あらためて知る、「Windows Mobile」のルーツと生い立ち「Windowsケータイってなに?」と聞かれて困らないために(2/2 ページ)

» 2008年05月23日 16時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]
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Windows CEの携帯端末向けパッケージがWindows Mobile

 このWindows CEだが、1996年にリリースされた時点において、Handheld PCという特定のプラットフォーム(QWERTYキーボードを内蔵した折りたたみ型の小型端末)向けのパッケージにも同じ名称が使われた。すなわちWindowsライクなGUI、PC向けWindowsで作成したデータを活用できるPocket Office(Office Mobileの前身)などを含んだパッケージと、その中核となるOSで、同じ名前が用いられたのである。

 その後Windows CEは、車載用のAuto PC、いわゆる縦型PDAのPocket PC(Windows Mobileの前身、初期はPalm PCあるいはPalm-sized PCなどとも呼ばれた)など、Handheld PC以外のプラットフォームへも広がりをみせていく。その結果、OSコアとしてのWindows CEと、特定プラットフォーム向けのパッケージを名称で区別する必要が高まった。

 そこで2000年にリリースされたWindows CE 3.0以降、OSコアの名称がWindows CEとなる一方で、パッケージにはそれぞれのプラットフォームの名前を用いることになった。たとえばPDA向けのPocket PC 2000、Handheld PC向けのHandheld PC 2000、車載用のWindows Automotive、スマートフォン向けのSmartphone 2002といった具合だ。その一方で、特定のプラットフォームに依存しない汎用の組み込みOSとしてのWindows CEも、OEM/開発者向けに提供されている。

PhotoPhoto 左はWindows CE for Automotiveを搭載したクラリオンの「ADDZEST AutoPC CADIAS」。右は日本HP(当時はコンパック コンピューター)からリリースされたPocketPC 「iPAQ Pocket PC h3630」

 こうしたプラットフォームごとのパッケージ名は頻繁に変更されており、携帯端末向けパッケージの名称が現在のWindows Mobileになったのは2003年のWindows Mobile 2003からである。2005年にリリースされたWindows Mobile 5.0では年号のかわりにコアOSのメジャーバージョン(Windows CE 5.1)をとったのかと思われたが、日本で最新のWindows Mobile 6(米国ではWindows Mobile 6.1が発表済み)が採用するコアOSのバージョンはWindows CE 5.2となっており、厳密な関連性はないようだ(すでにOSコアとなるWindows CE 6.0 R2はリリースされている)。

 冒頭でも述べたように、Windows Mobileというのは、あくまでもOSとアプリケーションを合わせたパッケージであり、そのバージョンはOSコアのバージョンと必ずしもリンクしないということなのだろう。実際、Windows Mobile 6では、付属のOffice MobileがPC用のOffice 2007に採用されたXML形式のファイルに対応するなど、アプリケーション側の進歩が目立つ。

 このWindows Mobile 6は、大きく3つのエディションに分かれている。電話機能を持たないPDA向けのClassic Edition、タッチパネルをサポートしたスマートフォン向けのProfessional Edition、タッチパネルを持たないスマートフォン向けのStandard Editionだ。ただし、ここでいう電話機能は、国際標準に準拠した携帯電話を指しており、日本独自のPHSに対応しているわけではない。ウィルコムの「Advanced/W-ZERO3[es]」の搭載OSがWindows Mobile 6 Classicなのは、そうした理由からだ。

 この最新版のWindows Mobile 6シリーズでは、上述したXML形式(docx、pptxなどのファイルフォーマット)に対応したOffice Mobileの搭載に加え、メールソフトのHTMLメール対応、Windows Live(Messengerを含む)への対応、ブラウザ(Internet Explorer Mobile)の高解像度対応、リモートデスクトップのサポートなど、さまざまな改良が施されている。だが、Windows Mobile 6搭載の端末だからといって、これらの機能がすべて利用できるとは限らない。

 Windows Mobileは、Windows CEをベースに携帯端末向けにパッケージングされたソフトウェアだが、組み込み用という性格上、OEM/端末メーカーの裁量が大きくなっている。Windows Mobileを搭載する端末がどれくらいのメモリやストレージを搭載するかは、メーカー次第であり、ハードウェア構成も同一とは限らない。特定の機能を提供するかどうかは、端末メーカーや実際に端末を販売するキャリアの意向によるのである。もしWindows Mobileの特定の機能を目当てに端末を購入するのであれば、その端末が実際にその機能をサポートしているのか、確認しておく必要がある。

 同じ理由により、たとえ同じWindows Mobile 6搭載機であるからといって、異なる端末間で完全な互換性(アプリケーションソフト、デバイスドライバなど)が保証されているわけではない(もっとも、同一バージョンであれば動く可能性は高い)。また異なるバージョン間での互換性についても、PC向けのWindowsほど配慮はされていない点に注意が必要だ。

高いセキュリティやアプリ開発環境に優位性、カスタマイズできる楽しみも

 Windows Mobileは、そのルーツである最初のWindows CEから数えれば、ゆうに10年を越える歴史を持っており、OSとして豊富な実績を持つ。が、開発の歴史が長いだけに、デバイスやネットワークの設定など、古さが隠せない部分もある。Windows Mobile 6でメール設定のウィザードが追加されたように、古くなりつつある部分を繕いながら使い続けている格好で、そろそろメジャーなオーバーホールを期待したいところだ。Mac OS XベースのOSを搭載したアップルのiPhoneやiPod touchと比べると、辛くなっている部分も目立つようになってきた。

とはいえ、セキュリティや社内アプリケーションの開発など、企業向けではなお優位な点も多い。コンシューマユーザーにとっても、ゲームから実用アプリケーションまで、豊富なソフトウェアが用意されているというメリットがある。自由にアプリケーションをインストールして、自分好みの端末にカスタマイズしていける点におもしろさを感じるユーザーもいる。一方で、携帯でありながら、iモードやYahoo!ケータイなどの、キャリアが提供する携帯コンテンツを利用できないという制約もある(ウィルコムは例外的に豊富な公式サービスを用意している)。購入に際してはこうした特徴を踏まえておくことが重要だ。

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