初めてステンレスパネルを採用したP703iμは、金属の質感を生かしながらもクロムメッキなど、その加工方法や柄でイメージバリエーションを演出する手法を採用した。では今回、それを超えるには何をすればいいのか。
「徹底した金属の質感を、もう“そのまま”見せるしかありません」(浅野氏)
2007年は金属ボディを採用する機種が増えたが、そのほとんどは平滑面のパネルで構成されることが多い。一方のP705iμは、サブディスプレイの部分や側面のカット面など、立体的に造形される箇所も多く存在する。そこが、他社の“金属ケータイ”とはひと味違うところらしい。
「平滑面の金属パネルを造るのは難しい。でも、それが立体面になると、その難しさのケタが上がります。立体化することで、例えば光の反射具合でそのたたずまいに変化が生じ、より“金属の質感”が得られます」(浅野氏)
ちなみにステンレスにもいろいろな種類があるが、P705iμは大変堅く、傷が付きにくいグレードの──本来はバネ材料として使う機能素材を採用した。薄型化と強度の両立、そして表面に用いるパネルであることなど、普段の携帯の使用シーンを考えるとなぜなのかはそれとなく想像できる。
「柔らかいステンレスであれば、形状加工やヘアライン処理もある程度容易です。しかし、堅いと立体造形や絞り込むといった加工が特に大変です。加工工程で角に穴が開いてしまうなどのトラブルは多々ありましたよ」(太田氏)
「ステンレスのヘアラインはアルミのそれと比べるとかなり質感が違います。アルミは柔らかいので、どうしてもやや粗くなってしまうのですよね。アルミパネルを採用した“prosolid II”(2005年11月発売)もよい仕上がりでしたが、並べて見ると違いがよく分かります。ともあれ、金属ってやはりいいですよね」(三浦氏)
さて、ここまで薄くなって問うのは愚問かもしれないが、今後もっと高機能に、かつ薄くできるのだろうか。
「もちろん、難しいです(笑)。また使い勝手の観点から、さらなる薄型化のニーズがどこまであるのかということを考える必要もあると思います。ただ、例えば今回は70xiシリーズで実現したので、ハイエンドの90xiシリーズにも、という声はすでに多数届いています」(太田氏)
誰もが満足する工業製品は、おそらくどのメーカーも作れない。ただ、あるポイントを突き詰めると、ある人の心に深く響く製品ができあがる。さて、P705iμとPROSOLID μはユーザーの心にどう響いただろうか。
P705iμのダイヤルキー用バックライトは前述の通り、P703iμに採用したELシートからLEDに変更された。1枚挟んでいたELシートを排したことで、「クリック感もよくなっていると思います」(島田氏)とのことだ。
シートキーの裏にはプッシャーと呼ぶ、押し心地を左右する部品がある。設計担当の島田氏はカコカコカコカコと、日々“押し心地”のチューニングも行ったという。
「普段は見えませんが、そのシートキー裏の造形や基板の部品配列も美しいんですよ。P705iμには裏側にも機能美が詰まっているのです(笑)」
いやはや……。分解したくなりました。
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