PRADA PhoneとNokia N95に思うこと神尾寿の時事日想(1/2 ページ)

» 2008年05月14日 16時45分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 「日本市場は特殊だから、海外メーカーの参入障壁は高い」

 日本の携帯電話関係者、とりわけメーカー関係者の中には、そのような認識を持つ人が多い。しかし、現実は異なる。市場環境、キャリアのビジネスモデル、そして海外メーカー自身の変化などにより、日本市場の“垣根”は、存在はするもののそれほどの参入障壁にならなくなってきている。

 奇しくも、筆者は先週から今週にかけて、LG電子の「PRADA Phone by LG」(以降、PRADA Phone)と、ノキアの「Nokia N95/Softbank X02NK」(以降、X02NK)の記者説明会に相次いで出席。海外メーカーの変化と実力の向上を目のあたりにした。また、彼らが日本市場を見る目も、かつてと変わってきたと感じた。

 そこで今日の時事日想では、PRADA PhoneとX02NKを見比べつつ、海外メーカーと日本市場の関係を考えてみようと思う。

ブランドやデザインよりも「中身」に驚いた

LG電子とイタリアのファッションブランド“PRADA”のコラボ携帯「PRADA Phone by LG」(L852i)。全国のドコモ端末販売店で2008年6月発売予定

 まず、イタリアのファッションブランド“PRADA”とのコラボレートで話題になっている「PRADA Phone」から見ていこう。PRADA Phoneそのもののレビューは別記事に譲るとして(参照記事)、このモデルで最初に目が行くのは、PRADAを冠するに至ったデザインのよさと、タッチパネルだけで操作する「フルタッチパネルUI」である。PRADA Phoneには物理的なダイヤルキーはなく、アップルのiPhoneと同様に画面をタッチして(触って)操作する。iPhoneと異なるのは、PRADA Phoneが指だけでなく、ペン操作も想定していることと、指で触れたときに軽いバイブレーションによるフィードバックがあることだ。実際の操作感はiPhoneほどのスムーズさやナチュラルさはないものの、シャープやHTCなどのWindows Mobile搭載のスマートフォンと比べれば、格段に使いやすく気持ちいい。iPhoneと肩を並べる秀逸なタッチパネルUIと言える。

 しかし、PRADA Phoneで筆者が驚いたのは、そこではない。何よりも驚き、感嘆したのが、PRADA Phoneのローカライズ(日本仕様化)の徹底ぶりである。

 まず、日本語入力は、ケータイユーザーにおなじみの10キーをタッチパネルに表示する形で行う。iPhoneはタッチパネルにアルファベットをQWERTY方式で並べて、ローマ字入力によって日本語入力・漢字変換する方式だが、PRADA Phoneのそれは日本で普及している「10キー日本語入力」をそのままタッチパネルに移行したイメージである。この方式は、文字数の多い日本語でもボタンを小さくすることなくタッチパネルに表示できるというメリットがあるほか、なにより“日本のケータイユーザーになじみやすい”。

 さらに感心したのが、iモードやiモードメールといった日本キャリアの基本サービスに単純に対応するだけでなく、「絵文字」や「デコメール」といった最新機能もきちんと取り込んでいることだ。iアプリDXにも対応しており、ケータイの基本的な機能で日本メーカー製のモデルと比べて見劣りするところはほとんどない。その上で、通信機能は日本メーカーもまだ本格対応していないHSDPA 7.2Mbpsモードを採用している。

 総じて言えば、PRADA Phoneは“日本のごく普通のケータイユーザーが買い換えても、困ったり迷うことのない海外メーカー製端末”になっている。日本語フォントの品位もすばらしく、UIのクオリティは、はっきりいって日本メーカー以上のものがある。

 「現在はワンセグやおサイフケータイ(モバイルFeliCa)まで対応できていませんが、こちらも来年には対応します。日本のお客様が求める機能はすべて用意していく」(LG電子 MC事業本部/中国日本室 日本マーケティンググループ部長の申 哲昊 氏)

 このようにLG電子は、日本市場を確実に理解し、その特性をしっかりと取り込みつつある。ユーザーから見て海外メーカー製端末に感じる違和感が、ほとんどなくなっているのだ。PRADA Phoneを、海外メーカーが作った“単なるブランドケータイ”と侮っていたら、日本メーカーは大やけどをするだろう。そのくらい日本市場に対するポテンシャルがある。

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