NTTドコモが4月25日に発表した2008年3月期の決算は、売上高が4兆7118億円と、前期比で減収となったものの、営業利益は8083億円で増益を達成。さらに2009年度3月期は、「新ドコモ宣言」の下、増収増益の達成を目標に据えた。2009年3月期の売上高(営業収益)は、1.2%増の4兆7680億円との予想で、営業利益は2.7%増の8300億円、税引き前利益は4.3%増の8350億円としている。
NTTドコモ代表取締役社長の中村維夫氏は、新ドコモ宣言を発表した4月18日の会見と同様、「携帯電話業界の潮目が変わった」と話し、新規契約の獲得とその解約防止に重点を置いた現在のビジネスモデルから、関係の深さ(信頼度や満足度)と長さ(契約年数)のかけ算によって生まれるブランドロイヤリティを構築するビジネスモデルに転換することを強調。5300万の既存ユーザーの満足度向上が、2008年度の事業戦略の中心になることを明言した。
この新しいビジネスモデルを支えるのが、「ファミ割MAX50」や「ひとりでも割50」「オフィス割MAX50」といった割引サービスと、端末の代金と通信料金を分離した販売モデル「バリューコース」だ。割引サービスは2008年3月の時点で約2210万契約を獲得しているが、2009年3月末までには約3100万契約まで増えると予想する。通信料金と端末代金を分離した新販売モデルも、利用ユーザーが急速に増えており、新販売モデルが適用可能なモデルでは、バリューコースを選択するユーザーが96%に上るという。バリュープランの契約数は2008年3月に500万を突破した。
こうした新サービスや新販売モデルの導入によって、ドコモの解約率は2008年3月期第2四半期から大きく低下している。2006年秋の番号ポータビリティ制度の開始によって、ドコモの解約率は一時0.97%にまで上がったが、2008年3月期の第4四半期には0.68%になり、今後さらに低下させていく。
また、より多くのユーザーに、より長く、より便利にドコモのケータイを使ってもらうため、ドコモは「定額契約」「生活アシスト」「国際」という3つのビジネス分野の発展も目指す。
定額契約の発展とは、パケット通信料の定額サービス「パケ・ホーダイ」の利用拡大を指す。パケ・ホーダイの契約数は2007年3月末の956万契約から、2008年3月末には1274万契約にまで増加したが、さらなる利用増を目指す。HSDPA(FOMAハイスピード)対応端末は、現在600万台程度が稼働しているとのことだが、今後発売される90xiシリーズの端末はすべてHSDPA対応となるうえ、70xiシリーズの端末もHSDPA対応が進むことから、定額サービスの利用者が増えることは間違いない。またデータ通信の速度が向上すれば、パケット通信の定額需要は高まる。FOMAハイスピードは通信速度が3.6Mbpsから7.2Mbpsへ高速化されるので、定額で安心して利用できるパケ・ホーダイ契約の増加を見込む。
生活アシストの発展は、DCMXやiDのクレジットサービスの拡大を意味する。DCMX会員は2008年3月の時点で564万契約となっているが、2009年3月までに900万契約を目指す。iD決済が可能な端末も、現在の30万台から2009年3月までに40万台へと増やしたい考えだ。また、ホームエリアと連携する各種サービスも導入を進める。
このホームエリア向けサービスに関しては、無線LANとブロードバンド回線を活用したホームネットワーク連携機能や在圏連動サービスの導入にも言及があった。家電と携帯電話を連携させ、外出先から家電などを制御したり、外出先からホームエリア内の機器にアクセスしたりするサービスを提供する。そのために必要な無線LANとFOMAのデュアル端末をコンシューマ向けにも投入する考えであり、ホームサーバーと携帯を連携させる仕組みもドコモが用意するという。将来的にはフェムトセルの活用なども視野に入れている。
国際というのは、海外渡航者向けの国際サービス、海外拠点の法人向けソリューション、そしてアジア・太平洋地域を中心とした海外でのビジネス展開のこと。単純にいつも使っているケータイが海外でも使える、ということだけにとどまらず、海外進出企業などへのソリューション提案や海外キャリアへの出資・提携などを通してビジネスを強化し、ユーザー数や収益の拡大を図る。特に協力関係にある「Conexus Mobile Alliance」との優先ローミングやシームレスなモバイルサービスはさらに強化する。
ちなみにこの3分野は、今後定額制の普及により徐々に縮小していくと見込まれる、従量制収入に変わる収入源にも位置づけられている。パケット通信を利用する機会が増大するにつれ、パケ・ホーダイ契約は今後も増加が予想される。定額加入者が増えることで、収益の上限は決まってしまうが、それでもデータARPUにはまだまだプラスの影響の方が大きい。またiチャネル、Music&Videoチャネルといったコンテンツでの収入、クレジットや広告、回収代行、物販といった分野でのレベニューシェアやコミッション収入、国際ローミングや国際通信による国際サービス収入などで、減少する従量制収入を補う考えだ。
なおFOMAのネットワークについては、引き続きHSDPAエリアの拡大に務めるほか、適宜品質向上を行っていくが、設備投資額自体はやや縮小する方向にある。
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