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» 2008年04月22日 21時45分 公開

グローバルなMVNOで“世界最大のケータイネットワーク事業者”を目指す――日本通信

MVNO事業者として、つなぎ放題のデータ通信をいち早く提供した日本通信。オープン化に向かいつつある携帯市場のトレンドをチャンスととらえ、国内外のMVNOによる相互接続を積極的に推進することで“世界最大のケータイネットワーク事業者”を目指す。

[後藤祥子,ITmedia]
Photo 「“世界最大のケータイネットワーク事業者”を目指す」と意気込む、日本通信の三田聖二社長

 4月21日、MVNO事業を展開する日本通信が、新たに提供するIP電話サービスと今後の戦略に関する説明会を実施した。この日は同社がヘラクレス市場に上場して3年目の記念日。同社の三田聖二社長は、3Gデータ通信サービスの遅れなどから“失われた3年”となってしまったこの期間を振り返るとともに、今後の取り組みについて話した。

 ケータイキャリアの回線を借り受けてサービスを提供するMVNO事業者としてスタートした日本通信は、2001年にウィルコムの回線を利用したデータ通信のつなぎ放題サービス「bモバイル」を提供。当時のデータ通信は、従量課金制が主流だったことや、面倒な設定の必要なしに買ってすぐ利用できることなどから人気を博した。

 同社は3Gインフラが普及し始めた2005年、ボーダフォン(現ソフトバンクモバイル)の3G回線を借り受けたデータ通信サービスの導入を進めていたが計画の変更を余儀なくされ、導入がかなわなかったという。その後、NTTドコモに相互接続を申し入れたものの条件面で合意に至らず、総務大臣への裁定を申請したのは既報の通りだ。

 こうした事情から、当初予定していたとおりには事業を運営できなかったものの、番号ポータビリティや通信・端末料金の分離プランの導入など、ケータイ市場がオープン化に向かい始めたことから、流れが変わったと三田氏は見る。さらに総務省がMVNOへの参入希望者向けに「支援相談センター」を開設するなどサポート体制も整い始めたことから、市場の拡大も予想される。野村総研の試算では、その市場規模は2011年に1兆円、2015年に2兆円規模になるといい、三田氏は「当社の売上が、いつ1000億円に達するかは分からないが、その道筋は分かっている」と自信を見せた。

 その施策の1つが、同日発表したスマートフォン向けIP電話サービスだ。

Photo 3G対応のデータ通信サービスの導入が遅れたことから、売上高が減少。今後はケータイ市場のオープン化を追い風に、売上高1000億円を目指す

ケータイビッグバンでMVNOに好機、日本通信の役割は“Mobile Enabler”

Photo 日本通信 常務取締役CFOの福田尚久氏(左)。端末と通信料金の分離プランが導入されることで、海外の端末メーカーが日本市場に参入すると予測する。「海外では法人、個人向けに、さまざまな端末が提案されている」(同)とし、Kindle(Amazonの電子書籍端末)や球形のカメラ端末を紹介した

 日本通信が、今をMVNO展開拡大のチャンスと見る理由は大きく2つある。1つは日本のキャリア各社が、端末と通信料金の分離プランを導入し始めたことから、端末価格が適正化した点だ。日本のキャリアはこれまで販売奨励金モデルによる端末販売が主流で、端末を安価に提供し、通信料金でその分を回収するのが一般的だった。しかし、2007年から各社が分離プランを採用し始めたことから、“1円端末”といわれる安価な端末が市場から姿を消しつつある。

 ユーザーは端末の価値を価格によって把握するようになり、自身が必要とする機能を持つ端末をコストを見ながら購入するようになると、日本通信 常務取締役CFOの福田尚久氏は指摘。そして今後は、安価な端末のニーズが高まり、海外メーカーの参入が増えると予測する。

 「販売奨励金の問題が明るみに出て市場が健全化したことで、海外からかなりの端末メーカーが日本市場に参入するのではないか。まさに端末はグローバル市場に向かっている」(福田氏)

 そしてもう1つが、ネットワークの開放だ。これまでのケータイキャリアのビジネスモデルは、ネットワークインフラを構築したキャリアが、電話番号やキャリア専用の端末でユーザーを囲い込んでいたが、番号ポータビリティで電話番号による囲い込みがなくなり、SIMロックについても将来的には解除に向かう方向となっている。さらにMVNOによる相互接続が開放されたことから、ネットワーク設備を持たない多種多様な事業者が、携帯電話サービスを提供できる素地が整った。

 この2つが同時に進行することで、キャリアが支配する垂直統合型のビジネスモデルから、顧客本位の姿になるというのが福田氏の考えだ。

 「ユーザーが一番上にいて、それに対して多様な販売者が出てくる。ショップやシステムインテグレータなど、さまざまな業態の方々が顧客に提案を行い、ニーズに合わせて、どんな端末やキャリアを選んだらいいのかを案内する。海外から入ってくる多彩な端末にも、最適なネットワークを組み合わせて提供できる」(福田氏)

Photo 携帯電話産業の正常化で、市場はキャリア支配から顧客本位になると福田氏は予測する

 こうしたビジネスモデルでは、設備事業者は“本来、縁の下の力持ち”として存在しなければならないというのが福田氏の考え。ただしそこには、端末とそれに最適なネットワーク、設備をつなぎ止める役割が必要で、日本通信はこの役割を“Mobile Enabler”として担いたいとしている。

 「Mobile Enablerとして見ると、まず携帯のネットワークを(MVNOで)調達し、多様なネットワークを提供する。例えばIP電話ができるようなネットワークケータイを実現して提供する。さらに端末メーカーやソフトウェアベンダーとのサービス開発が必要で、顧客にとって魅力的な料金プランも必要になる」(福田氏)。

 具体的にはW-CDMAやPHS、無線LAN、WiMAX、ケーブルテレビ、FTTHなどの相互接続を通じてネットワークを調達し、調達したネットワーク上で利用できるサービスを、日本通信のデータセンター内にあるJ-Platプラットフォームと端末を組み合わせることで提供する計画だ。

Photo Mobile Enablerとしての日本通信の役割と、ビジネスモデルのイメージ

3年後の日本通信はこうなる

 福田氏は、日本通信は今後「世界最大の携帯ネットワーク事業者になろうとしている」と話す。現在同社はウィルコムのPHSとドコモのW-CDMAに接続しており、「人口のカバーでいうと、1億2000万人にサービスを提供できる」(福田氏)という素地がある。これに加え、2007年には米U.S. Cellularとの相互接続契約を結んでおり、「(米人口の3億人を合わせれば)4億人に対してサービスを提供可能なネットワークを持っている」(同)と胸を張る。今後は欧州やアジアにもMVNOによる相互接続を拡大し、15億人規模のグローバルなネットワークの構築を目指す。

 「その中で、Mobile Enablerのグローバルリーダーでありたい。例えば来年や再来年に、“こんな面白い製品がある、あの出版社がこんな製品で情報配信を始めた”といったとき、その戦略をひもとくと裏には日本通信がいる――。こうしたサービスの実現を下支えするサービス事業者でありたいと思っている」(福田氏)

 こうしたビジョンの実現に向け、まず国内で取り組むのは(1)iモードのエンドエンド料金による接続(2)レイヤー3接続(3)レイヤー2接続の3つだ。実現できる時期については「過去の実績から見ると、エンドエンド料金による接続とレイヤー3接続は第2四半期中、レイヤー2に接続については来年度」(同)と想定している。

 「iモード接続がエンドエンド料金になることで、サービスと通信の一体料金が実現し、レイヤー3の接続で3Gのbモバイルや法人向け3Gサービスを提供できる。第2四半期中には、IP電話を搭載したスマートフォンを提供したい。2009年にレイヤー2接続が実現した段階で、ユビキタス端末やドッチーカ、FMC型のIP電話を提供できる」(同)

Photo 国内のサービスロードマップとサービスイメージ

 「端末についてはコンピュータ系のメーカーと組んで新製品を投入し、データ通信を中心にして、音声はIP電話として付加する。販売面については、販売代理店やシステムインテグレータ、固定、ケーブルテレビといった、モバイルサービスを提供したいと考える会社と組んで進める」(三田氏)

 海外展開については、グローバルベースで設備を持つ事業者との相互接続を積極的に推進し、その上にプラットフォームを築くことで、新たなサービスを提供する考えだ。

 「従来のケータイ市場は、キャリアの下にいる人たちだけで固まっていたが、そこに対して新たな取り組みが次々と日本に入ってくる。日本通信はその際の最高のパートナーでありたい」(三田氏)

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