インタビュー
» 2008年02月18日 17時22分 UPDATE

Mobile World Congress 2008:激変期を迎える携帯プラットフォーム市場、英Symbianの対抗策は

Mobile World Congres 2008では、携帯向けプラットフォーム分野でさまざまな動きが見られた。Linux陣営やWindows Mobile陣営がシェア拡大に向けた取り組みを本格化させる中、英Symbianはどんな施策で対抗するのか。英Symbianのベレンス氏とシンビアンの久社長に聞いた。

[末岡洋子,ITmedia]
Photo Symbianのマーケティング担当執行副社長ヨルゲン・ベレンス氏(左)と、シンビアンの久晴彦社長(右)

 2008年の「Mobile World Congress」では、携帯向けプラットフォーム周りで大きな動きがあった。英Sony EricssonがWindows Mobile対応の新モデル「XPERIA X1」を披露し、そのMicrosoftは米Danger買収すると発表。Linux陣営の動きも活発で、チップセットメーカー各社がGoogleの「Android」を実装したデモ端末を公開し、業界団体のLiMo Foundationも「LiMo Platform」を採用した端末を発表している。

 携帯プラットフォームの覇権争いが本格化する中、携帯向けOSでトップシェアのSymbian OSを開発する英Symbianは、どのような施策で現在のポジションを維持しようとしているのか。Symbianのマーケティング担当執行副社長ヨルゲン・ベレンス(Jorgen Behrens)氏とシンビアン代表取締役社長の久晴彦氏に話を聞いた。

ITmedia 先日、2007年第4四半期の業績を発表しました。

ベレンス氏 2007年末、Symbian OSを搭載した携帯電話の出荷台数は、前年同期比50%増の7730万台となりました。これは、携帯電話の全出荷台数の約7%にあたり、出荷台数の増加に伴って売り上げも伸びています。現在、Symbian OS搭載機は約140機種あり、累計出荷台数はMobile World Congress 2008の開幕前に2億の大台に達しました。

久氏 日本では2007年だけで1500万台を出荷し、累計では3000万台を出荷するなど引き続き好調を維持しています。シェアは30%、FOMAだけでみると60%程度です(関連記事参照)。

ITmedia Sony EricssonがXperia X1でWindows Mobileを採用し、Linux陣営の動きも活発です。こうした市場の変化をどのようにみていますか。

ベレンス氏 他のOSとの競争は予想していたことです。Windowsとは何年も前から競合していますし、Linuxとはこの4〜5年間ずっと競合しています。Symbianは市場を完全に独占しようとは思っていません。(Sony EricssonがXperia X1でWindows Mobileを採用したように)ライセンシーの端末メーカーが他のOSを採用することもあると思います。われわれは競争力のある企業ですから、自分たちの技術を改善していくことに注力しています。このようなことから、市場の競争には自信があります。

 われわれの強みはボリュームです。OSの強みとしては、Symbianは拡張性のあるOSで、ハイエンドからミッドレンジまでさまざまな携帯電話を開発できます。Sony Ericssonが会期中に発表した「Z770」「G700」などは、Symbianの柔軟性や拡張性を示すよい例です。開発コストを抑えられ、UIなどさまざまなサービスを利用できます。Symbianエコシステムを確立しており、公平で透明性のあるライセンス条項、料金体系を持っています。顧客との関係を重視しています。Symbianの戦略は、顧客と協業することとSymbian搭載機の開発を容易にすることです。

ITmedia 次期バージョンの強化点を教えてください。

ベレンス氏 昨年、Symbian OS v9.5を発表しました。9.5は主として2つの大きな特徴があります。

 1つ目はグラフィックアーキテクチャのScreenPlayです。グラフィックをアクセラレータ上で動作させるので消費電力効率とスピードが改善され、アニメーションや3Dグラフィックスを利用することで使い勝手や視覚効果を改善できます。開発者はパワフルで高機能な携帯電話を開発できます。

 2つ目はネットワーク技術のFreeWayです。25Mbps、50Mbps、さらには100Mbps以上の伝送速度をサポートし、スーパー3Gなどの高速データ接続に対応します。QoSも特徴で、例えばVoIPやビデオストリーミング中にWi-FiからW-CDMAにスイッチした場合も、接続が途絶えることなくシームレスに移行できます。

 ほかにもUSB機能やデータベース機能の「Symbian SQL」など、小さな機能強化も行い、強化点は合計で100以上にのぼります。Symbian SQLは、携帯電話のメモリが増えていることやユーザーが携帯電話に保存するデータが増えていることを受けて実装した機能で、高速に端末内のデータを検索できるようになります。

Photo 約220万のトピックがエントリーされる1.4GバイトのWikipediaデータベースを端末内に格納した携帯電話で「NTTDocomo」と入力すると、Nではじまる言葉がすぐに返ってきた

ITmedia このところ、米Apple、Google、米Yahoo、米AOLなどの米国企業がモバイルインターネット分野に進出し始めており、米IntelはWiMAXを強力に推進しています。こうした米国企業の動きはモバイル市場にどのような影響をもたらすのでしょうか。

ベレンス氏 大きな影響を与えると思います。インターネット企業のサービスや技術だけでなく、コンピュータ企業もモバイルにどんどん進出してくると思います。

 現在のハイエンドモデルは数年前のPCと同じくらいの機能やパワーを持っていますから、携帯電話からはますますインターネットや各種のネットサービスを利用しやすくなります。これはハイエンドモデルに強いSymbian OSにとって良い傾向であり、通信オペレータにとってはさまざまなビジネスモデルが生まれるチャンスといえるでしょう。

 ほとんどの端末は、独自OSを採用した携帯電話です。独自OSの端末では、(開発効率の向上やハイエンド機能の実装が難しいことから)ハイエンドモデル向け機能の実装や使いやすいユーザーインタフェースを提供するのは難しいでしょう。こうしたことからもインターネットのトレンドが入ってくることは、Symbianにとってさらなる追い風になるでしょう。

ITmedia Googleはモバイル市場の分断化を避け、Linux端末の開発を効率化させる目的で「Open Handset Alliance」を立ち上げました。この動きをどう見ていますか。

ベレンス氏 Googleの動きにより、さらに分断化されたのではないでしょうか(笑)。OHAについてはコメントしませんが、GoogleはSymbianにとって重要なアプリケーション開発会社です。Symbian OSにもGmailやYouTube、GoogleMapsなどのさまざまなGoogle発のサービスが実装されており、Symbianユーザーにも人気があります。

ITmedia Appleの「iPhone」は、モバイル業界にどのような影響を与えたと思いますか?

ベレンス氏 世界的には、それほど大きな影響を与えたとは思いませんが、米国市場で携帯電話をコンシューマー層に浸透させたとはいえるでしょう。米国では携帯端末はビジネス端末として利用されることが多く、iPhoneがコンシューマー市場を刺激しました。

ITmedia 日本市場でのシェア拡大に向けた戦略を教えてください。

ベレンス氏 NTTドコモ、シャープ、富士通、三菱電機、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズなどの日本の顧客と密に連携して要件を満たし、ニーズに応えていくことです。

久氏 日本市場は今後、競争が厳しくなると予想していますが、番号ポータビリティを契機にSymbian端末の出荷台数が増えるなど、市場の変化にも対応できています。われわれはライセンシーからの要求に耳を傾け、真摯に対応することを心がけています。また、ハイレベルな要求に応じる体制も整えました。こうした施策を続けることで評価を頂き、現在のポジションがあると思います。こうした施策の積み重ねが自然と数字に反映されるのだと思います。

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