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» 2008年04月24日 00時10分 UPDATE

「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」第12回会合:技術方式の統一やビジネスモデルの着地点は見えず――携帯端末向けマルチメディア放送の課題

総務省が4月22日、携帯向けマルチメディア放送懇談会の第12回会合を開催した。第9回から11回までの会合は、“自由活発な議論・検討を行う必要がある”ことから非公開で開催。第12回は久々の公開議論として、マルチメディア放送サービスのあり方が検討された。

[石川温,ITmedia]

 総務省は4月22日、「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」を開催した。

 この懇談会は、2011年に停波する地上波アナログテレビ放送の空き周波数帯の活用方法や、空いた周波数帯を利用するにあたってのビジネスモデル、社会的役割などをテーマに、制度面と技術面の課題を検討する会合。第9回から11回までの会合は、“自由活発な議論・検討を行う必要がある”ことから非公開で開催され、第12回目となる会合では、論点の整理を中心に議論が進められた。

sa_mmk01.jpgPhoto 懇談会の様子(左)と、座長を務める甲南大学法科大学院教授の根岸哲氏(右)

 会合の冒頭、総務省側からはこれまで議論の経緯のまとめが発表された。

 2011年にアナログテレビ放送が終了し、デジタル放送に完全に移行することを受け、携帯端末向けの放送としては「デジタル新型コミュニティ放送」「全国向けマルチメディア放送」「地方ブロック向けデジタルラジオ放送」の3つの類型の放送を実現する方向で検討するのが望ましいというのが骨子だ。

 全国向けマルチメディア放送では、全国であまねく受信できるようにすることが望ましいとし、懇談会では全国向け放送を検討している3事業者から、ヒアリングを行ったという。そしていずれの事業者からも、事業開始から5年後の段階で「現在のFMラジオの世帯カバー率(約90%)以上のカバー率を確保できる」という回答を得たとした。

 必要な周波数については、過去の懇談会で「全国を網羅するには複数のチャンネルが必要」という前提があった。しかし、全国向けの放送に参入する希望事業者(マルチメディア放送企画LLC合同会社、メディアフロージャパン企画、モバイルメディア企画)は、いずれもヒアリングにおいて「SFN(Single Frequency Network、隣接するサービスエリアを単一の周波数でカバーするシステム)混信にはすべて対応可能」と回答をしていることから、1チャンネルのみを用いる方法による置局を前提とすることが盛り込まれた。

 総務省からは、周波数の具体的な割り当てイメージについても方針が示された。

 モバイル機器向けのマルチメディア放送には、VHF帯の2つの帯域が割り当てられる予定となっているが、そのうちV-HIGH(207.5-222MHz、14.5HMz)は、全国向けのマルチメディア放送、V-LOW(90-108MHz、18MHz)は地域ブロックのデジタルラジオという割り当てになっている。これは「現時点で具体的な事業イメージを持つ者の意見を念頭に置いた」上での方針だという。

 ただし、サービスの柔軟性を確保する意味で、「全国向け放送の周波数で、全国向けと地方向け放送を行う」「地方向け放送の周波数で、地域ブロックが連携して全国向け放送を行う」といったことも可能なようだ。

 また、有料放送と無料放送の区別においては「原則として事業者に委ねるのが適当」とされた。ただし、国民に広く放送を提供するという視点では「一定程度の無料放送を確保する方策を検討すべき」とまとめられている。

 最も注目度が高い技術方式については、「周波数の利用効率がよい多チャンネルの確保が可能なデジタル方式」「映像・音響・データ」「リアルタイム・ダウンロード」が可能な放送方式であることが求められることから、ISDB-T系、DVB-H系、T-DMB系及びMediaFLO系が適当ではないかという案が示された。

単一か複数か――方式の採用で議論

 業界が最も注目し、その後の議論が盛り上がったのが「単一方式にすべきか、複数方式にすべきか」という点だ。

 論点整理案では、同一の技術方式にすると、受信機が普及しやすいというメリットがある一方で、事業者の選択の自由を奪うというデメリットもあると指摘。一方、複数方式にすると、デュアルモードといった複数方式を受信できるチップの登場が期待できるものの、同一方式に比べて受信機の普及は見込みにくいとしている。ただし、この場合は事業者の選択の自由は確保され、また競争環境も確保できる。

 ハード事業者においても、1つの事業者に特定すると設備投資額が少なくて済み、周波数の有効利用という点にも優れるが、競争促進の効果は期待できないと明記されている。その点では、2つのハード事業者とした場合は、二重投資になるなどの理由で設備投資がかさみ、周波数の有効利用でも劣るといったデメリットがある一方で、競争環境の促進が確保できる。

 技術方式について最も具体的な意見を述べたのが、東京理科大学理工学部教授の伊東晋氏だ。

 「誰でも使える端末であることが重要。放送サービスは受信端末がどれだけ普及するかが正否になっている。受信端末の普及、視聴者利益の保護からするとどうなのか。V-LOW内、V-HIGH内の両方で同じ方式であれば、数が出るので、低廉な端末が出るだろう。複数の放送方式で、単一の端末で作ろうとすると端末コストがアップする。従って、放送サービスは同一であることが望ましい。視聴者からも、そういうことが期待されているのではないか。事業者の選択の自由を求められる声は承知しているが、主役は視聴者なのか事業者なのか。その点で言うと、視聴者であるべきだ」(伊東氏)

 法政大学経済学部教授の黒川和美氏座長代理は、「総務省は具体的に1つの方式を選べないだろう。懇談会も“どれかにしろ”と言われたら選びにくい。ICTの世界では、競争世界、民間主導がよいとされている。伊藤先生の言っていることは正しいが、いま判断できない」と苦しい胸の内を語った。

 野村総合研究所の北俊一氏も「モバイルテレビは産声を上げたばかり。DVB-Hはバージョンアップをしようとしており、MediaFLOも進化していることから、今、1つにするのは難しい。申請するギリギリの時点で、判断できるようにすべきでないか」とコメントした。

 また、鈴木構成員からは「1つの方式でうまくいくのか。携帯電話も開放したからこそ複数の事業者やメーカーが参入でき、市場の伸びが急速化していった。それだけ複数方式というのは魅力がある。競争して普及させることも可能だ」という意見も挙がった。

 “無料(広告放送)か有料か”という問題についても、「“全国の国民が知る情報”という意味では、普及が促進される無料放送が望ましい」という意見がある一方で、「無料放送の中で、コンテンツを有料で購入するという方法もある。今の段階では2つの考え方がある」という発言も挙がった。

 懇談会は、論点の整理によってかなりまとまってきた感もあるが、技術方式の統一や複数選択、ビジネスモデルに関する着地点はまだ見えていないようだ。次回は5月20日に行われる予定となっている。

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