HTC Nipponでは、“電話”機能はあくまで「PCから使えるモデム」として実装されており(PCからはUSB接続のモデムとして認識される)、ユーザーはWindows Vista Businessをメインとして使うことを想定しているという。ただ、PCモードではバッテリー駆動時間が2時間程度しか確保できないため、待ち受けの状態として“電話モード”であるSnapVUEを用意したうえで、この状態でも各種情報にすぐアクセスできるように、スケジューラーやToDoリスト、天気予報、SMSとPCメール(DirectPushを利用することでPCメールとの同期が可能になる)用メールソフトを導入した(MMSは利用できない)。ただし、SnapVUEで使えるスケジューラーとToDoリストは、PCモードのOutlookと連携していないため、それぞれで内容の同期を取るにはExchange Serverを利用する必要がある。
先に述べたように、SnapVUEは、ユーザーインタフェースや、用意されている機能、設定画面など、限りなくWindows Mobileに近いが、HTC Nipponの説明では、ユーザーが自分でソフトをインストールしてカスタマイズすることはできないとされている。ユーザーのカスタマイズでSnapVUEの使い勝手を向上させていくことはできないようだ。
PCモードで動くWindows Vista Businessには、UMPC(Ultra Mobile PC)向けのインタフェースとして2006年に登場した「Origami」の最新バージョンである、2008年の1月に発表された「Origami Experience 2.0」が実装されている。HTC Shiftの試用機でOrigami Exprerience 2.0で提供されるツールの1つ「Origami Now」を試したが、ウィジットで供給される各種ツールをタイルのように並べることで、タッチオペレーションでも各機能のアクセスを容易にして使い勝手を向上させている。
バッテリーパックの容量は2700mAhで、HTC Nipponの説明によると、PCモードでWindows Vista Businessを利用しているときの連続駆動時間は約2時間、SnapVUEを利用している“携帯電話モード”でDirectPushを利用している場合の待ち受け時間は約53時間、DirectPushを無効にした状態では約10日間のバッテリー駆動が可能であるという。
HTC Shiftは、SIMロックフリーの端末として販売される。U-SIMカードを差せばNTTドコモとしてもソフトバンクモバイルとしても利用できる柔軟性はあるものの、それぞれのキャリアが用意しているデータ通信の定額プランやパケット料金の割引プランなどが適用されないので、比較的高いパケットコストでのデータ通信が強いられることになる。
音声通話に対応していないため、データ通信利用にこそ存在意義があるHTC Shiftにとって、データ通信のコストは必須であるが、この懸案について、HTC Nipponのビジネス・ストラテジー&マーケティング本部 ディレクターの田中義昭氏は、「現在、キャリア各社と交渉をしている段階にある」と述べるだけで、具体的な見通しなどは一切明らかにしなかった。
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