インタビュー
» 2008年03月07日 00時10分 UPDATE

Symbian戦略担当副社長インタビュー(前編):SymbianはAndroid、Windows Mobileをどう見ているのか――戦略担当副社長に聞く

通信インフラの高速化や携帯電話の多機能化が進む中、端末の開発効率を向上させる汎用OSが台頭し始めている。Windows MobileやGoogleのAndroidが注目を集める中、携帯向けOS最大手のSymbianは、他の汎用OSをどう分析し、対応しようとしているのか。戦略担当副社長のジョン・フォーサイス氏に話を聞いた。

[後藤祥子,ITmedia]
Photo Symbianの戦略担当副社長、ジョン・フォーサイス氏

 通信インフラの高速化や端末のハイエンド化、モバイル向けネットサービスの普及など、モバイル市場を取り巻く環境はすさまじい勢いで進化を続けている。こうしたトレンドをいち早く取り入れ、いかにユーザーと各種サービスとの橋渡しをするかが携帯電話開発のポイントだ。そして高機能化が進む一方の携帯電話の開発においては、その開発に多大なコストと人手、期間がかかることから、SymbianやLinux、Windows Mobileなどの携帯電話向け汎用OSを採用する端末メーカーが増えている。

 その汎用OSの世界にも変化が起こり始めている。特に開発リソースの分断化が懸念され、標準の整備が待たれていたLinux陣営の動きが顕著で、2007年1月にはLinuxベースの携帯電話向けソフトウェアプラットフォームの構築を推進する業界団体「LiMo Foundation」が発足し、同年11月にはGoogleが携帯電話向けのオープンプラットフォーム「Android」を発表。2月にスペインで開催されたMobile World Congress 2008では、LiMo FoundationがLiMo Platform採用機の第1弾端末を披露し、Android陣営が試作機や評価ボードを展示するなど注目を集めた。

 こうしたモバイル業界のトレンドを、携帯向けOS大手のSymbianはどう分析し、どんな戦略で戦おうとしているのか。同社で戦略担当副社長を務めるジョン・フォーサイス氏にOS開発のビジョンと競合に対する見方について聞いた。

スタートダッシュは決めたが“気は抜けない”

ITmedia 携帯向けOSベンダーの競争が激化していますが、SymbianはライバルのOSをどのように分析していますか。

フォーサイス氏 競合するOSについては、大きく2つに分けられます。1つは市場シェアの90%を占める独自OSで、現状ではここがSymbianの直接の競合相手といえるでしょう。

 携帯市場は、ますますモバイルコンピューティングの色合いが強まっており、携帯電話にはさらに高度なスペックや機能が要求されます。しかし、独自OSの大半はアーキテクチャの限界にきており、今以上の拡張が難しくなっています。拡張性の限界は、サードパーティ製アプリを構築する上での限界にもつながるでしょう。

 一方で端末メーカーの要求は刻々と変化しており、今ではローエンドからミッドレンジ、ハイエンドまで幅広いラインアップの端末を開発できる環境が求められています。Symbian OSは端末メーカーのニーズに合わせて柔軟に対応できるよう設計されており、それが独自OSに対するSymbianの強みといえるでしょう。

ITmedia もう1つのグループは、今、注目が集まっているLinuxベースのAndroidや、Windows Mobileなどの汎用OSになるかと思いますが、こうした汎用OSに対するSymbian OSのメリットはどこにあると見ていますか。

フォーサイス氏 2つめのグループは、独自OSと戦いつつ、同じ市場のシェアを奪い合う立場にある(Linux陣営やWindows Mobileを手がけるマイクロソフトといった)汎用OSベンダーです。ここでは互いを競合と見てはいますが、一方で互いにスマートフォン市場の中で新たな価値を生み出す立場にあることから“補完しあう立場にある”ともいえるでしょう。

 私たちは、Androidの開発を率いるGoogle、Windows Mobileの開発を手がけるMicrosoftのいずれのメーカーに対しても敬意を持っていますが、ともにSymbianに比べて“限界はある”とも感じています。

 Androidについては、まだ実証できる段階にきていないことから、弱みや限界について話すのは時期尚早だと思っています。出荷できる本格的な製品にする作業に比べると、初期のソフトウェアスタックを作る作業は比較的容易であり、Androidはこれから始まる商品化へのプロセスで、人や技術、労力の限りを投入しなければならないのです。

 Symbianは世界の250もの通信キャリアと協力して、しばしば痛みすら伴うハードワークが必要なプロセスをクリアし、いままでに222機種の新端末を世に送り出しました。

 さらにいえば携帯向けOSの真の課題は、デモ機を出すとか新機種を出すという単純なことではなく、いかに幅広いセグメントの端末をハイペースでリリースできる環境を用意し、より多くのユーザーのニーズに応えられるかにあると思っています。Androidは、“今すぐに出荷できる”たぐいのものではなく、Symbian OSとはフェーズも解決しようとする問題の種類も異なると思っています。

重要なのは、メーカーが柔軟にカスタマイズできる土台を作ること

ITmedia Windows Mobileはいかがでしょう。

フォーサイス氏 Windows Mobileは、Androidとはかなり状況が違います。MicrosoftとSymbianは、携帯向けOSの開発をほぼ同時期にスタートさせていますが、現状ではSymbian OSのほうが多くのシェアを獲得しています。

 理由は多々あると思いますが、大きな要因は、私たちが柔軟性のある製品を出すことで、端末メーカーが容易に端末をカスタマイズできた点にあると思っています。

 世界の携帯電話市場では、地域の特性やリテラシー、文化に合わせた多種多様な端末が要求されており、1つのOSデザインですべての市場に対応できるものではありません。そこでSymbianの強みが生きたのではないでしょうか。

 Symbian OSのアーキテクチャは、当初からカスタマイズしやすいように考えて設計しているので、さまざまな差別化ポイントに対応する製品の設計が容易に行えます。レースのスタート時点から、リーダーシップを取るための要素があったのではないかと感じています。

 とはいえ、私たちも今後のOS開発は心してかからなければなりません。世界の携帯電話市場におけるSymbian OSのシェアはだいたい7%で、スマートフォンの市場は携帯市場の10%程度にすぎません。F1のレースに例えると、私たちは10ラップくらい先を行くいいポジションを取ってはいますが、先はまだ60ラップ、70ラップと長いので、“気を抜けない”ということです。

ITmedia Symbianは他の競合ともパートナー関係にあるという、独特な立ち位置です。この関係は今後も継続するでしょうか

フォーサイス氏 GoogleがGoogle Mapsなどのサービスを、MicrosoftがWindows Live MessengerをSymbian OS向けにネイティブアプリ化するなど、この2社は私たちにとってパートナーでもあり、ポジション的にはユニークだといえるでしょう。今後の関係については、“ビジネスの現実が勝つ”と言っていいのではないかと思います。

 Googleを例に取ると、彼らは最大のユーザーが見つけられるところを常にターゲットにしています。ユーザーが最大化できるプラットフォームをターゲットにするのは、ビジネスのロジックから見てももっともなやり方であり、今後もそれは変わらないのではないかと考えています。

 GoogleはSymbian OS向けアプリの開発に多くの投資を行ってきており、数カ月おきに新しいアプリケーションをリリースしています。こうした過去の実績から見ても、ユーザーの反応はいいと見るのが自然です。両社がWIN-WINの状況である限り、それを変える必要はないでしょう。

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