インタビュー
» 2008年03月25日 00時21分 公開

開発陣に聞く「822P」:心に響く“シンプル”、それは簡単そうで最も難しいこと──「822P」 (2/3)

[房野麻子,ITmedia]

心に響く“シンプル”の難しさ

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 822Pの特徴はなんといっても、無駄のない“まるで板”のようなフラットな形状と、美しいグラデーションカラーにある。本体デザインを担当した羽田大利氏(以下、羽田氏)は「とにかくシンプルにまとめることを軸にして考えた」とそのデザインコンセプトを説明する。

 折りたたみ端末にはヒンジ、スライド端末はスライド機構用のレールなど、ボディが動くための機構や造形がある。それは特別な意識こそしないが、端末のアイデンディティになるポイントの1つになっている。しかし、ストレート端末にはそれがない。

 「だからこそシンプルを追求することが、商品の大きな特徴、そして武器になると思いました」(羽田氏)

 パナソニック モバイルの調査によると、ストレート端末は男性ビジネスマンに人気があるという結果があったようだが、デザインにおいてはユーザーの性別を強く意識することはなかった。まず、形状をなるべくシンプルにまとめることを軸に据え、デザインを仕上げていく段階でどんなユーザーへアピールしていくかを調整していった。

 822Pはホワイト、レッド、ブラック、ピンクゴールドの4色で展開する。そのうち、特徴的なグラデーションカラーはホワイト以外のレッド、ピンクゴールド、ブラックで採用する。シンプルと言葉では簡単に言えるが、工業デザインにおいては“単に何もない”のではユーザーへ響かない。カラーリングはそれを主張するポイントの1つに挙がる。羽田氏は、奇をてらう色で着飾るのではなく、苦労してシンプルに仕上げた全体の端末イメージに馴染むカラーにしたかったという。その答えがグラデーションだった。

 「グラデーションと平行して、単色の多色展開やグラフィック柄なども検討しました。しかし、グラデーションはなにより個々の端末で特徴を表現できる効果が大きく、3色並べると“群”としての特徴も出せます。“個”と“群”の融合。この機種はグラデーションがベストな解だと思いました」(羽田氏)


photo 「鮮やかに人の目を惹くが、それは主張しすぎない」というような、微妙なバランスで練られたグラデーションカラー

 グラデーションは上から液晶部分で1色、十字キー部で1色、発話/終話キー部で1色、1から3のダイヤルキー部、4から6キー、7から9キー、[*][♯]キー部で1色ずつ、そして下端の計8色で構成されている。それぞれ個別に着色され、組み上げると滑らかなグラデーションを表現するよう配色が巧みに調整されている。

 ちなみにボディと十字キー部はそれぞれ工法が異なる。工法が異なると、発注する工場も違ってくる。十字キーは韓国の工場で塗装されたものとのことだが、その微妙な色調整のため韓国に行きっぱなしの状態になったという。

 「工程としては、まずボディのディスプレイ部と下端の製造・着色をインモールドの製造工場に依頼し、まず最も濃い色と薄い色を決めます。そのできあがったもの持参してダイヤルキー部の着色を依頼し、きちんとグラデーションに見えるように色を決めていきました。ただ、これが思いのほか難しかったのです。色の成分は数値で管理できるものです。そのため、上下の色が10と1だとすると、真ん中はその数値を分割して均等になるように色を振り分ればよい……はずなのですが、できあがったサンプルを見るとどうも色が違う。数値だけで色を決めてもだめなようでして」(羽田氏)

 「そのため、最後は“人の目”で見た微調整を全色でやりました。この作業は大変時間がかかりました。“輝度だ、明度だ、彩度がどうこう、もっとピンクを明るく、ちょっと黄色く”など。微妙な話を通訳さんも通して長い間やりとりしましたね」(羽田氏)

 当初は言葉でやりとりしていたが、らちがあかない。実際に現場に行って、使っている塗料を確認しながら「この色をもっと足して」というような微調整を行って完成した。

 「1色であればそれも1回で済みます。しかし、822Pはその作業を1色ごと全部にやりました。通常の5、6機種分くらいの時間と手間とパワーを使いましたね」(羽田氏)


photo フレームの色は本体カラーに合わせて、レッドとピンクゴールドはやや赤みがかかったもの、ブラックは黒みが入ったものを採用している。ちなみに決定キーのシルバーも同様である

 グラデーションカラーに加え、本体表面の質感の演出にも同様のこだわりを込めた。側面はシルバーのフレームで囲まれている。ボディの薄さを際立たせる効果とともに、金属調のもので囲むことで強度に関する不安感を和らげ、視覚的な安心感を与える効果がある。キートップにはクリア素材を用い、塗装はその裏に施される。クリア樹脂の厚みで透明感や奥行き感を表現する手法である。

 「実は、ボディはもう少し薄くできます。ただ、塗装の透明感を表現するために若干厚みをもたせてあります。塗装を裏面にすることで、樹脂部分が空間になって塗装の透明感や奥行き感がぐっと増えます。表面に塗装したものとは質感が全く変わってくるのです」(辻本氏)

 表面に塗装するなら、その裏はユーザーには見えない。しかし、透明の樹脂素材の裏から透かして色を表現するなら、その裏もきれいにフラットに仕上げなければならない。色の表現は、部材や加工、設計部分まで連携しなければ実現できなかった。


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