多機能化と裾野の拡大を重視──成長する「EZナビウォーク」神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

» 2008年05月07日 20時22分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 携帯電話のGPS利用サービスが急拡大している。2007年4月から始まった「緊急通報位置通知」の義務づけや、各キャリアが携帯電話へのGPS機能の標準搭載を進めたことが追い風になり、地図・ナビゲーション分野を中心に携帯GPS関連市場が急成長。携帯電話にとって基本的なサービス分野と呼べるまでなっている。

 この携帯GPS市場の草分けであり、牽引役なのが、KDDIだ。同社は他社に先駆けてGPS機能をau携帯電話に標準搭載し、地図・ナビゲーションサービス「EZナビウォーク」や「EZ助手席ナビ」を投入。GPS機能を用意するだけでなく、キャリア自らが地図・ナビゲーションサービスを手がけることで、この市場の創出と成長に貢献してきた。

 そこで今回のMobile+Viewsは特別編として、KDDI コンテンツメディア本部 コンテンツサービス企画部 ロケーション企画グループ 課長補佐の齋藤友則氏と、同ロケーション企画グループの幡容子氏にインタビュー。EZナビウォークの現状と今後について話を聞いた。

PhotoPhoto KDDI コンテンツメディア本部 コンテンツサービス企画部 ロケーション企画グループ 課長補佐の齋藤友則氏(左)と、同ロケーション企画グループの幡容子氏(右)

auショップを使って新規会員を獲得

 auのEZナビウォークやEZ助手席ナビは実用系サービスであるため、エンタテインメント系コンテンツのような派手さはない。着実に利用者数が増加し、しかも解約率が低いという特徴があるが、「潜在的な(サービス)需要はあるけれど、お客様がサービスについてよく知らず、ご利用に結びついていないケースも見られた」(幡氏)という状況だった。そこでKDDIでは、今年に入ってからauショップを使ったサービスの認知度向上・会員獲得に力を入れている。

 「具体的には、auショップにお客様がいらっしゃった時に、EZナビウォークのご紹介をさせていただき、その場で会員登録のお手伝いもさせていただいています。実際にスタッフによる説明を聞くと、『実はそういうサービスが使いたかったんだ』というお客様がかなりいらっしゃるんですよ」(幡氏)

 EZナビウォークのような実用系サービスは、ユーザーに“使い始めてもらう”までにハードルがある。キャリアショップによる対面サポートは、「市場の掘り起こしに効果がある」(幡氏)のだ。

 また、最近のユーザーの傾向として、若年層の増加も目立つという。これまでのEZナビウォークは、30歳前後のビジネスパーソンがユーザーの中心で、若年層や女性向けのサービスが充実しているauの中では異色だった。今でも30代前後の利用者層が多い点は変わらないが、「20代前半に向かってユーザー層の広がりが見られる」(幡氏)という。

既存ユーザーの声を聞いて、UIを改善

 こうして新規会員を獲得する一方で、既存ユーザーも含めた“利用促進”にも注力している。ここで中心的な取り組みになっているのが、UI(ユーザーインタフェース)の改善だ。

 「UIの部分では今年3月に大きめの改善を行っています。具体的には、トップ画面のタブを減らし、メニュー側に機能を表示するようにしました。当初は画面スクロールをあまりしないというポリシーでタブ表示を多用したのですが、これだとユーザーが“タブ内の機能に気づきにくい”という問題がありました。むしろ、スクロールを許容しても(タブではなく)トップメニューに多くの機能を表示した方がいいと判断しました」(齋藤氏)

 このようなUIの改善は、「既存ユーザーの要望や不満に耳を傾けた結果できたこと」(齋藤氏)だという。サービス開始以降、EZナビウォークの機能は進化と拡張を続けており、今やかなり大規模なものになっている。

 「EZナビウォークは、機能のほんの一部分だけしかお使いいただいていないお客様が多い。でも私たちとしては、より多くの機能を使っていただきたい。そこで既存のお客様のご意見をうかがって、UIを刷新しました。それが現在のEZナビウォークの姿になっています」(幡氏)

 また、新規会員向けには2カ月間の無料体験キャンペーンを用意するなど、ユーザーが実際にすべてのサービスを“触って・試せる”環境作りも重視しているという。

競合の増加で市場が活性化──先行優位性は健在

 周知のとおり、携帯GPS市場、特にナビゲーション分野はEZナビウォークが切り開いてきたマーケットである。しかし昨今では、ドコモやソフトバンクモバイルもGPS機能の標準搭載化を推し進めており、それに伴って他キャリアにもEZナビウォークの競合サービスも増えてきた。ライバルの登場によって、EZナビウォークの競争環境に変化は見られるのだろうか。

 「あまり悪い影響というのは感じていません。むしろ、競合他社が積極的に(携帯GPSナビの)広告展開をすることで、“auにはEZナビウォークがある”と認知度向上につながっていると思います」(齋藤氏)

 携帯GPS市場はまだ開拓の途中であり、潜在規模の方が大きい。また、au向けの本格的な携帯GPSナビゲーションサービスはEZナビウォークしか存在しないため、他キャリアにある競合サービスの影響を受けにくいようだ。

 また、EZナビウォークはこの分野の嚆矢であり、今も機能やサービスの充実度で他社を上回る。そこに競争優位性があると幡氏は話す。

 「携帯GPSナビの市場は我々が切り開いたものですし、機能やサービス面でも“EZナビウォークが先行する”という状況が続いています。他キャリアにも携帯GPSナビサービスがいくつかありますが、そちらが機能的に先行している部分はそれほどないと思うのです」(幡氏)

 「EZナビウォークの優位性は“対応端末の多さ”や“サービス連携”といった部分にもありますね。例えば、サービス連携では端末機能はもちろん、au oneのさまざまなサービスとの連携なども考えられるでしょう。これらはキャリア(が提供するサービス)ならではの強みです」(齋藤氏)

 ほかにも、auユーザーにはあまり意識されていないが、EZナビウォークはBREWベースのアプリであり、しかも端末メニューに内蔵されているので、サービスへのアクセスが“サクサク”と素早いといった優位性もある。今後、auの他のサービスや端末機能との連携が深まれば、UIの面で他社のサービスより有利なのは間違いなさそうだ。

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