方向性は、『モバイル市場のプレーヤーの数を増やす』、そして『サービスの選択肢を増やす』ことで、利用者利益を向上していくところにあります。この一環として(利用料金と端末価格を分ける)分離プランの検討を各キャリアにお願いしてきたところ、新たな販売方式が登場した。これは(市場活性化において)大きな一歩だと考えています」(谷脇氏)

 新販売方式導入にあたっては、分離プランを全面的に採用したドコモと、旧来型の販売奨励金制度の継続に重きを置いたauで選択の違いがでた。さらに、表面的には利用料金と端末価格を分離しながらも、特別割引という仕組みで両者の結びつきを残すソフトバンクモバイルの「新スーパーボーナス」もある。このようにモバイルビジネス活性化プランで掲げられた分離プランに一本化されたわけではないのが実情であるが、この点について谷脇氏は「選択肢が増えたことが重要」と強調する。

 「どの販売方式がよいのか、それを選ぶのは消費者の皆様だと思っています。例えば、新たな販売方式が導入されても、それを消費者が選択しなければ、“ユーザーの利益向上につながるものではない”ということになります。消費者がどのような販売方式や料金プランを選んでいくのか。行政として注目していますし、継続的に見ていきたい」(谷脇氏)

 また、新販売方式導入の影響は、キャリアとユーザーにあるのはもちろんだが、それ以上にメーカーと販売会社への影響が大きいとの見方もある。昨年議論された分離プラン導入の次には、販売奨励金すべての会計整理の明確化や、SIMロック解除に向けた議論も控えており、これらの影響を大きく受けるのもメーカーと販売会社だ。

 「販売モデルの見直しにおいて、メーカーと販売会社の受ける影響が大きいということは認識しています。ですから、今年から数年間の動向はしっかりと見ていきたい。例えば、SIMロック解除に関しても、“2010年にもういちど議論しましょう”というスタンスです。消費者と業界の利益にとってどのようなモデルがいいのか。そういった観点から、市場の目配りをしていきたいと考えています」(谷脇氏)

「日本型MVNO」が実現できる環境を整備する

 また2007年は、ソフトバンクモバイルとウォルトディズニージャパンが協業する「ディズニー・モバイル」や、ビッグローブソネットエンタテイメントがイー・モバイルの回線を借りてモバイルデータ通信サービスへの参入を発表するなど、MVNO関連の動きが活発化してきた。KDDIとウィルコムに確定した2.5GHz帯の周波数割り当てでも、MVNOが選定基準の大きな要素になったのは記憶に新しい。

 これらMVNOの参入活性化の支援も総務省が力を入れる分野になっている。

 「MVNOの新規参入促進はサービスの多様化につながりますから、これは重要なテーマだと思っています。モバイルビジネス活性化プランの発表以降、(MVNOの)新規参入の動きが活性化しているのは望ましいことです。MNOとMVNOが“WIN=WIN”の関係が築けるようなモデルの模索を、モバイル業界全体で積極的に議論していってほしい」(谷脇氏)

 モバイルビジネス活性化プランでも「MVNOの新規参入の促進」は重要なトピックとして扱われており、(1)MVNO事業化ガイドラインの再改訂、(2)MNOの卸電気通信役務に関する標準プランの策定、(3)新規周波数の割当時におけるMVNOの配慮、という3項目が設けられている。

 「MVNOの新規参入促進は、今後のモバイルビジネス活性化の柱の1つになります。これまでキャリア各社は自らのリソースで市場を形成してきたわけですが、今後はほかの業態の経営資源をうまく使う形でも、モバイル市場の活性化を考えていただきたい。

 最近の例では、ディズニーやソネット、ビッグローブのように、(既存キャリアとは異なる)顧客基盤を持つ企業があるわけですから、そういった企業に通信インフラを付加的に提供することで新たなビジネスを生みだす(MVNOの)形というのは、今後のモバイル市場の活性化につながっていくと思っています」(谷脇氏)

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