HTC ShiftをPCとして考えた場合、その性格は800MHz動作のA110とIntel 945GU Expressを搭載したメモリ容量1Gバイト(DDR2-667シングルチャネル)の「Windows Vista Business」マシンとなる。導入されたOSと搭載するメモリ容量に不安を感じるところだが、少なくとも、フォルダ内のファイル表示速度、Webサービス、メール、音楽再生、動画再生(MPEG-2)において、動作速度に不満を感じることはなかった。
しかし、今回パフォーマンスの測定として行ったベンチマークテストでは、PCMark05、3DMark06、FINALFANTASY XI for Windows Offical Benchmark 3の結果は、あまり高い値を示していない。「1Gバイトのメモリと800MHzのCPUでWindows Vistaを動かしたらそれほど速くないのは仕方がない」という先入観があって、体感的な速度に「不満を感じなかった」のかもしれないが、客観的にパフォーマンスを示してくれる数値の上では、それなりの結果となってしまう。
電源管理プロファイル | PCMark05 | 3DMark06 SM2.0 | 3DMark06 CPU | FFXI Low | FFXI High |
---|---|---|---|---|---|
バランス | 828 | 48 | 330 | 902 | 662 |
省電力 | 682 | 37 | 249 | 732 | 662 |
高性能 | 826 | 49 | 329 | 869 | 649 |
液晶ディスプレイ輝度 | 電源管理プロファイル | WAN | 消費電力値(mW) |
---|---|---|---|
高輝度(20レベル/20段階) | バランス | オフ | 7706 |
中輝度(10レベル/20段階) | バランス | オフ | 6724 |
最低輝度(1レベル/20段階) | バランス | オフ | 5897 |
最低輝度(1レベル/8 段階) | 省電力 | オフ | 5788 |
中輝度(4レベル/8 段階) | バランス | 待ち受け | 10421 |
中輝度(4レベル/8 段階) | バランス | 通信中 | 13494 |
HTC Nipponは、HTC Shiftのバッテリー駆動時間のカタログスペックとして、Windows Vista Business起動時は約2時間、SnapVUEでDirectPush(一定の間隔でワイヤレスWANの接続を確立してメールサーバにチェックする処理を行う)を利用する場合は約53時間、DirectPushを使わない状態で約10日というデータを示している。
評価作業では、フル充電にしたHTC Shiftを終日屋外に持ち出して、Webページから気象データを取得したり、原稿作成作業など1時間程度のWindows Vista Business上における動作と、SnapVUEにおいてPCメールを30分おきにチェックさせる状態で運用したが、いずれの場合でも、帰宅して深夜ネットワークにアクセスしているとバッテリーが切れて休止状態になる状況だった。
ちなみに、SnapVUEで通話をオンにしてPCメールを30分に1回取得する設定にした状態で休止状態にし、3時間経過した時点のバッテリー残量を「YbInfo」で測定したところ、9610mWhだった残量が8736mWhになっていた。SnapVUEの3時間で874mWh、1時間あたり290mWh消費したことになる。
ノートPCとスマートフォンのハードウェアとOSを1つのボディに組み込んだHTC Shiftだが、そのボディのサイズと重さを考えると、従来からある「3Gによる高速データ通信に対応したノートPC」により近い使い勝手を持ったマシンと考えるのが妥当だ。スライド式の液晶ディスプレイを採用したボディを持つが、実際にはノートPCとそれほど変わらない運用に落ち着くだろう。
800グラムという重さも、小型軽量のワンスピンドルノートPCとそれほど違わない。ただ、バッテリー駆動時間は2時間と、ほかの競合製品と比べるとかなり短いことになる。キーボードも慣れればそれなりのスピードで入力できるようになるが、やはり、ほかの1キロ前後級の軽量小型ノートPCのほうが快適に長文を打てる。
HTC Shiftの現実的な使い方としては、スケジュールやメールをSnapVUE側で一括して運用し、ノートPCの側では、Webで提供されるサービス、短文入力を主体としたドキュメントの作成といったところになるだろう。ただ、それが屋外で行うPCの利用法の大部分を占めるのではないだろうか。そういう意味で、HTC Shiftは、ユーザーの屋外利用における実態をうまく反映した「トレードオフ」をもつ、「程よいノートPC」と評価できるだろう。
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