連載
» 2008年02月13日 10時52分 UPDATE

小牟田啓博のD-room:第17回 格の違いを見せ付けたディズニーケータイ、ティファニーケータイ

数々の端末を世に送り出してきたデザインプロデューサーの小牟田啓博氏が、日常で感じたこと、経験したことを書き綴る「小牟田啓博のD-room」。ケータイ業界が春モデルの発表ラッシュに沸く中、小牟田氏が注目したプロダクトとは?

[小牟田啓博,ITmedia]

 小雪の混じる寒い季節ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

 ケータイ業界では、今年に入ってから春モデルが続々と発表されました。そこで今回は、その全体像から小牟田の気になるプロダクトについて、いくつかコメントしてみたいと思います。

これぞ醍醐味! ディズニーが醸し出す世界観が端末に詰まっている

 ケータイ市場の“春商戦”といえば、1年を通じて一番盛り上がりをみせる商戦期です。若い顧客層の獲得に向け、各社のさまざまな思惑がプロダクトとして具体化する時期だけに、ユーザーの1人として注目しています。

 1月22日、「ディズニー・モバイル」が20〜30代の女性向けにケータイサービスを開始すると発表しました。実はこの話題、僕は一番の注目だと思っています。

 2007年11月12日、ウォルト・ディズニー・ジャパンとソフトバンクモバイルは携帯電話事業で包括的に協業し、ディズニー・モバイル事業を来春から始めると発表。同日、両社が協業する携帯サービスの提供について、総務大臣に届け出たという報道がありました。

 サービススタート時の端末としては、業務支援を行うソフトバンクモバイルのケータイをベースに開発されていることは、誰の目にも明らかだと思うのですが、独自の世界観をオリジナルのインタフェーススデザインで味わえるとなれば、ディズニーファンならずともわくわくドキドキを実感できることは間違いないでしょう。 

 発表されたディズニー・モバイルの最初の端末は、ソフトバンクモバイルのシャープ製「THE PREMIUM」シリーズをベースにした「DM001SH」でした。

sm08020801.jpgsm08020802.jpgsm08020803.jpg DM001SH(C)Disney

 インタフェースデザインやダウンロードコンテンツのオリジナリティこそが、ディズニー・モバイルで味わえる醍醐味です。今までのケータイでは苦労してカスタマイズする必要のあったインタフェースが、手軽で完成度の高いものとして楽しめます。その内容は、世界トップクラスのエンタテインメントクオリティとうこと。ほーら、すごくわくわくしますよね。

 さらに、契約端末に「@disney.ne.jp」というドメインが与えられるということも大きな魅力でしょう。これには僕も相当引かれます。ケータイキャリアが提供するsoftbank.ne.jpのようなドメインとは格の違いがありますからね。来る3月1日のサービス開始とともに、全国のソフトバンクモバイルショップで新端末が発売される予定だそうです。

 もう1つ僕が注目しているのが、「MVNO(仮想移動体通信事業者)」でケータイ事業への参入を目論む数々の会社やブランドがディズニーのMVNOモデルをきっかけに、我も続けと登場してくるだろうという点です。また、そうあってほしいと強く思うのです。

 サービス提供に不可欠な課題要素が多々ある中で、一般ユーザーへのアピールポイントとしての端末デザインとその世界観の構築が、決定打、あるいは有効打になることは間違いありません。今までに見たこともないようなデザインのケータイが登場する土壌として、大いに期待できるだろうと感じています。

 だってね、あのスポーツブランドのバスケットシューズのようなファッショナブルなケータイが登場したり、カフェブランドのケータイを持っているだけで、世界中のそのカフェの土地土地のコーヒーを味わうことが出来たり、有名なファッションブランドのファッションデザイナーがデザインした世界一流のモードなケータイが登場したり――などなど。イメージしただけで楽しくなってきませんか?

 もちろんビジネスですから、実現するのはそう簡単なことではありません。そんな中、ディズニー・モバイルが決断し実行に踏み切った自体の意味は、実はとてつもなく大きいと思うのです。

 ディズニー・モバイルの今後の進化に注目とエールを送りつつ、MVNO参入を検討している会社やブランドにも、この場をお借りして大いなる、大いなる(応援団長風に)エールを送りたいと思います。

想像以上に苦労が見えるティファニーケータイのジュエリー実装技術

 今回、ソフトバンクモバイルが発表した端末の中にも、いくつか注目したいモデルがあります。

 その中の1つが「THE PREMIUM TEXTURE」です。昨年末に発売された「THE PREMIUM」シリーズをベースに本皮や木など、クオリティ重視のパネルを用意した着せ替え端末が気になります。

 ベースモデルはTHE PREMIUMなのだけれども、ベースのスマートスタンダードなデザインに加えて、ハードとしての質感の向上やキートップ書体のグレードアップなど、すみずみまでデザインにこだわった端末に仕上がっています。こういった緻密な独特の世界観が市場でどういった反応を示すのか、僕自身も今後に注目していきたいと思っています。

 さらに、このTHE PREMIUMがベースとなり、販売価格1000万円以上、10台限定で発売されるというティファニーとのコラボレーションモデルも話題を呼びました。

sm08020804.jpg ティファニーケータイ(CGによるイメージ)

 発表会場ではCGによるイメージ画像が登場したのみで、現時点では実際に仕上がったものがどのようになるのかは確認できていません。CGでは分からない部分で、どう高級感を醸し出すのか期待しています。

 とくにティファニーケータイを象徴するのが、ジュエリーの輝きです。ラインストーンを貼ってキラキラ感を演出したりする場合には、フラットになっているラインストーンの裏面を接着するのが普通です。

 しかし今回のように厳選されたジュエリーを1つ1つ貼り付け、光の屈折による本物のキラキラ感を出すリフレクションを表現するには、ジュエリー自体の裏面を突起させたカット形状にする必要があります。

 その突起が、実装する際にネックになってくるだろうと思うのです。THE PREMIUM TEXTUREのパネルのあの薄い面に、隙間なくジュエリーを実装することは容易ではないでしょう。

 シャープのエンジニアの力量と、ティファニーのこだわりを持ったジュエリーとのハイレベルなコラボレーションが気になります。実物の登場が楽しみです。

 もう1つソフトバンクモバイルで注目しているのが「インターネットマシン 922SH」です。これはケータイの象徴でありメインインタフェースであるダイヤルキーがなく、QWERTYキーボードを採用したモデル。

sm08020805.jpg インターネットマシン 922SH

 ただ面白いのは、小型PCやWindows Mobile端末ではないので、OSは普通のケータイということです。ここで僕が思い出したのが、かつてアクティブなOLに多大な人気を集めていたNTTドコモの「ポケットボード」でした。

 まだ今のようにインターネットやメールがこれほど進化する前、ケータイが通話端末だったころの話です。通勤電車やカフェで、若い女性たちが一心不乱に向かい合ってメールを打っていたのがポケットボードでした。

 ケータイ本体とコネクタでつないで操作するのですが、文字の入出力をこのポケットボードが担っていたわけです。いつの時代でも、若い女性層がコミュニケーション技術を進化させてくれます。今回の922SHをどのように受け入れるのか、僕にはとても楽しみです。

僕が気になったウィルコム端末と、特徴的な端末が見られなかったau

 今回はちょっと、ウィルコムの春モデルについても触れてみたいと思います。

 ウィルコムもブランディングという意味では、僕は登場当初からめちゃめちゃセンスがいいなぁと感じていました。

 ただ残念ながら端末デザインといった意味では、もうひと頑張りが必要だと常々思っているのですが、その中でもいくつか面白いモデルをピックアップしてみたいと思います。

sm08020806.jpg HONEY BEE(WX331K)
sm08020807.jpg X PLATE(WX130S)

HONEY BEE(WX331K)」とネーミングされたモデルでは、ポップなカラーを備えたデザインと、デコラティブメールをうたっています。世界観を打ち出したいというメッセージは伝わってきますね。

 ただもう少し端末にオリジナリティとデザインの完成度があれば……と、どうしても思ってしまい、ちょっともったいないいなぁと感じました。新しさと完成度と、そしてトータルのバランスがもっと良くなれば魅力的な企画端末になるのになぁ……と。

 もう1つは「X PLATE(テンプレート)」(WX130S)です。こちらはウィルコムではセイコーインスツル(SII)初の音声端末。このこと自体も注目ですが、それ以上に、市場に初めてエントリーする際の企画端末というポジショニングも興味深い。これについて触れてみたいと思います。

 かつてカシオ計算機がPHS市場で実績を出していて、その進化論としてケータイ市場に初参入したときに、メインストリームのデザイン企画ではなく、今回と同じようにちょっと違ったアプローチとして、Gショックを想起するタフネスモデルを登場させました。

 X PLATEの登場は、それに少し近い印象を受けたのです。当時のカシオ端末と違ってタフネス性能があるわけではありませんが、明らかに企画デザインがスタイリングをメインにうたっています。僕はなかなか個性的なデザインで、悪くはないと思っています。

 でも気になる点もあります、普通、ハンドリング部分のデザイン表現は、グリップ部分はウレタンで衝撃吸収するのでブラック系の質感、それと質感を対比させるベースはシルバーに、というのが一般的な手法です。

 それがこのモデルでは手法が逆になっていて、グリップ部がシルバー、ベースがブラックなのです。表示を引き立たせるといった意味からすれば、表示周りがブラックであることの方が望ましいのだけど、でもグリップ部はブラックにした方がいいのかなぁ。そんなデザイナーの葛藤が目に見えるようで面白い。

 結果、ベースがブラックでグリップ部がシルバーになっているわけだけれど、シルバー部分をオレンジやブルーに変えれば、カラーの面積的に違和感のないバリエーション展開が出来そう、といった意味ではこのデザインは成功と言えるかもしれませんね。

 最後に触れたいのがau(KDDI)の新端末です。でね、今回の発表で感じたのは、いや、これは僕だけではないと思うのですが、「どうしたau!?」とちょっとがっかりしたような寂しいような、複雑な気持ちになりませんでしたか? ひと言で、注目したいモデルが……。

 もちろんそれぞれを見れば、“決定的に気に入らない!”というわけではありません。だけれども、“これが欲しい!”にもまったくならない、琴線に触れてこない感じがしてしまうのです。

sm08020808.jpgsm08020809.jpg W61CA(左)、AQUOSケータイ W61SH

 今回発表された「W61CA」のイエローや「AQUOSケータイ W61SH」など、ちらほら魅力的なカラーを持つラインアップもあるにはあるのです。だけども、どうも全体感として琴線に触れてこないのですよね。

 誤解を恐れずに例えてしまうのならば、“某社のクルマ”、とでも言ったらよいでしょうか。どれも見て大きな不満や不足はないけど全然欲しくない。そんな感じ。なにもすべてがBMWやアウディ、フェラーリやアルファロメオのような個性を持つ必要はないと思うのです。だけども、ちょっとねぇ。

 僕も少しだけauデザインをかじった経験がありますが、そんな立場から見ても、「頑張れ!」とエールを送らずにはいられません。今後に期待しています。

 今回は各社の春モデルについていくつか触れてみました。あなたはどんな新端末に魅力を感じたでしょうか?

 さて次回は僕が注目した春モデルの第2弾として、今回紹介した端末や、それ以外の端末も含めて、インタフェースデザインにフォーカスしてみたいと考えています。

PROFILE 小牟田啓博(こむたよしひろ)

profile-komuta.jpg

1991年カシオ計算機デザインセンター入社。2001年KDDIに移籍し、「au design project」を立ち上げ、デザインディレクションを通じて同社の携帯電話事業に貢献。2006年幅広い領域に対するデザイン・ブランドコンサルティングの実現を目指してKom&Co.を設立。日々の出来事をつづったブログ小牟田啓博の「日々是好日」も公開中。国立京都工芸繊維大学特任准教授。


Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia Mobile に「いいね!」しよう